今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】

柚ノ木 碧/柚木 彗

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6章 今日も隣国はゴタゴタしておりますが、隣国だと乙女ゲームの舞台を鑑賞させて頂けないので萎えています。

81.1

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「クリス先生…?」

 正解と言うように微笑を口元に浮かべ、だが目だけは笑っていない冷酷な瞳で此方を見詰めつつも表面上のみ微笑んだその人は。

 普段学園のカフェテラスに食事に来る時は、ボーとした眼差しで半分眠っているような、もしくは濁ったような瞳のまま常に寝癖を直さず癖毛のようなボサボサ頭。
 もしかして櫛やブラシで髪の毛を梳かしたことが無いのでは?と言うぐらいに常に酷い状態で、天然パーマのようにうねうねとした髪の毛がトレードマークだった。
 何せ何時見ても見事に数十分程放置し、のびたインスタントラーメンの麺のようになっていた髪の毛だったのだから。
 その容姿のお陰で声まで伸びきった様に感じる位に、呑気な印象の先生だった。
 学生達の間でも変なあだ名を付けられていたしね。
 たしかクリスと言う名前に「パ」を付けた、「クリパ」とか「クリクリ」とか言う感じのあだ名だった筈。

 前世でもあったなぁ、学校の先生のあだ名。
 何名か思い出すのは小学生の時の「脳筋」、あとは高校生の時の「ポチ」先生。
 見た目とか行動とか、そのままの先生に付けたあだ名だった。

 脳筋先生は見た目そのまま、筋肉隆々の授業中でも小学生相手に目立ちたくて仕方無い先生で、テストの最中に急に側転とかバク宙をしてしまうので、正直迷惑だった先生だ。
 テスト以外にもやたらと目立ちたがる為に声も大きくて、女子人気は微妙だった記憶がある。男子小学生は同じく脳筋気味だった奴には人気があったようだけど、それも最初のウチのみで徐々に引いていった。

 と言うか何故テスト中にやる。
 狭い机と机の間の人1人位しか通れない場所で。
 お前の頭は目立つことしか考えていないのか。

 お陰で何時先生がバク宙をするのかハラハラして集中できなくて、学年最後には問題視されていた。何せその先生、既に50代いっていたから…まぁ、その、ね?全盛期より低下している体力やら技術力やら考慮していないらしく、何度か失敗するのよねぇ。其の度に学生の頭にドーンと音がなる位足とかがぶつかるから、しかもテスト中に。何人の生徒の頭に先生の身体がぶつかったことか。
 ワザとでは無いとは言え、迷惑以外何者でも無かったわ。

 ポチ先生は独身で60代手前の先生だったのだけど、飼っていらっしゃる犬の名前がポチでとても可愛がっていて、その先生とその飼い犬のポチの顔が何処と無く似ていて有名になったのよね。おまけに先生の性格も穏やかで優しくて、更にちょっとはにかんで笑う姿がオジサンなお年だったけど、生徒に人気で可愛かったって言うのもあって生徒に大人気だった。
 特に高学年の女生徒に大人気で、バレンタインにはポチ先生の机の上は色とりどりのチョコの箱が積まれていた。まぁ、大抵は犬用のおやつもあった気がするけど。
 その時期になると処分に困った先生が男子生徒を誘ってチョコをお裾分けしているのがまた、和む光景だった。
 職員室に居て、お菓子を生徒に分け与えると言うのは良いのだろうかと言うのはこの際置いておく。校風が自由な学校だったらしく、バレンタインにチョコの交換会とかも普通にしていたし、田舎のせいかノンビリとしており、風紀とかに縛り付ける先生が居なかったと言うのが幸いしたのかも知れない。

 そう言えば前世でポチ先生達にチョコを渡したことは無かったなぁ。
 脳筋先生は残念なコトに担任で一年間テスト中迷惑かけられていたけど、結構好感を持っていたポチ先生は担任でも無ければ担当教科の先生でも無かったから。ただ友人達と眺めていて和むわぁって話していたくらいだし。
 何だか懐かしいなぁ。


