105 / 113
6章 今日も隣国はゴタゴタしておりますが、隣国だと乙女ゲームの舞台を鑑賞させて頂けないので萎えています。
83
しおりを挟む「私はこの国、ウィックロー国ではあまり…その、庶民どころか下手をすると下級貴族にも顔が知られていない」
何処と無く機嫌が下降気味で、更にはどんよりとした暗雲を背にしているこの国の王子様であるアレクサ・ロー・ウィックロー様が視線を空中に向けたまま、誰に話しているのかわからない状態で独り言のように呟き出す。
恐らく私に言い聞かせて居るのだろうなぁと思っては居る。
目線は全く合わせていませんけど、ね?
何せ今居る馬車の中ではアレクサ様の真向かいに座って居る状況で、馬車内ではアレクサ様にマリエルさん、そして私という3名が居る。つい先程までジン様もアレクサ様の横に座って居たのだけど、御者側へと移動してしまった。
そしてマリエルさんは背後の方にある窓の方を向いている。
ジン様が何故御者の方に居るかと言うと、アメイジング家の馬車だと言うのを明確に示す為とアレクサ様の身を守る為。
ウッカリしていたけど、アレクサ様ってアナジスタ国の王都に居ながらもウィックロー国から暗殺者を何十人も送られて来ていたのよねぇ~。
拉致されて船に乗っている間、すっかり忘れていたけど。
だって、自分のコトが大事だし。
正直軽薄かも知れないけど、誘拐された身の上としては自分自身の身が一番大事なのです。ええ、薄情だろうがなんと言われようともそんなモノです。
そんな私のコトは兎も角、自国に居る間身の危険を余計に感じて神経を尖らせて居る状態のアレクサ様を気遣ったジン様が御者席に移動したってワケ。
爵位持ちで尚且高位な貴族位だからなのか、ジン様達の家紋入りの馬車のせいか滅多なことでは仕掛けて来ないだろうからと言うコトらしいけど、一応ジン様も表に顔を出して居たほうが牽制しやすいと言うことらしい。
という事は、ジン様の家は武力とかがあるもしくは有名なのかな?
何せ自国の貴族のこともあまり良く知らない元田舎者の男爵令嬢としては、他国の情報など露ほども知らないのです。つまり勉強不足です、反省。トホホ。
それにしたってねぇ。
一国の1人しか居ない王子の命を狙うって、どれだけ…。
「私が産まれた時も一ヶ月以上も経ってから国民に知らされたし、その後のお披露目も何もしていないのだ」
アレクサ様のお話を要約すると、
普通、ウィックロー王国と言う国家では国王の子は産まれて直ぐに全国民に発表。後に病弱で無ければだが王城内にて貴族達に生後一年か、もしくは数年後にはお披露目となる。
最低でも三歳ぐらいには顔ぐらいは覚えて貰うように、後の伴侶を得る為に行うらしい。
これはアナジスタ王国側も同じらしく、ガーフィールド様(第一王子)は首が座って即王国主催のパーティーにて数十分程のお披露目があったと、ビンセント先生の授業の合間に聞いたことがある。なおレスカ様はお母様であるお妃様が無くなって喪に服した後に間を開けてお披露目となり、王族にしては遅めになったともビンセント先生から聞いたことがある。
「父上が何故そうさせて居るのか、つい最近までわかっていなかった」
「…」
えーと、ナンテ返事をしたら良いのやら。
下手に慰めるのも何だか違うなと思うので口を挟む。
無言というやつだ。
と言うかね、他国の人間に事細かに事情を、しかも一国の王族の事情を語るってどうかと思うよ?しかも『恥』当たる部分でしょう?人や国によって感覚はマチマチだとは思うけど、少なくとも今の事情は私の感覚では王家の恥の部分だと思うのだけど。
え、まさか私イランコト知ってしまったからこのまま処分されたりしないよね?ダイジョウブだよね?
うわ、何だか怖いのだけど。
だったら尚更黙りだ。
事情とか知らないし、イランコトを言う気も無い。
怖いからね!
「お前は余計なことを言わないのだな」
うぉぃ。
スルーしたい気持ちを察して欲しいのだけど!
余計なことを言う以前の話なのですけど~!
「あのね、アレクサ」
ほーら、マリエルさんが困った子を見るような眼差して見ているぞ~。って、おや?マリエルさんの背後に何故か黒い窓が開いて、其処からアレス様の横顔と此方を妙に神妙な顔付きで狐耳をピクピクさせながら覗いている覗き魔、じゃなかったドミニク君が此方を凝視している。
コラコラ人様の話を盗み聞きしていたな?
と言うか、一体どういう原理であのアレス様の魔法?は成り立って居るのやら。
アレス様の魔法の色って黒いから闇魔法かと思って居たのだけど、もしかして違うのかな?…乙女ゲームではその辺りどうだったっけ?
ヤバイ、殺人鬼の部分が凄すぎて他があまり記憶にない、かな。
どうも本来の乙女ゲームの粗筋と大分違ってしまって居るから、何もかも同じと言うことは無いのかも知れない。
その証拠に、この世界では本来乙女ゲームのヒロインの筈のアメリー・メメントリー準男爵令嬢がマトモな恋愛劇を繰り広げていない。
これは気の所為では無く、本当のことだ。
何度か学園の食堂で見た場面ではバチバチ火花が散っている…なんて事もなく、気が付いたらヒロインであった筈なのにレスカ様の婚約者、ユリア・ブルックストン侯爵令嬢が圧勝してしまって居たし。
そして暑苦しい愛情をレスカ様から一心に注がれて、最初こそレスカ様から愛情を注がれて居なかったせいか、自身に自信が無かった為に高慢気味な雰囲気もあったユリアの悪い部分がすっかり蹴散らされ、とても可愛い女性に大変身。
今では私の親友になってしまった。
(レスカ様の重すぎる思いが暴発してしまっているが、それは…頑張れとしか言えない)
更には魔法大臣の息子のケイン・ノスタルジア・ジアス様も何時の間にか距離を置かれ、騎士団団長の息子のニキ・モイスト様からも同様の扱い。
ジン・アメイジング様は何となく接触しないようにしていたのかな?と言う感じでしか知らないのだけどね(何せジン様は第2校舎側の人だったので、噂でしかわからなかった)。
それにクリス・リストファー・クリス先生は見た目が乙女ゲームの時と180度違ってしまっていた為か、ヒロイン自体が接触をしていないように思う。
あのヒロインちゃん、結構面食いだと思うし…。
そして我が兄、ジーニアス・アルセーヌ・ガルニエ。
言わずもがな、接触どころか恐らく兄は認識さえしていないと思う………。話さえしたことあるの?という感じだしなぁ。
もしかしてヒロインちゃん、可愛そうな娘?
乙女ゲームでの攻略対象者の最後の砦?だと思っていたウィックロー国の王子、アレクサ・ロー・ウィックロー様なんてヒロインちゃんのこと、今も一言も喋って居ないよ?
少なくとも恋愛要素なんて現段階でもゼロな状態なのでは…?
「マリエル、わかっている。レナ、だったか。…つまらない話を聞かせたな」
「いえいえ」等と言う返事は出来ないけど、この返事も黙って置くことにした。
ただ次の一言に、更に黙りを続けることになったけれど。
「父が、側近や貴族達に私の……を…偽って居たのには…呆れたが、な…」
――はい?
11
◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360
BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600
NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846
宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)
新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360
BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600
NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846
宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)
お気に入りに追加
2,398
あなたにおすすめの小説


妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる