今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
上 下
96 / 113
5章 今日も周囲も人間関係もゴタゴタしていますが、国内の紛争やら暗殺やらで物騒な最中、恋人が出来て戸惑いつつも鑑賞致します。

79,2 船の台所革命

しおりを挟む
 
 嗚呼早く帰りたい。ニキに会いたいよ…。

 等と一瞬思っていたら、

「(レナちゃん、海の男って言うのはスキを見せては駄目よ?)」

 マリエルさーーんっ!急に背後に気配殺して来ないで!そして何故耳元で囁くかなー!?
 驚いたわ、気配無くて。
 そして去り際にフッと耳に息を吹きかけないで~!
 うひゃぁってなったわ!
 その場で飛び退いて、思わず距離取ったわよ。

「マリエル」

「ごめんなさい、ついね」

 ジン様に咎められ、ぺろっと舌を出して謝って来るマリエルさん。
 でも反省はしていなさそうですけどねぇ~。完全に悪戯成功って表情しておりますよ。
 この悪戯っ子め、綺麗でカワイイから許しちゃうけどね!

「まぁ兎に角、横恋慕したいなら『本気』で『戦う』気で来るのだな」

 何故ジン様、男性陣に向かって威嚇シチャッテルンデスカ。
 今は女性陣が少ないから仕方ないとしても、陸に上れば正気になると思いますよ?
 もっと美人のお姉さま達が居ますからね。胸とか御尻とかこう、バィーンボイーンって感じで大人の女性が。私の場合だと少女への性的嗜好・恋愛感情があるってコトになりますよ。少なくとも年齢15歳以上離れている気がするし。世間的に見ても宜しくないのでは無いかな?隣国であるウィックロー国ではどうなのかは知らないけど。


 尚、アナジスタ国では……聞かないで。
 貴族では当たり前だなんて…っ。
 婚約とかどんだけ~ってものですよ。四歳児の婚約者が成人しているとかね?お貴族様のその神経、良くわからないわ。幾らお家の為とは言え、不幸としか言えないし。
 だからゲシュウみたいなアホが居るのかも知れない。
 よし、ハゲの呪いを久し振りに飛ばそう。心の中でやるだけだけどね。
 ゲシュウ、お前は禿げろ。私の実の親父のカルロスと長男のカイデンもツルッパゲになぁれ!後腐れなく禿げろ!もしくは河童の様に天辺だけツルっと剥げてしまえ!

 何故だかチラチラ此方の様子を伺っている男性船員達の視線を感じますが、スルースキル発揮しておきます。目が合うと何だか気まずいからネ!
 誰も本気なんてないさ。
 あまりにも見詰めて来るなら彼等も禿の呪いしておこうかしら。


 閑話休題。
 釣り竿だけでは駄目だった件。
 釣れないってワケではない。
 何せ餌は干し肉を付けているからね。
 だから餌が駄目ってコトは無い。
 何故かって?

 ふっふっふ…。
 忘れていたわ!魚って無茶苦茶暴れるってコトを~!
 誰だ、携帯電話のバイブが壊れたみたいに振動しているって言いそうになったのは。

 私だよっ!
 何とか堪えて口にはしなかったけど!

 鯖みたいな魚をどうにかこうにか釣り上げたのだけど、竿を引いた途端に物凄い振動で暴れ回り、折角釣り上げた魚をうっかり取りこぼしそうになって、釣りをしていた有志一同慌ててバケツに突っ込んで事なきを得た。
 だけど次に掛かった魚は残念ながら盛大に暴れた為、船の甲板から勢い良く飛び跳ねて脱出し、皆で落胆した。

 反省。
 網の存在忘れていたわ。

 釣りって言ったら網が無いと駄目じゃないか~!
 多分だけどって、其処まで知らないけどね。特に今は異世界だし。アレイ家の領地には海が無かったから、尚更海釣りなんて知らないのよ。
 川はあったのだけど、何せイタイケな幼女だった私は魔物が出るってことで領民達や母、特に次男のディラン兄さんにジーニアス兄さんから「危険だから行っては駄目」と言われていたのよね。その代わり、ディラン兄さんやジーニアス兄さん達が川に行くとお土産と称して沢山の川蟹や魚を捕まえて来てくれた。
 …その大半は「家長と家督を継ぐのが食べるべき」と宣う謎論争を吹っ掛ける、クソ親父とカイデンの腹に収まったかと思うと腹立たしくなるけどさ。お陰で私のお魚までカイデンが手を出そうとして来たから、「妹の分まで手を付けるとは!そんなに食いたければテメェが捕まえて来い!」とよくジーニアス兄さんが蹴りを入れていたなぁ。
 長男のカイデンってほんと駄目な兄だったなぁ…。

 オルブロンが育って来てからは、カイデンが此方に手を出そうとすると「成敗!」と言って、何処からかオルブロンお手製のスリングショットを取り出し、カイデンを狙って当てていた。
 クソ親父に見付かると取り上げられていたけど、其の度に何処からかまた取り出して何度もブツケて居た。
 オルブロンは一体何十個、いや何百個スリングショットを作ったのやら。そして其の知識は一体何処から出てきたのやら。恐らく領民のジージ達が教えているのだろうけど、オルブロンのお転婆ぶりは半端ないし行動力も物凄い。
 オルブロンの行動力は今、この状況下では見習わないといけない時が出て来るかも知れない。
 本来なら使う機会が無いのが良いのだけどね。


