今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】

柚ノ木 碧/柚木 彗

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5章 今日も周囲も人間関係もゴタゴタしていますが、国内の紛争やら暗殺やらで物騒な最中、恋人が出来て戸惑いつつも鑑賞致します。

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「うーみーがでっかいど~」

 お久し振りです、この話の多分(←此処重要)【主人公】の筈のレッティーナ・アルセーヌ・ガルニエ男爵令嬢、通称レナです。

 何故かな~悲しいかな、数話ぶりに本編に出番が来ました、はい。
 そして前も言ったような、そうでないような台詞を呟いております。
 いやぁ~何故って、目の前に見えるは大海原。
 青い海。
 広がる広大な海。
 船は何台か離れた場所に停泊しているのは見えるけど、これってウィックロー国の船だよね?国籍がわからないように偽造していると言うのは、まぁ、何ていうか。侵略する気満々な気がする。と言うか何処からどう見てもヤル気だよねぇ。
 例えこの船の船員がどう思って居るかは判断出来ませんが。

 他には何も、ありませーん。
 せいぜい空ぐらいですかね、しかも滅茶苦茶曇っていますけど。地平線の遥か向こうの雲なんて、破壊神やら悪神やら暗黒神が背後に背負っていそうな程に真っ黒。
 水槽に習字の真っ黒な墨をドバっと垂らしたみたいだわ。
 絶対ひと雨来そう。
 そんなワケで只今何故か大海原のお船の上で、数名のお嬢様方と共に居ります。
 何故か数名の兵士のお嬢さん達と共に海の上でのお茶会です。

 雨が来そうなのに…何故?と思った方。それ、正しい。正常な事柄です。
 何故なら私もそう思うからっ!

「お兄様が求婚した方に粗相等あってはなりませんから」

 等ととても有り難いコトを言うマリエルさんー…ジン様の妹君で隣国の女兵士(初めて女性の兵士の方を見たよ。前世で言うなら海兵隊員でいいのかな?海軍?海上自衛隊?そう言えばアメリカの海軍と海兵隊ってどちらも海が付くけど、別組織だと何処かで聞いたような…)様で、先程から私に非常に気を使ってくれています。
 私に対し、神々しい優しさの塊のような女神様が此処にいらっしゃいますよ。
 アリガタヤ~アリガタヤ~。
 当然ジン様の妹君だけあって、その美しさは当然の様にこの場の顔面偏差値を軒並みガン上げしている。勿論他の女性達も個々違った美しさを持って居るのですが、この妹君は群を抜いている。
 …俯いても前を向いても目を閉じても、何をしても美しいって言葉しか出てこないのだけどーっ!実に羨ましい。ただ年齢のせいか、少女から女性への成長期特有…いや、違うかな。
 ジン様の家系だからかなぁ?中性的な美貌から女性的なモノへの変貌途中という感じで、何をしても視線を奪われて、ドキッとさせられる感じがする。男性なら即落ちするのでは無い?先程この場所に移動中、出会った兵士さん達の熱の籠もった視線を独り占めしていたし。

 アドリエンヌ様を思い出すなぁ。アノ人も軒並み男性陣の視線を独り占めしていたけど、アドリエンヌ様とは違った美しさで、此方は中性的な美貌の主だけどね。


 そして何故か、私の隣に当たり前のように座っているのはジン様。

 …何故隣にいる…。

 更に言うと、どういうワケか私の背後には悪雲を背負った風なアレクサ様が大層ご不満な様子でイラッシャイマス。
 椅子に座って居るけどさ、スッゴイです、怖いです、あのドス黒い雰囲気。
 更には一国の王子様に対しての女性陣のスルースキルが凄まじい。この場に居ない者として、誰一人として声を掛けずにほぼ女性陣のみで和気藹々として話し合っております。
 まるでそこだけ女子会の様です。
 この一幕だけで隣国であるウィックロー国のアレクサ様の扱いが知れるというモノ。
 それで良いのか、ウィックロー国…。とか思っていたら私の隣、片方空いた席に(ジン様とは反対側)何時の間にか座っていたマリエルさんが、「アレクサ様は自業自得ですわ」と呟いた。

 一体何をしたのだ、アレクサ様。

 …うん?貴族子女の扱いが酷すぎたから、皆ボイコット中と。
 私のコトですね、コレでも男爵令嬢ですし。令嬢の自覚はナイケド、寧ろ皆無だけど、カヨワイ女性とお年寄りには親切にですよね?其処、カヨワイお方は何方に?とか突っ込まない。
 全身全霊を掛けて泣くぞ!

