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6章 今日も隣国はゴタゴタしておりますが、隣国だと乙女ゲームの舞台を鑑賞させて頂けないので萎えています。
83.2
しおりを挟む「ん?んんん?!」
その場で思わず漏れた奇妙な声。
あ、普段から結構やらかしているって?確かに男爵令嬢にしては頻繁にやらかしているのは自覚しているけど。だがしかし!実家が極貧男爵家で一般市民よりも底辺な生活を強いられ、親父と長男が日本でいた昔の『家長とその長男は敬え』と言うゴリ押し精神論者(笑)のせいで虐げられていた私達姉妹としてはお貴族様のご令嬢なんてつけ刃。
まだまだ淑女等無理なのですよー!
そこのところはどうかご理解下さいって一体誰に言っているのかしら、私は。
と思わず自分自身に脳内でツッコミをいれている冷静な私。
でもね、でもーねー!
冷静な状態ではないのです!
「どうしました、レナ嬢?」
「この匂いは…っ!」
ツンッと鼻に付く前世で散々嗅いだことがある匂い。
忘れるものかっ!
忘れるものかあぁぁーーーっ!
この匂いは…っ!
この世界に転生してから長い間求めていたモノ!!
「わ、ちょっとレナさんー!」
背後からマリエルさんの驚いた声が聞こえたけど、今はそれ所ではない!
無理矢理・強引に拉致されてこの国へ来たから元々『それどころでは無い』と言うツッコミはスルー1択として、この匂いですよ!
私を惹きつけて止まない、このニオイ!香り!ん~~~たまらん!
スパイスな香辛料の香り~~!
「このニオイ!」
おっと、ここは冷静に、冷静に。
令嬢どころか乙女が涎を垂らしてはイケマセン。
少なくともそんな姿を晒した日にはもうお嫁に行けないから!
誰だ、そこで嫁を取れって言うやつは。
私は女だ、よし、冷静。冷静。
Be coolだ。
YES冷静!
ONE MORE!
って、もう一つってどういう意味だー!
落ち着けー、私。
冷静にぃ、冷静に…ああ、あの色が素晴らしい黄金にみえるぅぅぅぅー。
「おや、お嬢ちゃんコレを知っているのかね?」
売っているのはクルクルとターバンを頭部に身に着けた紳士~なオジサマ。
…ではなく、この辺りでは見掛けない、全身真っ黒な民族衣装を身に纏った何処と無くニヒルな顔付きのおばさま。勿論ターバンは巻かれていない。
その代わり何故か額に鉢巻っぽいのを巻き付けているけど、もしかしてターバン代わりなのかな?外見から判断出来ないけれど、そういう民族衣装なのかも知れない。
鉢巻のように巻いている布地に大柄な大胆な模様があるから尚更だ。
「珍しいねぇ。いや何、わたしゃ最近商談でこのポーツマスって港に着いたのだけど、ついでに売ろうと持って来たこの香辛料に見向きもしない所か、側に寄ると「臭い」とか「目が痛い」って言って文句を言った挙げ句そっぽを向くのさ」
確かに知らなければそっぽを向くのは仕方がないかも知れない。
粉にすると結構鼻につくニオイだしね。
おまけに粉状のモノは近くによって風が吹くと、それこそうっかり目に入ってしまったらそれは悲劇、大惨事だわ。水を使って洗っても暫く激痛と戦わないとならない。
瓶の蓋が開いているのは粒状の香辛料だから、恐らくその横にある小さな瓶は粉末にしているのかな?それとも別の香辛料かしら?
「日常食っているスープに混ぜて調理してみたら何時もと違ってピリ辛く出来て、普段とは違った味わいが堪能出来て美味いのにねぇ」
確かに。
等と頷いて居ると、ジン様やマリエルさん、それからお二人よりもやや遅れてアレクサ様が息を切らせつつ遅れて到着した。
「此処に居たのか」
「もう!レナさんったら、見失ったかと思ったわ!」
「何か欲しい物でもあった、はぁ、ぜぇ…の、か」
あ~アレクサ様息も絶え絶えって感じですけど、大丈夫ですかね?原因作ったのは私ですけども。もしかしてもしかして、アレクサ様って結構体力無いのかな?