 急遽木か何か棒が無いかと訪ねたら、船の上に使っていない元食料が積まれて居た木箱を発見。何だかリンゴ箱思い出すわ~と思いつつ、箱の四面のうち【く】の字の形を残して何枚か取り出し、予備であった麻袋を被せて針と糸で補強。更に古くなったモップの棒の部分だけを頂いて、釘を使って無理矢理接続。
 …そういやこの船って修理用に釘とか板とか置いてあるらしいのだけど、有事の際用に板は使わないようにしていたらしい。だから棒とか木箱とか予備として置いてあるとか何とか。普通の船より貴族が乗り込んでいるせいで大きめの船らしいし、そういうモノなのだろうか。良くわからん…。
 動力も良くわからないしね。いや~流石に動力炉辺りには極秘らしくって、立ち入り禁止されていて入れないのよね。ちょっとだけ興味あったから入ってみたかったのだけどなぁ。ただ熱く無かったから蒸気機関では無いと思う。船も煙が出ては居ないし。謎動力だわ。

 兎に角木の部分は完成したが、網の部分はと聞いてみたら、

「私の練習用で編んだ編物を使えば良いわ」

 と、マリエルさんが提供してくれた。

 …。

 ジン様や、そこで黙らない。
 アレクサ様や、何時の間にか音もなくスッと姿を消してしまって居たなぁと思っていたらそうか、コレが原因か。
 そして背後で半透明化しているアレス様、黙して語らずと言った感じでマリエルさんが差し出したモノを凝視している。
 ドム君は目をまん丸くしていて可愛い。そして狐耳がピクッと。あの耳モフらしてくれないかなぁ、一度はモフモフしてみたい。

「うふふ、【練習用】だから、ね?」

「………あ、はい」

 何も言うまい。
 決して編物と呼べるような、そうでないような。何だろう…元毛糸がゴチャッとなっている箇所が何十箇所もあるような、無いような、あるような。
 あるって言えない気分。

「マリエルはそう、手先が…」

 ジン様がそこで黙り込んでしまったと言うのは恐らく睨まれたと言うことだろう。
 私の目の前にはマリエルさんが居て、その前にジン様。
 蛇に睨まれたカエルって脂汗かくって言うけど、今のジン様はその表現が適切。つつーと額から頬にかけて汗が流れて行きましたヨ。そして何故かマリエルさんから少し離れた場所には幻影女子達がひそひそ話を展開して居る。

「えーやだー」

「やぁねえ」

「お兄様ったら」

「ふふふ…」

 そして聞こえるジン様を嬲るような囁き声。

「マリエル、私が悪かった…」

「お兄様わかれば宜しいのです」

 プラス、兄妹の声。

 マリエルさん、否この場合の台詞はこの言葉の方が適切かな。

 女はマリエルさん限定強かった……。



 網問題(語弊あり)の話題はその辺の棚にでも無理矢理置いておいて。

 お魚連れました。しかも大量!
 お裁縫の針を使用した為か比較的小型の魚ばかり釣れていたのでもしかしてと思い、少量の干し肉を千切って撒き餌にしてみたら、飛び跳ねて来るはくるわ、お魚さんが!
 鯵っぽいのから鯖らしき魚に、鰹みたいなお魚がドンドンと!
 それらを網で気合を入れて海面に居る魚をすくってみたら、ガンガン捕獲出来た!と言うかこの世界もしかして漁獲と言うか、沖に出て網で捕獲する、投網の技術無いのか?

「とあみ?ふむ…網を投げる、か。そして魚を大量に…成程」

 うっかりジン様に聞いてみたら、深刻な顔をしてその場で考え込んでシマッターよ。
 何だか私失敗した!?隣国で今や敵国?に情報教えてしまった!?
 いやまぁ、重りとかないと投網って出来にくかった気がするし、大丈夫でしょう。

「…とすると、多少仕掛けがあった方が良いだろうな。重りも必要か?」

 ぐほぅ、ジン様自ずと正解を出し始めているーっ!
 これはもうどうしようもないね。と言うか本当にこの世界には投網の技術はないのかな?隣国だけかも知れないし、黙っておこう。

「お兄様、その場合網はやはり毛糸で?」

「もう少し丈夫な方が良いだろうね」

 何だか検討し始めたー!

「レナちゃん、何か網に使うのに良いものとかあるかしら?」

「専門職では無いので流石に知らないです」

 本当の本当に知らないけどね?
 そんなジィっと見られてもコレばかりはワカリマセン。
 それよりもお魚!
 お魚大量パラダイス!
 メニューが増えるよ!料理の幅がぐっと広がるよ!
 焼き魚に煮魚、油があれば素焼きもいいし、塩が大量にあるのなら塩釜だって…コレは流石に無理かな。でも、コレで多少は台所革命が出来る!

「そうそうレナちゃん。この船は6日後に目的地の港に着くからね」

 …ソレ、もっと早く言って欲しかったヨ!
 一ヶ月位掛かるものだと勝手に思って居たけど、よく考えたら目的地隣国でした。って、近場でした。

 取り敢えずお魚は捌いて内蔵取ってしまいましょう、そうしましょう。
 余ってしまいそうなのは干し魚にしてしまおう。
 美味しく出来ますように。

しおりを挟む
◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360

BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600

NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846

宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて

木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。 前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...