 そしてアレクサ様ってば、人望無さ過ぎ。

「程々に頼むよ」

 苦笑しながら優雅に紅茶のカップを手に持ち、目を穏やかに細めて微笑むジン様。
 それらの行為をウットリと見つめる、お嬢様(女性兵士の格好)達。
 フンッと拗ねるアレクサ様。
 そのアレクサ様にブリザードの視線を向けるマリエルさん。
 うわ、アレクサ様ってば子供っぽい。

 そして…。

「子供か」

「若、お茶のお代わりです」

「うむ。良い香りだな」

「今日のお茶の葉はブルックストン領地のモノを使用しました」

「ほう、中々良いものだな」

 悪雲を背負ったアレクサ様の背後にニヒルに笑うアレス様と、ドムとアレス様に呼ばれている美少年ドミニク君。突っ立って優雅に紅茶を啜って居られるけど、何故其処にいるのやら。そして私の目にはアレス様とドミニク君の二名が半透明に見えるのだけど、意味わからん。
 と言うか普通に話していて良いのかい?声私にまで聞こえているよ。他の人、特にアレクサ様に漏れたら不味いのでは無いの?

 私が混乱していると、ついっとドミニク君が此方に寄り、

「(若のスキルで私達の姿を見えなくしているのですよ。勿論言葉も私達以外はお嬢様に聞こえるようにしております。ジン様だけは気が付いているみたいですけど)」

 とコッソリ教えてくれた。
 ソレ、一体どんな便利スキル?
 お嬢様ってドミニク君みたいな美少女面の美少年に言われると、何だか首の後ろが痒くなる気がするのだけど。
 アレス様なんか物理的にしていませんよね?距離はあるけど、例えばアレクサ様に先程からゴミが付くようにしていません?何だかアレクサ様先程から何度も肩を叩いて居るようですが、「虫かな?」とアレクサ様から独り言が聞こえて来るのですが。
 ナニカシテイマセン?ね、シテイルヨネ、絶対。

 アレス様は本来なら油断してはならない人物なのだから。
 チラリとアレス様の方を見たら、口元に人差し指を立てて『内緒』のポーズ。

 …ぐ。
 ちょっと、一寸だけ可愛いと思っちゃったじゃないですか、やだー!
 まぁでも私的な萌キャラでは無いので少しだけ思っただけですヨ。
 顔面偏差値は異様に高いけどね!と言うか、攻略対象者は全員そうだけど。
 で・も。
 推しメンでは無いですから。
 顔面偏差値はずば抜けて高得点ですけども、私の好みでは無い。

 乙女ゲームの攻略対象ですけど、怖いのです。恐ろしいのです。殺傷劇はリアルでは見たくないのです。私はモブ、乙女ゲームではその存在が名前さえ出て来ない、攻略対象者であるジーニアス兄さんの過去の背景的存在で、虐げられていた位置の男爵家三女なのですから。
 憎むべきは実の父親であるカルロスとロリコンのゲシュウ・ロドリゲス。
 どうでも良いけど、今更ゲシュウと書いて下衆って漢字で書けるなって気が付いた。
 ゲーム制作者、まさかこの名前狙っていた?
 何だか精神的に疲れがドッと来た気がするわぁ~…。


