今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】

柚ノ木 碧/柚木 彗

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4章 今日もお屋敷も学園もゴタゴタしていますが、働いて・学んで・そして何故か陰謀に巻き込まれつつ何とか奮闘致します。

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「つ、疲れた」

「お疲れさん」

 この人、て言うかもうっ!ニキってば信じらんない!
 三曲どころか連続で5曲も踊らせられたー!

 お蔭で疲労困憊です。っていうかよく持った私の足!
 ヒール高いのに、エライ!
 自画自賛しちゃうよ!

 まぁ、何故か三曲踊って戻ろうとした途端、ニキと踊りたい御令嬢が順番待ちしてる気配がヒシヒシと伝わって来たんで、痛む足に喝を入れて+二曲もぐるんぐるんと踊ったわけですよ。あははは…

 レスカ様達並か!
 私一人で足を引っ張る状態ですがね。

 流石に六曲目は死ぬ、と訴えて戻ることにしたのだけど。
 ジーニアス兄さんが上手いこと順番待ちしていた御令嬢を引き連れ、ダンスホールでエスコートしていたので助かりました。いや~流石攻略対象者ですね、御令嬢の目が見事なハート型だわ。
 完膚なきまでに令嬢達の心をゲットしているよ!
 て言うか何人無自覚に落した!

 我が兄ながら恐ろしい……。

 数名いた御令嬢お一人様につき一曲を踊っている為、今度はほぼ全員もう一度兄さんと踊ろうと順番待ちをしている。
 何とも現金なもんだなぁ。

 ジーニアス兄さんはこの現象を理解しているのか居ないのか…いや、あの顔は全く理解していないな。多分今も踊りながら別のこと考えている状態だろう。相変わらずだなぁ兄さんは。
 お蔭で此方は楽ですが。

「お帰りなさいませ、レッティーナ様ニキ様」

 先程の席に戻るとアドリエンヌ様が柔和な笑顔で微笑んでいる。

 …あれ?そうか、これだ。
 傾国の美姫って言われる由縁だと、先程踊っている最中にニキに教えて貰ったのだけど、成程納得。この様に微笑まれたら男性ならコロッと落ちてしまうかもしれない。
 そんなアドリエンヌ様の隣には、私の鎮静剤兼安定剤のユリアが…あ、何だか扇で口だけでなく目元まで覆って居るけど、耳が真っ赤だ。

 その向かいに座っているレスカ様を伺うと、物凄い上機嫌。
 きっと町中の郵便ポストが赤いのも、電信柱の背が高いのも笑って許せる状態だろう。とは言え電信柱は此方の世界には無いし、郵便ポストも赤くない云々より存在が無いのだけど。

 …何やらかした、レスカ様や。
 ユリアに何をしたんだ、口を開くと唯我独尊の顔面偏差値が桁違いに高く、周囲の女性達でさえ霞ませる威力持ちの第二王子様や。
 またユリアに露骨なストーキングしたのか、まさか等々乙女の関門であるデリケートな場所にまでつ、着いて行ったのか!?主にトイレとかトイレとかトイレとかっ!?ええい白状しろ。
 言わないと先程嫌がった撃墜王と呼ぶぞ、レスカ様!!

「お前は帰って早々それか」

「ユリアがこの状態ですからね」

 そう言うとレスカ様はグッタリとテーブルに突っ伏しそうになるのを何とか堪え、ユリアはピクッと震えて益々扇で隠れていない部分が真っ赤になってしまう。

「げげ、これ本気で付いて行った!?うわ、それはちょっと乙女の秘密を探りたい男心ってもんでしょうが、幾ら何でも酷すぎますっ!乙女の敵です、物理的に排除対象です!劣悪な敵過ぎます!」

「おいニキ、お前の女何とかしろ」

 チラリと此方を窺って居ると思わしき女性にレスカ様は目線鋭く居抜き、威圧をかける。掛けられた女性は顔面を蒼白にし、『知らぬ存ぜぬ、聞いておらぬ』と言った風情で会場内に逃げるようにサササッと移動して去って行く。
 何処にでも居るよね、ああいう人様の事情を盗み聞きする人。まして魑魅魍魎が大手を振って歩いている、そんな混沌とした貴族社会だ。そう言った者達を裏で仕向けて情報を得ようとする貴族も多いと聞く。所謂『暗部』と言ったモノが主にそうなのだけど…
 それって王家に多いって言うよねぇ。
 敵対派閥にだって多く居るだろうし。
 気をつけようと気を引き締めていると、

「俺が止めるとでも?」

「無いな」

「そんなキッパリ断言するなら言わないで下さいよ」

「1/10でも可能性があるなら言うぞ私は」

 流石ストーカー粘着気質。
 諸々半端ないな!

