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24 とっておきはケーキ

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ローリエの5才の誕生日は、身内のみでささやかに行われた。まあ、初回からあまり豪華なのをやると、貴族として他の貴族を呼ばなければならなくなりそうだから、そうしたのだが・・・ローリエはそんなささかなパーティーでも嬉しそうに笑ってくれた。

愛娘のその様子を微笑ましく・・・同時に愛しく眺めていると、ローリエは侍女と楽しげに会話してからガーリックがこの日のために仕上げた料理を少なめに取り分けた皿を持って俺の元にきて、笑顔で言った。

「おとうさま!すごくしあわせです!」
「そうか・・・楽しめているなら良かったよ」

頭を撫でてそう言ってあげる。ローリエは「えへへ・・・」と嬉しそうに笑ってから、手元の皿から料理をスプーンに乗せてこちらにあーんをしてきた。

「おとうさま、これすごくおいしいの!たべてたべて!」
「ああ。もちろんいただくよ」

最愛の娘からあーんをされて拒否をする父親がいるか・・・否!そんなことをもちろんするわけもなく、俺は素直に料理を口に運んでから味わって笑顔で言った。

「うん、とっても美味しいよ。ローリエと共に食べてるから尚美味しいのかな?」
「ほんとうに?おとうさまろーりえといっしょにたべておいしいの?」
「もちろんだよ。可愛い娘との食事を楽しまない父親はいないよ」 

そう言ってから頭を撫でてあげると、ローリエは無邪気に笑って言った。

「わたしもおとうさまといっしょですごくおいしいよ!」

・・・か、可愛ええ!家の娘、超可愛いんだけど!
こんな無邪気な表情を浮かべて笑うローリエに俺は思わずだらしなくニヤケそうになる表情をなんとか、なるべく優しい笑顔を保ちつつほっこりとした気持ちになった。

「おかあさまもいっしょならもっとおいしいけど・・・」
「ああ、お母様にはあとで目を覚ましたら一緒にケーキでも食べよう」
「けーき?けーきって、おとうさまがつくったもの?」
「もちろんだよ。ローリエとサーシャ・・・お母様のために頑張って作ったから楽しみにしててくれ」
「うん!」

サーシャがいないことに少し寂しそうな様子を見せてからのこのスマイル・・・エンジェルローリエだな!ローリエさんマジ天使!

しかし・・・あのローリエがここまで色んな表情を見せてくれるようになるとは思わず、少し感傷に浸ってしまう。ローリエはここ最近・・・カリスさんの人格が俺になるまでは寂しくてもそんなことを口にはしないような我慢してしまう子供だった。まあ、カリスさんが放置しすぎでいたのが原因なんだけど・・・そんなローリエが少ないとはいえ、自分の気持ちを口にできるようになった・・・親としてはこれ以上嬉しいことはない。

ただ、やはり母親に似てしまったのだろう・・・どこか、自分だけで抱えんでしまうところはどうしようもないので、これはいつかはなんとかローリエの気持ちを支えてあげられるパートナーが必要だろうけど・・・どうしたものか。

サーシャは俺が夫としてしっかりと支えるから問題ないが・・・娘のローリエの今後を考えると、やはり少しでも隣にたてる人間は作っておいてあげたいところだ。過保護かもしれないが・・・親として出来ることはしておきたい。

まあ、年頃になれば、父親よりも好きな異性ができて、『お父様なんて嫌い!』と言われるかもしれないが・・・

「おとうさま?どうかしたの?」
「ん・・・いや。なんでもないよ」 

心配そうな表情を浮かべるローリエ。いけないいけない。思わず表情に出てしまったみたいだ。反抗期にこんな素直な娘にそんなことを言われたことを想像しただけでこんなに動揺するなんて・・・俺もまだまだだな。
まあ、お父様嫌いは言い過ぎかもしれないが・・・いつかはローリエは俺の手から離れていってしまう。
それが寂しくないと言えば嘘になるが・・・自分のそんなエゴを娘に見せるつもりはない。

娘の幸せのためなら俺はどんなことでもするだろう。手元にいて幸せになれるならそうするが・・・ローリエを幸せにするのは、別の人間の役目。ローリエにとっての白馬の王子様・・・といえばメルヘンすぎるだろうか?しかし、それくらい、ローリエには素敵な人と幸せな家庭を築いてほしいと願っている。

「ローリエ・・・私は何があろうとも、君の父親だ」
「おとうさま?」

唐突な台詞にローリエは首を傾げるが・・・そんなローリエに俺は笑顔で言った。

「だから・・・ローリエはローリエらしくしたいことをしていいからね。何があろうと、私はローリエの味方だ。ローリエは私とサーシャの大切な娘なんだからね」
「おとうさま・・・うん!」

よくはわかってないだろうが、俺の言葉に素直に返事をするローリエ。うん。色々と思うところはあるが・・・今は、俺が出来ることで、ローリエの成長を見守ろう。
過保護、過干渉はあまり良くないだろうが・・・可愛い娘の幸せのためならなんでもしようと、密かに俺は決意を固め直したのだった。

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