今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
上 下
70 / 113
4章 今日もお屋敷も学園もゴタゴタしていますが、働いて・学んで・そして何故か陰謀に巻き込まれつつ何とか奮闘致します。

59

しおりを挟む
 私達四名。


 ユリアにレスカ様、それに私とアドリエンヌさんとで席についてお菓子等を摘んでおります。


 こうやって食べていると空気を読み、他の貴族の方々は接触しなくなるのだとか。とは言えそれでもやって来る強者は居ますが、尽くレスカ様の牽制パンチで撃墜している。

 あれだ、こっそりと撃墜王と呼ぼう。


「レナ、その変な名前で呼ぶのは却下だ」


 …おっと、口に出して居たようだ。

 レスカ様にジト目で見られてしまったよ。


「ほー成程成程、レッティーナ様って中々面白い仇名考えるね~」


「そうなんです。レナは他の子にはない面白さがありますわ」


 すっかり馴染んだ二人はモクモクと御洒落菓子なエッグタルトを摘んでいる。


 何でもこう言った御洒落系なお菓子とかジャムとかを使ったお菓子はあるのに、何故カレーが無いんだ。アジアンなお菓子が無いんだ。中華なお菓子のゴマ団子とか月餅だって食べたいんだぞっと。流石にこれは国柄的に無理?和菓子とかも無理そうだよね~。


「む?ゴマダンゴ?ゲッペイ?それは甘いものか?美味いのか?」


「変なとこ食い付かないで下さいよレスカ様…」


 向かいの席に居て好物のプリンを黙々と食していたレスカ様、そのレスカ様が瞳をキラキラと輝かせて食い付いてくる。相変わらずの甘党め。と言うか隠さなくて良いのか?学園ではコッソリ隠れてプリンを食べていた癖に。


「レナが(食堂で)作った林檎の蜂蜜タルトが美味かったからな、そのレナが言うなら間違いなく美味いのだろう?」


「ええ、まぁ…」


 前世の記憶があるからだけどね、とはまさか言えない。

 でもな~この世界では白胡麻を見た事が無いんだよね。だから胡麻が無い団子状態になっちゃうし、それは胡麻団子とは言えないなぁ。と言うかあれ、胡麻団子って黒胡麻だったっけ?私が食べたのは白胡麻だったんだけど、どうだったっけ…?


 それと月餅、これは無理。


 そもそも作り方が分からないし、材料も一部しか分からない。胡桃と幾つかの木の実と、後は何だろう?って思ってしまうあまり、前世でも何度も食べた記憶が無いって言うのが問題なんだろうけど。


 ちなみに蜂蜜タルトは余った食材で作った食堂の賄いおやつだった筈なのだけど、気がついたらチャッカリとご相伴に預かって居たよ、この第二王子様。オバサマ達苦笑していたし、ほんっと良いキャラしてると思う。


「食いたい」


「レスカ様や…」


「駄目か?」


「無理です。食材が足りないですね」


「そうか、残念だ」


 いやね、そんな何処ぞのワンコみたいに切なそうな顔をしてこっちを見ないで欲しい。

 出会った当初である時ならその美貌(?)にしょうがないなぁって思うけど、対岸の海成らぬ会場の端っこに居て、今だに女性に囲まれて困っているらしきジーニアス兄さんから異様な殺気が漏れて来てるので程々にお願いします。


 嗚呼、兄さんの殺気にビビった令嬢方が数歩引いてる。

 そして出来上がる謎の空間。

 まるで旧約聖書のモーゼの様に、手を上げると海が割れる奇跡の様だ。此方ではジーニアス兄さんが殺気を飛ばし、それに怖気づいた令嬢方が海の様に引いていったのだけど。


「…相変わらずのシスコンめ」


「そう言うレスカ様はユリア様のストーカーでしょうに」


 殺気ダダ漏れついでに何故か変な色気ダダ漏れ状態で来たよ、ジーニアス兄さん。何その状態、私にもお溢れが欲しい。護衛は良いのか?と言うかその謎の色気は意味あるの?


「騎士団の面子に預けて来た。流石に休憩したい」


「女性だらけだったものね」


 兄さんが護衛を交代したら、それまでアレクサ様や兄さんに侍っていた女性陣が蜘蛛の子を散らす様に散っていき、一部を除いてアレクサ様に群がる女性達に吸収されて行った。後に残される、苦笑しながら呆れてる雰囲気の騎士団の護衛達。

 そして此方へとスキあらば来ようと虎視眈々と狙う令嬢の視線。

 怖っ。

 それらを物凄い殺気で牽制する兄さん…何かとてつもなく機嫌悪い?

