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本編後

僕の年上の奥さん7

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 7

 何でも帆貴さんは僕、湯川久仁彦が他の誰かに取られないか懸念しているのだと。

 ナニソレ。
 ありもしない仮想の敵に闘志を燃やして居るって言うこと?

 確かに僕は学生で未成年で、帆貴さんの年下で頼りないのは認める。だからこそアルバイトをして生活費の足しになればと努力をしているし、こう見えてもαだ。βよりも力だってある。そんな男が誰かに取られる等と言うことはほぼ無いのでは無いだろうか。

 帆貴さんは僕の運命の番だ。
 素敵な人なのに、帆貴さんが取られそうで必死になっているのは僕の方。

 それなのに何で?


「何でって久仁彦、優良物件じゃん」

「いや優良物件って、僕の母親は犯罪者だけど」


 現段階で刑務所に入っているし。
 お陰で成りたかった将来の職業に、身内に犯罪者が居ると成れない職業になるのは除外になった訳だけど。成りたかった訳では無いから別にいいと言えば良い。
 ただ将来的に今後僕に関わって欲しくはないなと思っては居る。少なくとも帆貴さんに盛大に迷惑を掛けているし、僕だって迷惑を掛けてしまった訳で。


「元カノ、久仁彦の母親のことは放置。今は久仁彦のことを話しているんだぜ」

「それなら言わせて貰うけど、僕は優良物件では無いよ」


 幾らアルバイトをして居るからと言っても帆貴さんと娘である花音を養って行くお金は稼げないし、今年高校三年になってしまった僕は大学受験を控えている。

 …バース性の高校と大学がくっついているエレベーター式の大学。僕は其処の大学へと入学を希望している。

 本来ならばαという事で高校生のうちに途中入学をしてしまえば学費等一切の費用が無料になるのだが、僕の境遇的に学園の寮に入れられるだろうし、そうなると帆貴さんと娘の花音とは離れて生活をしなくてはならなくなる。
 それに僕の母のせいで大変苦労をして入学をした今の高校は、苦労したからこそ最後まで通って卒業をしたい。希望の職種的にも優位になる高校という事で入学をしたし、何より学校側が僕の家庭環境を知っていて考慮してくれる。
 学費が掛かってしまうのは頭が痛い事柄だけど、奨学金制度等で大分軽減している。

 それでも日々、赤子を抱えた状態で親子三人暮らすには色々足りないわけで。


「あのな、お前は今でも成績優秀な学生で俺の所に転がり込んで来てからずっと学年トップ。何より花音と俺を大事に考えているだろう?家事だって俺が出来ない時は完璧に熟す。それの何処が優良じゃないと言うんだ?」

「お金」

「まだ学生だろうが。未成年がそんなの気にするな」

「でも稼げて居ない」

「前にも言っただろ?俺だって貯蓄しているのがある。今は産休で休んでいるけどその内復職するし、駄目なら別の職業に付く。それに幾つか物件を持っているって言ったよな?こう見えて家賃収入だけでも家族三人、十分生活出来るんだぜ」

「最後のそれ、初耳…」

「あー…最初にあった時に言っていたと思ったが、言わなかったか俺?」

「最初?」

「始めて会った時」

「あの母が馬鹿をやらかした時…」

「そ。金庫荒らしていたからてっきり不動産の売買契約内容を記した書類を盗んだと思ったのだけど、アイツ理解して無かったのだか何だか知らないが手を付けていなくて助かったよ。再発行とか手間掛かって面倒だしな」


 詳細は家に帰ってから詳しく説明するから、と言ってから帆貴さんはチラッと担任の先生の方を見詰める。先生が居るから今は此処までってことか。


「ふぉぉ…先輩ってばおっ金持ち。今度奢って下さい」


 帆貴さんが視線を寄越したのを確認してから戯けたように話す先生。
 場の雰囲気を崩したく無かった、とかだろうか。先生の方に視線を向けるとフフンと鼻を大きくして何処か嬉しそう。

 …なんだけど、何故かその顔を見ているとイラッとするのは何故だろう。
 大人の余裕?
 小馬鹿にしている?

 恐らくそんな意図は無いのだろうけど、ムッとするのは僕が余裕が無いせいだろう、多分。
 …多分。
 帆貴さんは余裕だよね?と思って見ると、明らかに不機嫌。


「却下。今は幼子が居て飲食店とか気を使っちまって中々入れねーんだよ。あったとしても赤子を連れて入店するには怖いし。花音も見知らぬ人ばかりの場所だと火が付いたように泣き喚くし、何より落ち着かなくて不機嫌になってしまう場所に居るのは可愛そうだ。もう少し大きくなるまで待て」


 大きくなっても一人では入れないけど。
 等という帆貴さんはこう見えても結構Ωの本能?母性本能が強いタイプだ。
 家族に何かがあった場合、直ぐに対抗手段を取るし、何より一家の大黒柱という感じで…はい、僕まだその意気に達していません。悔しいけどどうしても後手後手になってしまう。
 学生と言うのもあるけど、何より社会に出て居ないから経験が無い。

 αなのに。世間ではαは優秀なのに。
 悔しいな…。


「そう言えば、意外と子供が駄目って言う店結構ありますよね」

「このご時世だと仕方ねぇって思うけど、入店しなきゃ良い」

「店だけではなく、バスとか電車とかだとキツイですよね~」

「俺は自分で車運転しちまうからその手の苦労はまだしていないけど、世の赤子持ちの母親は気苦労しそうだよな」

「世の中もっと赤ちゃんや幼児、可愛い子に優しくです!ペットにも優しくです!可愛い女の子や男の子にも優しく、なのです!それが正義です!」

「流石ロリコン、言う事が違う。と言うかもしかしてショタコンもか?」

「ロリコンでもショタコンでも無いです~!可愛い子が正義なだけですー!」

「正義のカテゴリーがわからん」

「エエエ~!可愛いっていうのが第一です!ていうか、次いでに私にも優しくですよ先輩!」

「よお~し却下だ」

「ええええ!」

「お前さっき久仁彦を小馬鹿にしただろう。教師として諸々却下だ」

「ふぇぇえ!」

「謝れ―謝れ―」

「ちょ、それモンスターペレメンツ!学校などに対して自己中心的かつ理不尽とされる要求をする親!」

「おう、説明キタコレ」

「そうじゃなぁああ~い!」

「と言うかそれ間違いな?俺は久仁彦の親じゃない、よ・め。嫁だ、嫁」

「見えなあああーい!」

「おう、立てや。表出ろや。手突っ込んで奥歯ガタガタさせたる」

「ひぇぇえ、先輩怖い!酷い!暴力反対!」

「うっせー!」


 そんなこんなで僕の三者面談?進路指導?は終わった。
 所謂時間切れという奴だ。
 内容はどう見ても三者面談や進路指導とは思えない等と思っていたら、担任曰く、



「ん?だって湯川君元から確りとした進路を考えていたから特に私からは無かったのよ。でも学校の希望で一度は三者面談しないとならなかったから、長年考えていた阿久津先輩と湯川君の『結婚』を突付いた訳。そうじゃないとまともな結婚しないでしょ?」


 等と言われて盛大な吐息を吐いた。
 全く余計なお世話である。


 ※


 バース性の学校とは、「ある日突然~」で優樹達が通っている学園です。
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