 だが今目の前に居る『隣国』であるアナジスタ国の学園の先生である彼は、ラーメンの麺のようにウネっている癖のある髪の毛では無く、真っ直ぐの直毛がサラサラと時折吹く風に流れている。
 髪の毛の癖は何処にいった?と質問したい位だ。
 更に言うと攻略対象者ですからね、当然っちゃ当然なのだけど。小憎たらしいコトに綺麗な顔面イコール【イケメン】なのですよこの人。所謂美形と言う奴です。学園主体だから当然大半の攻略対象者はヒロインとほぼ同い年なのだけど、その中に数名居る平均年齢を上げるタイプの人だけあって大人の色気とか諸々詰め込んで居るのですよ。
 無駄に。

 うそーん、乙女ゲームの設定とは違ってクリス・リストファー・クリスタ様は天パだと思っていたのに~!実は詐欺天パだったのかよぅ!
 というかね、別人だよコレ!
 詐欺だ!
 詐欺の容姿だよ!
 裏切られた気がする。主に心が。
 乙女ゲームの攻略対象者は全員これでもか!ってくらいに皆美形だったなんて。いや、そうじゃないとそもそも乙女ゲームの売上が上がらない気がしないでも無いけども。
 でも良いじゃない1人ぐらい平凡な容姿の人が居てもさ!
 年齢がちょっとお高めの人が出来たら宜しいかと思うのですよ。中年の美中年とかさ。誰得?と言われてしまうかも知れないけど、それはソレで。
 渋いオジサマとか素敵だと思います。
 この世界の実の父親が実の娘を売り飛ばしてしまう輩だったから、特にそう思います。
 よし、親父よ、金輪際一本も残らず綺麗に禿げろ。
 そして哀愁を漂わせるのだ!今すぐ禿てしまえ!

 とは言え目の前のクリス先生が中年という年齢には見えないのだけど、って一体幾つだろう?見た目20代前半のような気がするのだけど、でも学園の先生だからある程度年齢はいっている筈だよねぇ?
 違うのかな?

 学園では常に牛乳瓶の底の様な眼鏡を掛けて居て、目が見にくいのが普通で始終何処を向いて居るのかよくわからない人だったから尚更。
 乙女ゲームで唯一の容姿が違う人と認識していたのにぃ!私のこのヤルセナイ気持ちを返せ!製作者スタッフ諸君!

 文句言っても仕方がないのだけどさぁ、何だかムゥって拗ねてしまいそうになる。

 とは言っても授業中の彼を見たことが無かった為、彼が学園の授業中も同じ格好をしているのかはわからないのだが、何度か学園の廊下ですれ違った時も天パ状態で居たので授業中だけ姿を正して居たワケでは無いと思う。
 もしかして学園では常に髪の毛に櫛を掛けていない状態だったのかな?顔を隠すために分厚い牛乳瓶眼鏡を掛けて居たとかかも。

「よく分かったな」

「ええと、声で」

 一応カフェテラスの厨房で働く人間だったから、一度聞いた声や見た顔は忘れないようにしていたのよね。と言うのは嘘でーす。

 本当は乙女ゲームの攻略対象者だからです。

 と言うのもあるけど、とても印象に残ったからです。乙女ゲームでの姿とは180度も違う姿だったし。
 それが今ではそのまんま、乙女ゲームの画面から抜け出して来た様に小綺麗な姿。
 失礼とは思うが、滅茶苦茶違和感しか無い!

 本当は牛乳瓶の底の様な分厚いレンズの眼鏡は掛けてなくても視力は良いのかな?と言うかこの世界、中途半端に前世の世界で普通にあるモノがあったり無かったりして、違和感を覚える。

「あの学園のモノは皆、私だと気が付かないのが普通なのだが…」

 あ~うん、確かに。
 少なくともアレクサ様が失神から即気が付いて私に文句を言おうと立ち上がった瞬間、驚いた顔をしてクリス先生を見て硬直しているし。
 と言うかその反応、目を大きく見開いてって、えーと…驚いていると言うか、けどもっと何か違いがあるとか無いとかの方向?
 もしかしてお知り合い?学園での先生としてではない方向で。

「クリストファー先生…」

 ん、あれ?フルネームはクリス・リストファー・クリス先生だよね?クリストファーでは無かった筈。

「やあアレクサ、学園以来か。いや、ウィックロー城以来かな」
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NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846

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