 そしてレスカ様然りげ無く…その、「お前の女」ってぇえええっ!
 ひ~っ言われて呼ばれて何とやら!
 恥ずかしいっ!
 落ち着け私の心臓!
 この場で飛び出したら死ぬぞっ!
 ソレ以前に飛び出たら普通に死ぬけどな!
 あああ、それにしてもニキってば何止めない宣言してるの…面白がり過ぎ!
 楽しんでるでしょう!?此方見て笑っているしぃぃ~!ナニそのイケメン顔!惚れそう!嫌もう惚れてるけどぉ!って、何だこれは何処の脳内恋愛体質状態になってるよ!それは私だよ!って混乱し過ぎ!

 そして分数の数の表現方法がこの世界あるんだね?と言うことは、油断してると学園に入った後結構苦労しそうだなぁ。勉強大事だわ、王都に戻ったらちゃんとビンセント先生に教えて貰わないと皆について行けなく為りそう。
 あら?勉強の事考えたら落ち着いたわ。成程、今度から勉強の事を考えよう、そうしよう。

「あのなぁ、レナ…」

 前半のストーカー粘着気質、つい口に出してた。
 そしてグッタリするレスカ様。

「お前等ぐらいだぞ、この国の第二王子の私にそんな口を聞くのは」

「あら、お好きな癖に」

 おや、ユリアが復活してきたみたい。
 楽しそうに目が笑みを作っている。
 そしてそのユリアを見て目をパチクリと瞬きを繰り返し、

「そう、だな」

 と、薄っすらと頬を染めて穏やかに笑むレスカ様。

 どが付いちゃう超ドM告白?
 と一瞬思ってしまったけど、あれ何かこの台詞今言っちゃうと場の空気が違う感じだわ。あれ~何かユリアとレスカ様の空気が先程とは全く違っているなぁ。

 確実に何かヤラカシタなレスカ様。
 何時もと全然対応が違うけど、ナンカこう…幸せオーラ全開?
 そして何だかこう、んー?なんだ?
 何だかむず痒くてじれったい。

 これは100%したな。

「何だかお幸せそうですわねお二人共、羨ましいですわ」

 そう言って淡く微笑みを称えるアドリエンヌ様。
 …向こうの方で男性が倒れた。
 多分このアドリエンヌ様の笑みに当てられたかな。
 そのアドリエンヌ様の視線ですが、時々チラッとダンスホールに居るジーニアス兄さんの方に向き、小さく思わしげな何とも艷やかな吐息を吐いていらっしゃる。

 うーん、これはアレかなぁ。恋の病的な何か?
 そうこうしている内に兄さんが此方へと帰って来そうに為ったのだけど、また一人の女性にやや強引気味に連れられてダンスホールへと向かって行った。

 兄さん、その顔。
 令嬢には隠れる様にしてるけど、露骨に嫌そう。

 そろそろ流石の兄さんでも疲れてやないだろうか?
 そしてそんな兄さんに向かって、微かに右手が上がりかかっていたアドリエンヌ様。
 ん~…

「アドリエンヌ様、ジーニアス兄さんと踊りました?」

「い、いえ」

 ふむふむ。
 そして何だか反応が。
 チラリとユリアを見ると、ニコリと微笑を寄越してくる。
 よし、それならば。

「アドリエンヌ様、良かったら今度私の家に遊びに来ませんか?」

「宜しいのですか?」

「はい。アドリエンヌ様を招いてその、ユリアとは何度かやっているのですが、お茶会の練習をしているのですが…」

「まぁ、私をお招きして頂けますの?」

「はい、喜んで!」

 パァァァアッと高貴なる薔薇一輪が花開く様子は正に圧巻。
 それまでアドリエンヌ様をコッソリと覗いて居た子息達数名が興奮したのか、会場内でバタバタと倒れた音がした。






 * * *






「む?何だ」

 ザワザワとし始めた会場に、レスカ様とニキが目敏くざわめく方を向いて様子を伺う。今しがたアドリエンヌ様の魅惑にやられて倒れた男性方とは別に、明らかに騒ぎが違って居る。騒々しいとはまた違う、妙な胸騒ぎの様な予感めいたざわめき。

「レスカ様」

 ジーニアス兄さんがダンスを終わらせ、急いでレスカ様の元へ向かって来る。その際共に踊った後にエスコートされて会場へと戻って言った女性は、目だけで兄さんを追ってからほぅ…と言う何とも色っぽい溜息を付いていた。

