今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
上 下
61 / 113
4章 今日もお屋敷も学園もゴタゴタしていますが、働いて・学んで・そして何故か陰謀に巻き込まれつつ何とか奮闘致します。

52

しおりを挟む
 背後から「何が当たり前だ!」とか「ニキ次は負けないよ!」と言う声が聞えて来る。



 本来ならジーニアス兄さんが私の手を取って大混雑して居る朝市会場を移動する予定だったのだけど、ニキ様とケイン様が「待て」と抗議をして来た為に三名、ジーニアス兄さんとニキ様とケイン様でじゃんけんをし、ニキ様が勝者となった。



 当然この結果には私の意思は投影されておりませんがナニカ?

 コンチクショウめ!

 恥ずかしいんだよ!



 と言うかね。

 ニキ様にケイン様、お二人共レスカ様の護衛では無いのでしょうか?

 確かにお二人共高位貴族の子息ですけど、本来の役目放棄しておりません?ねぇねぇ、其処の所どうなの?



 …更に流石と言うか何と言うか、シレッとした顔を現在しているレスカ様は問答無用でユリア様の手を大事そうに握って居て離しません。

 しかも恋人繋ぎっぽいです。公衆の前でこの第二王子は相変わらずぶれない。

 いいぞもっとやれってからかってやろうかと思ったけど、どうやってもドヤ顔されるだけの光景しか浮かばないので無駄な事は止めた。ユリア様が照れてしまって拗ねちゃうと嫌だしね。



 親友大事。

 レスカ様は…正直ドウデモイイデス。

 理由は時々意地悪されるから。

 ユリア様は親友、レスカ様は…



 親友の婚約者で悪友、かねぇ?レスカ様自身は友達だと思って居るのは知ってるけど、私にとっては悪友の位置かな。ぺらっと何でも口に出来ちゃう、いい意味でも悪い意味でもある悪友だけど。



 ある意味、友達としてとても安定の位置です。

 流石ユリア様のストーカー。

 尚このストーカー発言はご当人であるレスカ様公認です。何せ私がユリア様の手を握っていく!と言ったら、



「ユリアの手は誰にも渡さん。何せ私はユリアの婚約者でレナ曰くストーカーだからな」



 と宣ってふっふんと言わんばかりに此方を見て…

 …開き直った!



 くそぅ、流石悪友!

 出来れば私はユリア様と手を握って居たかった!背後からは冷気が来るし、ニキ様が何かすると更に悪化するしで居心地が悪いんだよ!

 と言うか兄さん!その寒気がする冷気やめて!

 首筋やら背中やらがさっきからザワザワして落ち着かないんだよ!



「レナ、そこ段差がある」



「あ、ほんとだ有難…ひゃあ!」



 段差がある場所を確認する為に一度立ち止まると、ニキ様がひょいと何の気なしに…



「ぎゃああっ」



 お姫様だっこぉおおお!?

 何で!

 寄りによって人々で大混雑して居るこの場所で!?

 私の足とか擦れ違った人に当たったらどうするのー!

 と言うか兄さん殺意がっ凄まじ過ぎるー!!



「うわ、色気ねー」



「色気無くて結構!と言うか降ろしてー!」



「良いから大人しくしてろって。後口閉じてろ、舌噛むぞ」



 は?何言って!?

 とか思った瞬間。一般市民の変装をし、市井に紛れて馬を連れて紛れて居た私達から少し離れた場所に居た護衛の馬を奪う。



「借りるぞ!」



 一瞬の事で唖然とする私をその馬の背に乗せ、自身も私の後ろに飛び乗って市場から外れて裏街道を爆走し始めた。



「なっ、ななな」



 何事!?

 馬が急に走り出して上手く言葉が言えないけどっ!



「舌噛むぞ」



「だ、だ」



 ふぉ、近い近いちかいー!

 ニキ様の声が矢鱈と近いって、そりゃ即後ろに居るからーって落ち着け私ー!

 どもって言いたい事分からなくなってるよ!「だ、だ」って何だ。ダダって何かの魔物か怪獣か。そんなの居るっけ?



「人攫いだ」



「は?」



 人攫い!?

 ついさっきバーネット様から聞いた、この港町と言う地形のせいかカモーリは船を利用した犯罪がとても多く、品の密輸入もだけど犯罪発生率で一番高いのが人攫い。特に見目の良い子供や女性を攫うと――…



「ついさっき見た。子供が何かの薬剤を嗅がせられて気を失った瞬間、ズタ袋に入れられていた。追跡するぞ」



「え」



「ケインも気付いた、後で追い掛けて来るだろう」



「えええ」



「チッ。相手も気付いたか、スピードを出すぞ」



「ちょ、えええええ」



 馬は結構好きなんだけどね!

