今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
上 下
106 / 113
6章 今日も隣国はゴタゴタしておりますが、隣国だと乙女ゲームの舞台を鑑賞させて頂けないので萎えています。

83.1

しおりを挟む
 えーと、えーと。
 今なんて言ったのかな?

「父が、側近や貴族達に私の……を…偽って居たのには…呆れたが、な…」

 と、言ったよね?
 声が小さくて所々聞き取りにくかったけど、確かに言っていた。

 もしかしてアレクサ様のお父様、私の実の父親であるカルロスと似たような人間?
 平気で借金の為に隣領の領主の息子に、自分の娘二人を妾として熨斗付けて送りつけちゃうタイプ?
 アレクサ様は男性だから私、いいえ、私達姉妹の境遇とはかなり違っているけれど、それだけ自分本位で身勝手、更には自分の都合が良いこと以外は無視をし、不都合な場合は強引に強奪してしまう父親だってことなのかな?
 一国の国王なのに、そんなので良いのかなぁ。
 国が傾かない?
 学園の食堂に務めていた時に小耳に挟んだことがあるけど、隣国―…ウィックロー国の国王は、私の住む国であるアナジスタ王国のとある貴族女性を権力に物を言わせ、かなり強引に強奪して后にしたと。
 実際には愛妾に近かったらしいけど、ウィックロー国の国王が「私の后は唯1人」と言って美談のようにしている。
 だが、事実はウチの国の重要人物の元婚約者で、結婚間近だったのを権力に言わせて当人達の意見を無視して強奪したと。

 だからか、アナジスタ国の主要人達は隣国であるウィックロー国王にあまりいい感情は持っていないと言う。


 そして…。
 乙女ゲームの設定では、ウィックロー国の国王の后はアレス様のお母様。

 …
 ……

 ナンダロウ、このスパルタ王テュンダレオースと王妃レーダーの娘ヘレネーみたいな物語は。

 神話か。
 トロイア戦争か。
 トロイの木馬か。

 乙女ゲームの裏設定では、強引に拉致されたアナジスタ王国のご令嬢は当時アナジスタ国1の美姫と謳われ、吟遊詩人がこぞって唄や詩にした為に隣国にまでその噂が飛び交い、その噂を鵜呑みにして聞きつけたウィックロー国の国王が一目見て惚れ、強奪。

 ほんっとーにナンダロウね、ヘレネーとトロイアの王子パリスみたいな物語は。
 ウィックロー国の国王、自重しろ。

 そして、令嬢の元婚約者は哀れ壊れた精神になってしまった。
 だが彼の身分が壊れたままで居ることを許さず、また両親の叱咤や厳しい躾や折檻等で表向きは回復したかのように見せかけ、実際は益々破壊されて壊れてしまい、壊れた心では当然残された一人息子に愛情は注げず。
 注いだのは憎愛。
 結果、一人息子は乙女ゲームでの殺人鬼に仕上がってしまった。

 の、だけど。
 チラリと視界の端でのほほんと、狐獣人のドミニク君と半透明な状態で空間に違和感等無く居座って居る人を覗き見る。

 なんだ。
 と言わんばかりに視線を投げかけて来たけど、ナンデモアリマセン。

 即座に視線を外し、次にアレクサ様を見る。

 …どうやってもこの兄弟、殺人鬼に見えない。


 1人は優雅な貴族子息。
 もう片方は憔悴しつつある一国の王子(暗殺者多数)。

 察するに、隣国であるウィックロー国がアナジスタ国に攻めて来るのはトロイア戦争の乙女ゲーム版って感じなのかな。
 現実世界での詳細はかなり違って居るけど。
 隣国に強奪された令嬢はアレス様のお父様とアレクサ様のお父様の子供を出産し、その子であるアレス様はアナジスタ国の宰相の息子として今まで育って居て、アレクサ様はウィックロー国の王子として育って居る。

 双子って言うことだし、妊娠時期ってほぼ…うわぁ。
 下衆いな考えでアレだけど、でも何処の国で産んだのだろうか?

 今考えても仕方無いコトが気になってしまうよ。
 更にはウィックロー国のお妃様って外交的には一度も表に出て居ないのよね。
 そりゃあこんな話し、あっという間に周辺国に知れ渡って居て、醜聞だろうけど。
 絵姿さえ出回って居ないって言う話だし。
 普通王国のご夫妻は絵姿にして飾っていたり、有名画家に描かせたりして国民に『顔』を知れ渡るようにして居る。
 勿論アナジスタ王国も、その周辺国でさえアナジスタ王国の首都であるロメインにある店で何店か飾っており、王都に来た時は「へぇ~」と観光気分で彼方此方の王族の絵姿を見て回ったもの。それなのに、ウィックロー国は国王の絵姿しか出回って居ない。
 噂では強奪した国として、国の恥だとして絵姿を出していないと言われているけど、もしかして今はご健在では無いのではないかと言う噂もある程。

 更にはよくよくアレクサ様の話を聞いてみると、アレクサ様はお母様のお顔を見たことが一度も無いと言う。

 この言葉をアレクサ様が呟いた時、相変わらず半透明な状態のアレス様の表情が一瞬だけヒクリと歪み、また元の冷静な状態へと変わっていった。
 その際ドミニク君の狐耳の毛がボワンッと膨らんだので、何か思い当たる節があるのかも知れない。


「(外交的には愛妾か、だから出さぬというのか)」

 ボソリと呟いたアレス様の声が微かに聞こえて居たのもまた、気になるよ…。
 モブですから頭から突込みませんけどね?







