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5章 今日も周囲も人間関係もゴタゴタしていますが、国内の紛争やら暗殺やらで物騒な最中、恋人が出来て戸惑いつつも鑑賞致します。
閑話 ケインside
しおりを挟むカーッカカカカッ!
目の前の大男アルビオン・モイスト騎士団長が腕を組み、実に愉快そうに大笑いをしている。そしてその横に居るのは、大笑いしている騎士団長を呆れたように見詰める美丈夫ジーニアス様。騎士団長の背後に居ながら苦笑しているカモーリの騎士達。更には王都から三部隊程此度の婚約発表の為に何故か連れて来た、騎士達。
一部体に小隊3。つまり小隊50人が一部隊に3つ。つまり一部隊150程の人数。それが三部隊で合計450人。
パーティー会場には一応各部隊の代表格と爵位持ちが来ていたらしいが、流石に僕はそこまで把握していない。
―ああ~もう!
己の情報網の穴具合に嫌になる。
ココに連れてこられた時、さも当たり前のようにレスカが、
「団員500人全員連れて行くのか?」
と、アルビオン様に平然と問うた事に驚いた。
だってあの婚約発表の会場にはどう見積もっても300人位しか居なかったし、入らなかった筈。
王都で開くパーティーよりは人数が少ないのは知っているけど、それでも王都から離れた場所でのこの人数はかなり大規模なモノだと言える。
おまけに会場内の招待客はほぼ貴族達で、騎士も多少は居たが城に在住している王国騎士団は少数しか居なかった筈だ。
それなのに500人!?
一体何処にいたというの~?!
そもそも小隊人数らしい50人は何処から連れてきたの!?
港町カモーリは国唯一と言って良い程一番大きな港がある町だし、同じく港がある諸外国との貿易もある。それと同時に港が出来てからという物、小競り合いから海賊や盗賊共の略奪行為、違反行為である人身売買の窓口等幾らでも昔は罷り通ったという。流石に王都から近い場所でその様な蛮行等を何時までも放置すること等出来ず、港町が出来て暫くしてから『実力のある者』が地域を守るようになり、現在は慣例化した。と言うのも代々カモーリ家の優秀な者が管理者として統治していく様になったからなのだとか。
そう言えばバーネットって前当主が亡くなったあと、執事とメイドのルイが幼いバーネットを鍛え上げたって言ってたっけかなぁ~。
更に幼い時限定だったらしいけど風変わりな智将の様な人もいて、港の地形と町の地形を使った人海戦術に高度な海戦戦術、更には魔術を使わない奇妙な…派手なカラーリングにより、艦の速度や進行方向を見極め難くする、幻惑迷彩(ダズル・カモフラージュ)と言うものを使って圧倒的に優位にたったと言う。
確か学園で習った時の名前はエルロンって人らしいけど、学園の教授と共に色々と試行錯誤していったって言う話だよね~。生きていたら50代後半か60代前半らしいけど、語学のために一度会ってみたいよね~。僕中々トロイしさ。
早々。その時の説明をされた際、確か王都の次に兵の数が多いと聞いたのを思い出した。戦争になれば”略奪行為”や真っ先に狙われる町だと言う事なのだとも。
これ、僕達戦争に巻き込まれるんじゃないかなぁ。少なくともレスカは担ぎ上げられそうな気がする。
レスカは優秀だ。
下手をすると第一王子であるガーフィールド様よりも頭の回転が早いし、何より機転が利く。その為に彼の周辺は幼い時から傀儡にしようと、よからぬことを企む貴族達に狙われやすかった。その為に早々に地位を狙われない様第一王子よりも先に婚約者を決めた。後ろ盾として、またレスカを守るべく正妃であった亡き王妃様の意向でもある。
現国王と国王の弟もまた、その様にしたのだとか。
お蔭で王弟が先に結婚しているので、一番末のフォーカス様がレスカよりも年上なんだよね~。前例だよね~前例。うんうん。それで上手くいってるからって同じ事をしたんだろうけど~。他の国だと第一王子や王太子等、王位継承権第一位の人が優先的に結婚するか跡継ぎを産ませてから王位継承権第二位が結婚するのだけどね~。やっぱりアレかな~?さっさと跡継ぎ作っちゃえって言う感じかな?今の王弟って涙脆いけど、結婚前は女癖があるやんちゃな方だったらしいし。
お陰様で現在尻に敷かれているらしいけど、結婚後は浮いた噂一つ無い。
等とぼんやりと思っていると、
「いんや、450で足りんだろ」
はい?
ざっと表に居る敵国…今はもう隣国とは言わずに敵国で良いだろうけど~。
ウィックロー国の兵士達がカモーリの門前を3~4キロ(徒歩40~50分位の距離)程離れて囲む様に並んで居る。
騎馬隊や魔術師に弓兵等ざっと見ても3000は居そうなんだよね~…
それで450ってどーいうこと!?
どう考えても数の上だと無理過ぎない~!?
