上 下
63 / 141

60 名付け戦争

しおりを挟む
「はいはーい、お祖母ちゃんですよー♪」
「あーうー」

双子のうちの男の子を抱きながら母上が聞いたことないような声を出していた。孫とは祖父母を狂わせる存在というのは本当らしい。

「ふふ・・・元気に飲んでます」

一方こちらは双子の女の子におっぱいを与えているサーシャ。片方だけ胸を出しているので久しぶりの俺の理性的にはかなりくるものがあるが、なんとなく赤ん坊に乳をあげるサーシャの母性的な姿を見ていたい気持ちもあってかなり俺の心は混沌としていた。

「おとうさま、だいじょうぶ?」

そんな風に眺めていたらローリエが心配そうに俺を見ていた。いかんいかん。ローリエに心配させるなんてダメだ。俺は笑いながらローリエの頭を撫でて言った。

「すまないね、大丈夫だよ。ありがとうローリエ」
「うん!」

「えへへ・・・」と笑うローリエにほのぼのする。と、ふいになんとなく覚えのある嫉妬の視線を感じてそちらを見るとサーシャが少しだけ嫉妬のこもった眼差しでこちらを見ていた。俺はその視線を愛しく思いつつも近づいてからサーシャの耳元で囁いた。

「本当はね、サーシャを独り占めしてるその子に少しだけ嫉妬してたんだよ。私も後で甘えていいかな?」
「・・・!?は、はい・・・」

赤くなるサーシャ。3人の子供の母親とは思えないほどに可愛い反応に俺がサーシャを愛でそうになる前に母上が言った。

「そういえば、この子達の名前はどうするの?」
「一応考えてありますが・・・確か、父上と母上にも案があるとか。それをお聞きしてもいいですか?」
「ええ。旦那様は確か男の子なら『レジェンド』女の子なら『メリー』だそうよ。私は男の子は『ゴールド』女の子は『サマー』がいいと思うわ」

なんか男の子の名前の輝き具合が半端ないが・・・これが俗に言うキラキラネームなのだろうか?

「サーシャは何か意見ある?」
「わ、私ですか?えっと・・・旦那様にお任せいたします」
「ローリエは?」
「おとうさまにおまかせします!」

二人とも何故か俺に丸投げだった。信頼の証なら嬉しいが少しだけプレッシャーを感じつつ俺も意見を言う。

「男の子は『バジル』女の子は『ミント』でどうでしょう?」
「バジルとミント・・・綺麗な響きですね」
「さすがおとうさまです!」

二人からは好評だった。まあ、姉がローリエだから香辛料繋がりで可愛い響きのものを持ってきただけなのだが・・・。

「男の子の名前少し優雅さが足りない気がするけど・・・ミントって名前はいいわね」

母上は女の子の名前には賛成のようだ。となるとあとは・・・

「やっぱり『ゴールド』でどうかしら?」
「『バジル』でいかがでしょう?」

ここで母上とぶつかってしまう。無論可愛い嫁と娘、孫の前で醜い争いを見せるということは一切なく二人とも静かに火花を散らす。しばらくお互いに微笑みあってから、母上は諦めたのかため息をついて言った。

「『バジル』でいいわよ」
「ありがとうございます母上」
「いいわ。代わりにしばらくの間はこっちに滞在するわね。可愛い孫と嫁の様子を見たいし」
「ええ。もちろんです」

侍女がいるとはいえ、子供の面倒を見るのに人がいるのはありがたい。それに俺はこれからしばらくは徹夜で仕事を片付けることになりそうだから母上の存在はサーシャにとっても、ローリエにとっても、新しく産まれた家族の、ミントとバジルにとってもありがたいものだろう。

そんな風にして新しく産まれた俺たちの家族・・・双子の姉の名前がミント、そして双子の弟の名前がバジルに決まったのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ヤンデレ設定の義弟を手塩にかけたら、シスコン大魔法士に育ちました!?

三月よる
恋愛
14歳の誕生日、ピフラは自分が乙女ゲーム「LOVE/HEART(ラブハート)」通称「ラブハ」の悪役である事に気がついた。シナリオ通りなら、ピフラは義弟ガルムの心を病ませ、ヤンデレ化した彼に殺されてしまう運命。生き残りのため、ピフラはガルムのヤンデレ化を防止すべく、彼を手塩にかけて育てる事を決意する。その後、メイドに命を狙われる事件がありながらも、良好な関係を築いてきた2人。 そして10年後。シスコンに育ったガルムに、ピフラは婚活を邪魔されていた。姉離れのためにガルムを結婚させようと、ピフラは相手のヒロインを探すことに。そんなある日、ピフラは謎の美丈夫ウォラクに出会った。彼はガルムと同じ赤い瞳をしていた。そこで「赤目」と「悪魔と黒魔法士」の秘密の相関関係を聞かされる。その秘密が過去のメイド事件と重なり、ピフラはガルムに疑心を抱き始めた。一方、ピフラを監視していたガルムは自分以外の赤目と接触したピフラを監禁して──?

盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです

斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。 思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。 さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。 彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。 そんなの絶対に嫌! というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい! 私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。 ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの? ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ? この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった? なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。 なんか……幼馴染、ヤンデる…………? 「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。

長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ

藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。 そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした! どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!? えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…? 死にたくない!けど乙女ゲームは見たい! どうしよう! ◯閑話はちょいちょい挟みます ◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください! ◯11/20 名前の表記を少し変更 ◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。

曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」 きっかけは幼い頃の出来事だった。 ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。 その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。 あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。 そしてローズという自分の名前。 よりにもよって悪役令嬢に転生していた。 攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。 婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。 するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?

転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!

高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。

完全無欠なライバル令嬢に転生できたので男を手玉に取りたいと思います

藍原美音
恋愛
 ルリアーノ・アルランデはある日、自分が前世でプレイしていた乙女ゲームの世界に転生していると気付いた。しかしルリアーノはヒロインではなくライバル令嬢だ。ストーリーがたとえハッピーエンドになろうがバッドエンドになろうがルリアーノは断罪エンドを迎えることになっている。 「まあ、そんなことはどうでもいいわ」  しかし普通だったら断罪エンドを回避しようと奮闘するところだが、退屈だった人生に辟易していたルリアーノはとある面白いことを思い付く。 「折角絶世の美女に転生できたことだし、思いっきり楽しんでもいいわよね? とりあえず攻略対象達でも手玉に取ってみようかしら」  そして最後は華麗に散ってみせる──と思っていたルリアーノだが、いつまで経っても断罪される気配がない。  それどころか段々攻略対象達の愛がエスカレートしていって──。 「待って、ここまでは望んでない!!」

執事が〇〇だなんて聞いてない!

一花八華
恋愛
テンプレ悪役令嬢であるセリーナは、乙女ゲームの舞台から穏便に退場する為、処女を散らそうと決意する。そのお相手に選んだのは能面執事のクラウスで…… ちょっとお馬鹿なお嬢様が、色気だだ漏れな狼執事や、ヤンデレなお義兄様に迫られあわあわするお話。 ※ギャグとシリアスとホラーの混じったラブコメです。寸止め。生殺し。 完結感謝。後日続編投稿予定です。 ※ちょっとえっちな表現を含みますので、苦手な方はお気をつけ下さい。 表紙は、綾切なお先生にいただきました!

処理中です...