「おお~結構賑わっていますね」

「ああ、この街一番の市場だからな」

 只今私達はこの街の中央付近にある、出見世やら露店やらが並んだ場所に居ります。
 正確にはその少し前の馬車やら荷馬車やら、荷車やらが諸々と置かれている場所です。どうやらこの場所で一旦荷車等荷物を預かって貰うシステムらしく、大きめな馬小屋等も並んでおります。しかもすぐお隣にはこの街の騎士達や自警団が逗留しているらしく、何十名も先程から頻繁に荷物の引き渡しをしています。

「お客さん一番ではなく、此処しか市場は無いのさ~。ま、だからこそこの付近1大きな市場になっているのさ~」

 と、置いていく馬車と引き換えに番号が書かれた札をジン様が受け取っている。

「へい、馬車は銀貨一枚っと。確かに預かったさ~、毎度ありさ~。夕刻前には引き取りに来てくだせぇ、じゃないと銀貨もう一枚追加になりまっすっさ~」

 語尾に「さ~」とつける色黒の少し背の高い男性を目の端で見詰めると、軽く此方にウインクを一つ寄越される。
 うひぃ。
 何だろなあ、ウィックロー国って結構軽薄な人が多い?
 もしくは前世で言うところのイタリア人みたいなのだけど。
 何故そう思うかと言うと、先程から「お嬢さん荷物持ちましょうか?」とか、「此処初めてでしょう?案内しましょうか」とか。
 前世ならうっひょーと思っていたかも知れないけれど、今は何だかなぁ~って気分になる。
 イヤだって。


「荷物持ちましょう」=家業の宿屋に宿泊してくれという意味。
「案内しましょうか」=案内料発生しちゃうぞ、と言う状態。


 どれもこれも【金額発生】しちゃうぞってコト。

 これも前世のとある海外の南国に旅行に行った時、泊まっているホテルの庭先で可愛い東屋があって休憩していたら、現地人のこまっしゃくれた子供に「へい!レディ!景色のいい場所に連れて行ってやるよ!」と半強引に腕を引っ張られ、約三時間もの遠距離を徒歩で山登りさせられ、山頂に立って、「ほら、此処が絶景のビューさ!」と言われて其処で料金が発生。
 無論山頂だから帰りも徒歩で歩くし、場所が何処かわからず元の場所に帰るのにも賃金発生すると言う苦行が発生する…という事柄を何故か思い出してしまった。
 うん、策士だよね~。
 そしてそう云う相手って大抵顔が良い。
 現地人の子供も笑顔がとっても良い男子だったもの。
 初対面時にちょっと可愛いって思ったのが不味かったのだろうね。

 若干己の顔の質が落ちると自覚して居るような奴は、強引に相手の荷物に手を掛けて来ているのも居る様。流石にコレは下手すると強盗っぽいからそのスレスレの状態を狙って居るみたいだけど、つい先程タチが悪いのが騎士に叱られて居た。

 因みに、男性であるジン様もアレクサ様もこの人達にはスルーされていたが、何故か私にだけ集中して来ていたりする件。
 くぅ、な、何故だぁ!

「私の今の服装が簡易ですが軍の腕章付きですからね」

 しかもアメイジング軍のですとマリエルさんは苦笑する様に話し、私の側に来ていた優男…恐らく上記の策士のお仲間と私の間に入り込み、ダンッと片足を強く踏んで相手を睨みつけて威嚇をすると、その男性はそそくさと退散していった。

「フンッ弱虫め」

「アレクサ」

「事実だろうが。レナに触れようなど恥知らずめ」

「おや、随分方を持つようになったな」

「…ほっとけ」

 因みにアメイジング領地の軍はこのウィックロー国では1~2を争うほどに強く、国内で有名なのだとか。

「しかし、アレクサは随分とレナ嬢に対する雰囲気が軟化したな」

「そうですか?」

 ほっとけと言った後、怒ったのかズンズン前を歩いて行ってしまうアレクサ様の後を見失わないように追いかけつつ、ジン様が苦笑しながら話す。

「アレクサ、レナ嬢は此処の市場は初めてなのだ。そう急いで行かないでやってくれないか?」

「…」

 後を振り返りもせずに速度を落とすアレクサ様。
 うーん…軟化しているのか?

「そう言えば『荷物・案内』の人って男性ばかりなのですか?」

 私が女性だからかも知れないけれど、先程から見回してみても『荷物・案内』の人って女性が居ないのよね。

「女性は夜、繁華街やそう言う所で、だな」

 あ、察し。

しおりを挟む
◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360

BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600

NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846

宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...