 見事に陥落させたねジーニアス兄さん。
 うん、兄さんそっち方面にも無双出来そうで怖いな。
 ただ当人が完全に分かって居ないっぽいのが救いだけど。

 頼む兄さん、女誑しにならないでね?
 オルブロンが昔、「女の敵になったら夜な夜な寝てる兄さんの耳元で、「毛根ちね~」って言ってやる」等と言っていたのを思い出したよ。
 そうならないのを願っておりますので、頼むよジーニアス兄さん。

 ちなみにオルブロン、父親のカルロスとカイデン兄さんには既にヤラカシタそうだ。実証済みって胸張って言ってたんだけど、ナニがどうして実証済み!?とか聞いたら、
「額の一部見て」と実に楽しそうにしていたので見てみたら…

 カルロスの右額側がやや禿げのように綺麗に無くなっており、カイデンは特徴がある真ん中の富士額の部分が綺麗に平になっていた。二人共必死で前髪で隠そうとしていた様だけど、風が吹く度に……

 へい!光ってるぜ!
 ってな状態に。
 長男カイデンは若干青く為っていたから即生えて来るんだろうけども。
 それにしてもあれって多分一本一本綺麗に抜いたんだろうな…。
 枕元に大量の抜け毛で二人共地獄絵図みたと思うよ?とオルブロン、微笑んでいたから。

 相変わらず恐ろしい子っ!

 ジーニアス兄さんはカイデン兄さんとは違うから、大丈夫かなぁとは思ってはいるんだけどね。
(剥げじゃないよ!?女誑しなんて言うのに為らないようにって事。父親はスルーで。あれはどう考えてもモテナイ)

 ディラン兄さん曰く「デュシーとレナとオルブロンの妹達が可愛くて仕方無いみたいだからね、ジーニアスは。だから大丈夫だろ?それにまぁ………シドニー姉さんに、まぁ、色々とね」

 ディラン兄さんが言い淀むってナニサレタンだろう……。
 シドニー姉さん、ウチの男性陣には冷たいからなぁ。
 特にカイデン兄さんには冷戦状態だったけど、王都に来た時に私には優しかったのにジーニアス兄さんには冷ややかな状態だったし。

 ん?ディラン兄さんはどうだったって?
 …なんか、王都に来たディラン兄さんには心底同情してた様な気がする。
 今なら分かるけど、多分カイデン兄さんの尻拭いを年の近いディラン兄さんがしていたんじゃないかなって思うんだよね。
 カイデン兄さん相当学園でヤラカシてた様だし。
 元々アレイ家の内情、貴族子女の間では結構バレてるからね…

 ん?
 あれ?
 そう考えるとちょっとおかしくない?
 アレイ家って基本辺境の『ド』がついちゃう程に辺境の田舎にあって、ぶっちゃけるとほぼ交流が無い状態。おまけに途中の道中は下手な冒険者程度では倒せない、高位の魔物が出て来る地。他の貴族達との交流だって聞いたことが無いし、寧ろあったの?って問い正したい程。それなのに、何故アレイ家の状態が広がって居るの?

 今この場に居ない人を思い浮かべる。
 確実に『モニカ様』だよねぇ………

 ナニやってくれちゃってるんだモニカ様。
 そしてアレかな。アレイ家はモニカ・モイスト様所かモイスト家総出で現在不味い状態なんじゃないかな~…いや、元々か。うん、どう考えても尻に火をつけられて居るような状態だものね。借金地獄だし。よし、ヤッテシマイナサイ。いっそ完膚なきまでに、主に父カルロスとカイデンの二点で。
 でも領民とかモーリー母様とかには手を出さないで下さい。
 切実に頼みます。

 …って思っていたら、当人が婚約者であるバーネット様を引き連れ、足速く此方に来たんだけど何だか焦って居る様で。一体どうしたんだろ?

「レスカ様、ニキ」

「何事かあったんだな?」

 レスカ様が問えばコックリと頷くモニカ様。
 するとスッとレスカ様は目を細めてチラリと隣国の王子であるアレクサ・ロー・ウィックロー様の方を一目見、それからジーニアス兄さんの方を見て。
 兄さんは兄さんで何か心得ているのかコックリと微かに頷き、周囲を見回し初めた。





「国王の妾、キャメロン殿が王城で襲われて亡くなった」

 その時。
 パーティー会場の隅に居たアレクサ様が口角を微かに上げ、壮絶な微笑を浮かべたのを見てしまった。

 アレクサ様…?
 え、ナニその笑み。
 ゾッとした得体の知れないモノが背に走った気がして、咄嗟に側に居たニキの手を掴む。するとニキが大丈夫という様に握り返してくれたけど、それでもその悪寒の様なモノは消えず。

 と同時に、レスカ様が訝しんだ目でアレクサ様を眼光鋭く睨みつけ、その瞳には疑惑の目で見ている事に気が付いてしまった…
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◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360

BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600

NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846

宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)

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