 だからこそ謎の色気を振りまいて居るのかしら。

 その秘訣教えてくれないかなぁ。


「数日会えなかったな、レナ」


「…」


 あ~これは、ヤバイ?かも…

 レスカ様は知らんふりしているし、ユリアは「ああ、成程」って雰囲気。そしてアドリエンヌ様は「おうふ!?レナちゃんのお兄さん超が付く美形。それが激怒中?修羅場?やべー色気すげー」って小声で呟いてるよ。口元手で隠して言ってるけど、丸聞こえだからね。流石パーシャさんの従姉妹、妙な説得力がある。


「今日のドレス、サイズ直して貰って急ごしらえして貰いましたから」


 困ったことに、私が欲しい色のドレスが部屋に無かったんだよね。

 ユリアの部屋にあったのは胸に合わせるとドレスの丈が長く、身長に合わせると胸が小さすぎて入らず。どうにもこうにも出来なくて、流石に格式張ったパーティーでは無いけど、まさか持って来たワンピースとかでは駄目だろうと、急遽商人さんを呼んで裾を上げて貰った。


「その話は聞いて居る」


 そうなのです。今着ている私の全身を包むドレスの色は緋色。

 初めて着たよこの色のドレス。

 ドレス事態も滅多に着たこと無いから、と言うか王都に出て来てから初めて身に纏った。だからほぼどの色のドレスでも当て嵌まるのだけど。


 何故私がこの緋色のドレスを身に着けているのかと言うと、悪役令嬢みたいだから。なんて、そんなチャレンジャーな事は決して無い。

 悪役令嬢なんてモブの私には無理な程の立役者。

 どう足掻いてもその役には登れないし、成ろうとも思わない。怖いからね…


 さて。

 ここ3日、会えないながらもニキ様の手紙がその、毎朝部屋に届きまして…。格式張ったものではなく、簡単に書いてある程度なものだけど。

 同じ領館に居るのにって思ったけど、先日の侵入者を追い掛けて居るらしく連日忙しく探し回って居るらしい。ニキ様、モニカ様に連日連夜、深夜遅くまで連れ回されて居るとの事。これはこれで仕方無い。


 でもね、手紙を書く時間が僅かでもあるならニキ様。

 少しだけでも会って貰いたかったな……声聞きたかったよ。


 ちなみに手紙は大事にしたいから、旅行用の鞄に雨に濡れ無い様に布に包んでしまって置きました。これなら万が一にも大丈夫、かな?色々とね。特にウッカリとジーニアス兄さんが鞄を開けてもちょっと見だけだと分からないと思う。

 いや、思いたい。


 だって、ニキ様のお手紙だもの。

 大事に取って置きたいじゃない。

 帰ったら忘れない内に綺麗な小箱に入れて保管しよう。


 そしてモニカ様。貴女今日の主役じゃなかったっけ?

 婚約発表の日迄に怪我したらどうするんだってニキ様の手紙に書かれていたけど、相当危険なことでもして居たのかな?


 そして、手紙の中に書いてあったんですこの一文が。


『パーティー当日、レナの瞳の色を身に纏って行く』と。


 滅茶苦茶悶ましたともぉー!

 手紙を握り締めて、ベットの上でゴロンゴロンとついしてしまっていたら、呆れた様な顔をして何時の間にか来ていたユリアに見られたけれど。

 そして今気が付いたけど、チャッカリとレスカ様とユリアってば、お互いの瞳の色を身に纏っているし。

 レスカ様は翠の衣装、ユリアは青いドレス。


 …くっ、このラブラブカップルさんめ!

 毎度毎度の事ながら目の保養!

 むしろもっとやって下さい、是非に!