 この隣国のウィックロー国は滅多に雨が降らない国らしく、習慣として雨が降る一寸前に屋根だけの前世で言う所のテントと言うのかな?天幕のようなモノを設置し、その下で降る雨を見てお茶会をするのがお貴族様のお遊びだそうだ。
 そしてこの膜には雷除けの効果もあるらしく、こうした船には設置するようになっているとか、何とか。苦笑しながらジン様が説明したから、大した効果は無いのでは?
 変な習慣よね~と周囲のお嬢様達がかんらかんらと…いや、お嬢様なのにそんな高らかに笑って良いのかなぁ。マリエルさん達が「うふふ、殿方がジン様しか居られない時は何時もこうなの」と笑ってから口元に冷酷な笑みを浮かべつつ、アレクサ様に一瞥。
 ジン様は苦笑を浮かべ、アレクサ様は苦虫を…大人になろう、アレクサ様。
 これって皆アレクサ様に怒っているのかな?特に女性陣。
 どうでもいいけど、ドア付近に男性が二名警備に当たっているようだけどアレは関係ないってコトなのかね?
 あ、しまったって顔を数名しているけど。

 そして信じられないけど、本当に、ほんとーに、ドミニク君やアレス様の二名は他の人には見えていない。…多分。誰もソチラ側を見ていないし。
 時折ジン様の方を見ると、ジン様の視線が彷徨って居るように思われる。気が付いていると言うけど、何処に居るのかはわかっていないのかな?

 何しているのやらアレス様にドミニク君。

 この両名、きっと暇なのだろう。
 何故って「虫」と思われて居る件は別として、先程からアレクサ様の紅茶のカップの中身が減ると次々と継ぎ足しているのだ。
 何、コレ。
 私を笑わせたいのだろうか。
 そして恐らく頭にハテナマークを盛大に飛ばしているであろうアレクサ様は、カップを手に持ってジーと中身を見詰め出してしまった。

 中の紅茶、絶対にブレンドされているよね。
 味変質していそう。
 …そういう問題では無いのだけど。

 その様子をジン様は目を細めて見ている。
 笑っているよね、それ。口元が少し歪んでおりますよ?
 と言うか一国の王子様に対し不敬ってモノでしょう、アレス様。もっとやれ。
 思わずアレス様とドミニク君の方をちら見したら、アレス様がノートを取り出して「今度は何やる?」と大きな文字を書いて此方に見せてきた。

 …。
 駄目だ、笑いが…。
 ヤバイ肩が震え…。
 と言うかアレス様ってばソウイウ性格だったのか…。
 侮れん。
 悪戯好きなのかね?乙女ゲームでの性格とは随分と違っているけど、アレス様の全攻略って私やってなかったのよね、殺傷劇が余りにも怖くて無理だったので。
 弱虫と言うなら言えば良い。
 初回で殺されたのがトラウマだったのよ!
 ゲームで言う所の『初回殺し』と言うヤツなのかも知れないけど、『アレ』はほんとキツイ。
 そもそも十代の乙女があの殺傷劇を…あれ?んー…明確に覚えているのだけど、あのゲームってR指定されていたかな?完全にヤバイ部分はボカシが入っていたし、画面に映さないように巧妙に隠していたけど。血飛沫だってある程度隠していたし。もしかしてR指定される前に発売された?
 だとしたら結構前の…駄目、思い出せない。

 それに乙女ゲームの殺人鬼のルート以外に、今のようなお茶目な性格であるルートもあったのかも知れない。殺人鬼の状態が余りにも注目を集めてしまったって言うのもあるのかも知れない。残念ながら私はそのルートを辿り着けなかったようだけど。

「レッティーナ嬢、どうした?顔色が悪いようだが船酔いかい?」

 おっと、笑いを堪えていたら此処でジン様の助けが入ったー!

「え、ええ(駄目だ、笑いを堪えていたけど肩の震えがぁっ)少し体調が」

「「まぁあ!いけませんわ!」」

 おうふ、お嬢様達が一斉に立ち上がって口々に、

「風邪かも知れませんわ!」

「まぁなんてこと!何処かの誰かさんが変態じみたコトを仕出かすから!」

「そうよ!と言うか何故海に突き落とされた人が風邪を引かないのですか!」

「もしかしてお風邪を移されたのではなくって?」

「なんてこと!」

 ぶほぅ、なんていう台詞の数々。そして大丈夫なのかコレ…?
 アレクサ様なんて女性陣に詰め寄られる少し前から机に突っ伏して…ショックでも受けているのかな?