「雑魚兵だな」
うわ、レスカってば前方を見詰めてバッサリ。
そうなの?見ただけでわかるの?僕さっぱり分からないよ。
「おうよ、大方まともに訓練受けたのは後方に居る輩ぐらいだろ」
レスカとアルビオン様が部隊の方を見詰めながらペラペラと喋っている。
それで良いのレスカ~?なんて風を装って見ると、二人はペラペラ喋りながらも目線は戦場に固定。レスカは些か緊張しているようで、表情が何時もよりも硬い。
対してアルビオン様はそんなレスカの様子を見て『若いな』と思っているらしく、笑みを浮かべている。
そんな二人の様子を遠巻きにし、アルビオン様の部下の騎士達は二人の様子をこっそりと窺っている様に感じる。
ちなみに僕達はカモーリを囲む町の門の上にいるんだけど、他の騎士以外の兵士達は先程から弓やら何やらと物資の運搬中。
恐らくカモーリの領館から指示が出ているんだろうなぁ。
バーネット仕事してるよね~。
「団長」
「おう」
「町中の潜伏兵らしき者達は先程一掃されました」
「そうか、やはりモニカか?」
「それだけじゃありません。御子息のニキ様とご一緒のレッティーナ様もご活躍なさいました」
ぶふっ
何してるのさレナちゃーん!
そしてニキぃ~!なにレナちゃんに戦わせてるの!?
確かにレナちゃんは大人しくしているタイプじゃないけど。
でも女の子なんだよ?しかも僕らより年下の。
ニキってば確りしてよ!怪我なんて無いだろうね?ちゃんと守らないと後で殴るよ!
「おう、中々やるなアノ嬢ちゃん」
いやいやいや、そうじゃないでしょ~!
「怪我はしてない?」
思わず報告している騎士を見詰めって副隊長じゃないか!ええと名前は確か…ニールセン・ニルズヤード。子爵家の次男だった筈。
「大丈夫ですケイン様。ニキ様もレッティーナ様もピンピンしてます」
「おう、ってことはモニカは火傷負ったか」
「自身の魔法でですね」
「相変わらず甘いなぁ~アイツは」
何してるのさモニカ様~!
そしてアルビオン様、
「やべ、バーネットに後でグチグチ言われそうだ」
ってぇ~…
「よし、決心がついた。私は『向こうに行く』」
「へ!?レスカ?」
「ケイン後は任せた」
「えええええ!ちょ、レスカぁ!?」
僕が焦って居る間にレスカはチャッカリとアルビオン様に挨拶し、問答無用でスタスタと去って行ってしまった…
そんなワケで只今僕は何故かレスカに護衛だからと付いて行こうとしていたジーニアスの首根っこを必死で押さえ、「過剰戦力」だと言ってカーッカッカッカと大声で笑うアルビオン様の元。
町の門の上で武器一つも持たずに立ち尽くしております。
いやぁだってね…
「本当に良いのですか~?」
「構わん構わん」
既に戦場となった壁の下ではアルビオン様が連れて来た騎士達では無く、ここカモーリに在籍している騎士達が戦っていた。
あ、忘れてた。
+ジーニアス様もです。
アノ人近衛兵だよね?結構良い地位だよね?ついでに言うと最近爵位を頂いて男爵になったばかりだよね?無茶苦茶なんだけど!!
「うう~む、やはりジーニアスはコリンと今回みたいな戦場ではコンビ組ませては駄目だな。過剰戦力と言ったが、アイツ一人でも敵の半数戦意喪失させてるなぁ」
確かに。
ジーニアス様が今回手に持っている剣、近衛兵が持つべき正規の騎士の剣じゃないんだけど…(それでいいの?)両手剣を一振りすると大地が裂けて、周辺に竜巻が幾つも巻き起こる。お蔭で周囲は血眼になって逃げおおせる敵だった人々の波が広がって、ジーニアス様の周囲だけぽっかりと穴が空いている。
「面白いな、王都に戻ったら部下の騎士団全員対ジーニアスで模擬戦やるか」
「そんな軽い調子で言わないで下さいよ、アイツ本気になるとエゲツない攻撃連打して来るんですからね。目潰しとか踵落としとか、急所攻撃とか。あんな綺麗な顔をしてへらりとやって来ますからね!」
集団模擬戦なんてやったら団員全員に絶対に恨まれます!
等とほのぼのと話している副団長との会話をケインは「ここ、戦場だよね?」と思いながら聞いている。ココだけ平和なんだけど…とアルビオンによって待機と言われたケインは仕方なく会話を聞き、眼下を見詰めていた。
「はっはっはっは。やっぱアイツは領地で揉まれたな」
ん?
揉まれたって領地で訓練していたという事?
確かにジーニアス様は王都に来て僅か数年でメキメキと力を付けていったって言うけど…あれ、でもそれなら変だよね~。
「ほれ、アレイ領には前領主とその娘の縁で、ジージとエルロン達が居るからな」
「はい?」
僕は初めて聞いた言葉に驚いた。
ええと、確かジージという人は学園の教授で。更にはエルロンという人はさっきもいった、幻惑迷彩(ダズル・カモフラージュ)を…
「ええええええ!?それじゃぁジーニアス様のあの強さはっ」
「なんだ知らんのか?あ~そうか、俺等の世代でないと知らないのかもな」
「もしくは上の世代とかですかね」
「お前、然りげ無くディスるなよな…」
「ふ、当たり前です。私とてジージ様方にご指導して頂きたかったのに、それを」
「それ、俺のせいじゃねーし。ジージが”隠居じゃー”って勝手に『全員』引き連れて学園出て行っただけだし」
「切っ掛けは貴方だと伺いましたが!?」
己俺に責任押し付けたなあのジジィ!とか何とか。
アルビオンと副隊長ニールセンのやり取りを見て、「僕も指導してくれないかな~」等と思っていたケインはそれが今後フラグになるとは、この時露程も思って居なかったのだった。
10
◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846
宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)
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