私よりもない、とか?まさかね。
いやだって、人外魔境な体力ありそうなジーニアス兄さんは兎も角、ジン様もマリエルさんも普通に息切れ等していないし。
そりゃあ~…実家から王都迄ジーニアス兄さんと逃げた際に体力、主に持久力がついたな~とは思っていたけど。ギルドに登録し、道中ガチで魔物とかガンガン倒しつつ金銭稼ぎながら旅をしていたから、無駄に体力付いたのよね~…。最初のうちなんてお金等無いから野宿が当たり前だったし、野宿中も盗賊や魔物等に襲われないように見張らないとならないし。そりゃね、兄さんってば最初のうちは「見張りは俺がやる」の一点張りでやらせて貰えなかったけれど、流石に一週間程ぶっとうしで続けるのは無理だったらしく、8日目には交代して貰ったわ。
とは言っても3時間で交代したけど。
もっとゆっくり眠ってくれればよかったのだけど、魔獣が襲って来ちゃったから結局その日は討伐後私ってば爆睡しちゃって、兄さんに申し訳なかったわ。
でも次の日からシッカリと見張りを交代してくれるようになったから良かったかな。
それはさてよりマリエルさんに問い詰められても、ねぇ?そう言われても~と一瞬思ったが、強制拉致された身の上としてはこのままトンズラした方が良いような気がするのですよ。
と言うかソレ普通。
出来たらとっとと祖国に帰ってレスカ様達に会いたいのですよ。ジーニアス兄さんもどうしているのかとても気になるし。
それに…ニキの怪我の状態がとても気になる。
彼のことだから大丈夫だと思う。と言うか前向きに思っておく。
なんと言ってもケイン様だって居るしね。
こうしている間にも痛みで…ううん、きっと大丈夫。
問題はジーニアス兄さん。
荒れてそう…。確実に。
変なことやらかしていたりなんてしないよね?このポーツマスに攫われて来る前に、港町カモーリで襲撃にあった時にポンポンと人間が空高く飛ばされて行くのを何度も見たけど、アレ…。この世界の重力は何処か異次元にでも移動しちゃったのかな?って思っちゃったわよ、どう考えても、どう見てもあの光景は異常事態だわ。
幾ら肉体強化魔法を使っても、普通彼処まで人を飛ばせないでしょう?
アレ。
何だか今一瞬やれそうな気がしたのはきっと気の所為よね?
兄妹だからって幾ら何でも性別も肉体構造も違うし、何より私はそこまで鍛えていない。
咄嗟に前世で言うところの『火事場の馬鹿力』は出せそうだけど。
私は普通、そうそう普通。更に言うと乙女ゲームでのモブ。
特別なことは何も無いわ~。
巻き込まれてしまって乙女ゲームの隣国所属の攻略対象者に拉致されただけの一般人よ。
ただちょーと、攻略対象者で『鬼神』なんて渾名を付けられている兄を持つモブの男爵令嬢で、兄と同じように肉体強化魔法が出来て、魔力吸収なんてモノが出来るちょっとだけ変わり種の男爵令嬢の一人。
男爵令嬢なんて準男爵より一個だけ上の貴族社会での下の地位なのだから、沢山居る男爵令嬢の一人でしか無いわ。
よし、今は兄さんのことは忘れよう。
きっとモニカさんやバーネット辺境伯様が何とかしてくれるだろう。
もしくはニキのお父様で騎士団長のアルビオン様だって居るのだし。
希望的なんとやらだけど、幾らジーニアス兄さんでもちょっとは冷静になってくれていると思いたい。いやいや、そうだと信じよう。
…暴走は確実にしているとは思うのだけど、その後冷静になってくれるって信じよう。
とは言え今は目の前のお宝ゲットが優先!
これで念願の!異世界初カレーが出来るぅぅぅっ!
問題は前世と似たような香辛料が最低限の種類手に入るかどうかってモノですが。
「お姉さん、この中にターメリックとコリアンダー、それにクミンとレッドチリはある?」
「はいはいって、お嬢ちゃん口がうまいねぇ。こーんなオバちゃん捕まえてお姉さんって。ははは、気に入ったよ~。ターメリックとクミンとコリアンダーはあるが、レッドチリって言うのはこの赤い色のチリかい?」
「そうそう、ソレソレ」
「ほうほう、中々お嬢ちゃんお目が高いね。このチリはかなりの上物さぁ」
「おお~」
「ねーねーおねーさん、そちらとお話中申し訳無いけどこっちのお姉さんが言っていたその赤いのとたーめにゅっくとコリ何とか?と、クミンを下さい。勿論そちらのお客さんの用が終わってからでお願いしますね」
ぶ。
何故ココに君がいるのかな!?
10
◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360
BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600
NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846
宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)
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