「おいマリエル!」

「アレクサが謝らないからやっているのですけど?」

「頼むからやめてくれ」

「その言葉は謝罪ではありません」

「…すまなかった」

「遅いです。それと謝るのは私では無いですわ」

 アレクサ様に詰め寄っていた女性陣に右手を翳して軽くふると、って、えー!?

 今まで詰め寄っていた女性陣が全員その場で即座に消え失せたって、何で!?何処行ったの?

「幻影魔法ですわ」

 マリエルさんが此方を見てにっこり。その後アレクサ様を見て、わーぃ寒冷地仕様ですからその視線。冷たい!寒い!いっそブリザード!ツンドラ地帯!
 大寒波が来ていますよーっ!

「マリエル、あまり魔力を使うと疲れるぞ」

 ジン様が釘をさしていらっしゃると言うことは…はーぃ、目の前本当にブリザード現象起こってまーす。何コレ幻影魔法って言うこと?
 ブリザードが幻影魔法と言われても納得してしまいそうになるのですが、違いますね、はい。
 ただ単にマリエルさんがアレクサ様に冷酷な視線を向けているだけですね、とっても冷たくて空気まで冷え冷えとしていますけど。
 一国の、しかも自国の王子に対してやっていい視線だろうか。いや、もっとやれ。全面的に支援してしまうぞ。

「レナ嬢も冷酷な視線を寄越しているし、いい加減意地を張っていないで素直になりなよ」

「意地等…っ」

「はいはい、アレクサは可愛いね~スッゴクカワイイね~」

「テメェ」

「うんうん、カワイイ可愛い」

「やめろ!」

 ジン様がカワイイ可愛い言いながら、アレクサ様の頭をナデナデと。
 …えーと、これって完全にお子様扱い?

「ジン!」

「うーん文句を言う姿もカワイイネー」

 ジン様、カワイイ言う所が棒読みデスケド…。
 そしてマリエルさん、口元に手を翳して笑っておりますね?声は噛み殺しているけど、肩震えていますよ~。

「わかった!わかったから!オイお前っ」

 お前ってアレクサ様、此方を指差して欲しくないな~。

「スルーするな!お前だ、お前!」

 お前って言う人は知らないな~。と言うか見えてない、聞いてない。
 隣国の王子に対する態度では無いのは重々承知しているけど、良いよね。何せ拉致された身の上ですし、お寿司。違った、人質ですし?
 しかも人質になった理由と言うのが、実の兄であるジーニアス兄さんの牽制のためっていうね。
 何と言うかもう、捕まって御免だけど兄さん自重して。
 そして私、『帰ったら』絶対にぜっっったいに!兄達から体術やら何やら訓練させて貰わないと!この先も何かあるかわからないし、自分の身は自分で守れるようにせねば!

「…悪かったな」

 コソッと小声で謝られた。
 勿論アレクサ様に。

「聞こえないですわよ、アレクサ」

「そうだな、聞こえないのだがアレクサ」

 この兄妹、ジン様とマリエルさんって…すっげー悪い笑顔―!
 成程これは確かに血が通った兄妹だわ、悪い笑みがソックリ。

「あーわかったよ!悪かったなレッティーナ嬢!」

 これで良いだろうと呟いて、アレクサ様はツンっとソッポを向いてしまった。

 そして笑うアメイジング兄妹。


 そんな和やか?な雰囲気になりつつある最中、天気は益々悪化してしとしとと雨が降り出した。




 何だかなぁと言う声が半透明な人から漏れた気がしたが、同意しつつも隣国の贅沢らしい雨音に耳をすませ、お茶を楽しむのであった。
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◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360

BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600

NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846

宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)

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