 そうそう、ニキ様の瞳の色の黒は流石に今回は遠慮した。婚約発表っていうハレの日に黒は尻込みしてしまったって言うのもあるけど、衣装部屋には『黒』が一つも無かったからだ。勿論ユリアの部屋にも置いてなかった。


 緋色のニキ様の髪の色のドレスを頼んで着て着たので、どうやらジーニアス兄さんの機嫌が悪くなったらしい。大方感づいて居るんだろうな~。兄さんとも暫く会えなかったし、と言うか会いにくくて…

 あんなに何度も13歳という年齢を引き出し、無理って兄さん達に言いながら、ニキ様の事が、その、気になるって言うか…好きになってしまったし。


 その事を伝えられなかったものだから困ってしまう。



「で?」


「うん?」


 でって何だ?

 兄さん?一言だけでは何が言いたいのか分かりませんよ?


「あの生意気な元上司の息子と進展したのか」


「!」


 ヒィィィィッ!兄さんジーニアス兄さん殺気がぁああっ!

 怖いよ怖いよっ!自然と足がガクガクブルブルしちゃうよ!

 やめてー!先日のナイフを突き付けられた時より怖い気がするからっ


「馬鹿ジーニアス、さっきからダダ漏れしてるその殺気を引っ込めろ」


「…」


「お前の大事な妹のレナが萎縮して泣き出しそうになってるじゃないか」


「…っ!」


「ちゃんと様子を見ろ。震えだしてるぞ」


 うううう、兄さんが怖いよーっ!

 そしてレスカ様ありがとぅぅう!

 バッて此方を見たから咄嗟に頭を下げて目を瞑ってしまったよ。


 だって怖い。つい先日のナイフを突き付けられた事を思い出してしまう。冷たくて、怖くて、咄嗟に動けなくなってしまった事が嫌でも思い出す。


「すまん、レナ」


 兄さんから湧き出て来る、突き刺すような雰囲気って言うか殺気が一気に減ってくれたみたい。よ、良かった…

 肩の力を抜いて脱力って言うのかな、気を抜いてほっとする。


「お前な、妹の事になると見境が無くなるのは構わないが、肝心の妹に殺気を向けてどうする。馬鹿が」


「…はい」


 いや構わなくないから。

 見境無くされると結構困っちゃうからね?

 程々な距離感でいて欲しいんです。


「レナもレナだ、まぁ言い難いのはわかるがな。コイツの態度が鬼の様だし」


 まさに鬼神の如しってレスカ様呟いてるし、やっぱりこの世界鬼って何処かに居るのかも知れない。って、そんな事は置いておいて、


「後な、兄弟喧嘩なら他所でやれ。ここで醜聞を晒すと噂になって面倒になるぞ」


 覚えておけと言われてうんうんと頷いておく。


「更に言うとな、レナにジーニアス。ニキとの事は既に噂に上がっている」


「は?」


「今回の婚約の事で表沙汰には上がって居ないがな。お前達庭で抱き合っていたんだろ」


「ひぇ」


「領館に出入りしている商人の下っ端辺りから漏れたらしい。ある程度此方で抑えたが、多分兄上の耳に入るだろう。今から覚悟しておけ」


「ヒィ」


「ま、兄上の場合は勝手な横恋慕だからな。でも現時点で国王である父上を除いて我が国での最高権力者だ。お前達の関係の発表が遅くなる様ならあの兄の事だ、政治的な意味合いでも口出し、もしくは絡み手や下手すると手を出して来るかもしれんし、しないかも知れん。まぁ分からんが兄も男だからな」


 ここでレスカ様はチラリと視線を動かし、


「我が王家の男共は恋に陥るとどんな突飛な行動をするか分からんからな」


 自分がそうだし。

 等と小さく呟くレスカ様。自覚している様で何よりです。


「この件に関してはケインは安心だな。アイツは友情を大事にする」


 更にぼそり。

 今この場に、いいえ会場に来て居ない人の名を告げる。


 ちなみにケイン様は今回のパーティーは欠席だ。事前にそう告げられているし、同じくケイン様も3日程お会いして居ない。確かケイン様はニキ様同様モニカ様に拉致されて侵入者を追って居るって聞いた。

 でもニキ様は毎日手紙が来ているから帰って来ているのは分かるけど、ケイン様はどうしているのだろう。ちゃんと休めている…?


「あの。ケイン様は…」


「死ぬ程扱き使われて元気にしてる」


 それってどうなんだろう。そして扱き使って居る相手はきっとモニカ様だよねぇ。


「腹をくくるなら早々にしてしまった方が良いって訳で、ニキ」


「え」

しおりを挟む
◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360

BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600

NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846

宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて

木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。 前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

処理中です...