 この時ばかりはちょっと苦手に為りそうになったよ。

 ついでにお尻も股も乗馬、慣れて居ないから妙な感じになったけど。更に冷静になって考えたのだけど、私を馬から降ろしてニキ様だけ爆走したら軽くなって追い付け易かったのでは?と思った。



 だって、さ。

 少し…あーうん。

 ほんの少しだけ近過ぎたからだよね、多分、きっと。

 吐息が近かったとか、前世の乙女ゲームで聞いて居た素敵ボイスが背後から聞こえてドキドキしてしまったとか。諸々不覚過ぎて私の心臓がおかしくなっちゃってるんだよ。

 それに馬の手綱を掴んで居た私の上から「この方が安定するから」と言ってニキ様の手が…。う、うん。ほら、追い掛けなくちゃいけないし、何より馬に方向とか、ね。うんうん。そ、そうだよね。



 あ、は、あはは……



 心臓よ、おちつけーーー!

 そして手!汗がああああーー!



 嫌もう、今日は朝から何なのっ。

 と言うか今はドキドキしている場合じゃない!

 捕まえないと!せめて攫われた人だけでも救わないと!



 それに今、攫われた人がいるなら此処で降ろされても気に為って仕方が無い。それならこのまま付いて行ってしまえ!追い掛ける時にスピードが出ない様なら降りた方が良いけどね。その辺りは冷静に考えてますよ?



 …心臓は相変わらず落ち着いてくれないけども。



「レナ、相手をよく見て居てくれ!」



「はい!」



 相手も途中から道端の馬を奪って駆けて行くのだけど、慣れないのか途中で何度か馬が暴れてしまって攫った子が入ったズタ袋ごと馬上から落ちそうになる。

 これ、かなり危険だよね。

 そして周囲の人。市場から離れたとは言え、誘拐犯が焦った様に馬を飛ばすから何度も道端のモノにぶつかったりして危険極まりない。

 そして交互に何故か人攫いと私達を道行く人々が振り返り、何があった?と言った感じで此方を見詰め――…



 そうか!

 領主のバーネット様が頭を悩ます犯罪って言ってたのなら、『普通の庶民』なら嫌がっている犯罪って事だよね!



「誰かっ!その目の前の子供を攫って居る人攫い!捕まえてーっ!」



 舌を噛みそうになってちょっと怖かったけど、背に腹は代えられないよ!

 私の事より目の前の攫われてる子の事優先だよ!

 ついでにドキドキ鳴り響く鼓動が落ち付いて静まってくれたらいいんだけど、ほんっとニキ様のボイスがイケメン過ぎて辛い。近過ぎて辛い。特に真後ろから息遣いが聞こえて来る状態は辛すぎる!

 えっと、これはそう、馬に跨っているからだよね、多分。

 ううん、きっと!



「何!?」



「やっぱり人攫いかよ!」



「子供だとぉ!」



「てめえ!」



「その子を離せ!」



「ナイスだレナ」



 ひぃっ

 そんなイケメンボイスを背後から、しかも耳元で囁かないでっ!

 ついびくっと跳ね上がっちゃったじゃないのっ



「ん?」



 とか不審そうな声出さないでー!



「止まれぇ!」



 とか必死で思って居る内に、騒動を聞き付けたと思わしき何故か大根を抱えた勇ましいおばちゃん、更に土嚢?を抱えたおじさん、ほぼ半裸な海パンみたいなモノだけを履いて武器を振り回している男性、それにあれはビキニアーマー?

 うわぁお、この世界に来て初めて見た。

 ナイスボティーなお姉さん。

 …咄嗟にニキ様の目を塞ぎたくなったけど。

 勿論やらないよ?馬に乗って居て危ないってのもあるけど、振り向くだけでも揺れて危険で無理だもの。それに今ニキ様の目を塞いだとしてどう言い訳するっていうのよ…。

 あ~も~今はそれ所じゃ無いって言うのに!





 あれ、箒を腕に抱えた女性が前に出て来た…あ、これ杖?



「止まれ犯罪者!止まらんと撃つぞ!」



 いや、何を?とか思って居たら、そこ箒の周囲からドンドン火の玉が数を増やしていき…って、その火攫われた子に当たったら火傷どころじゃないかもー!

 一件ズタ袋に入っているから攫われた子が入って居るって気が付いて居ない、とかだったら嫌過ぎるー!



 そしてデカイ、デカいよ火の玉ぁ!

 バスケットボール位あるよー!



「邪魔だどけえ!」



「くっ、この馬鹿者が!後悔しても後の祭りだからなー!」



 ふぉぉぉ!?

 って、あれ?

 この箒を持って居る人って、何かどっかで見覚えがあるような、無い様な?



「あ~…やっぱり」



 ってニキ様半分諦めた様な声出して…え?



「このモニカ様の【超絶炎極火炎!】その身で受けて見よ!」

しおりを挟む
◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360

BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600

NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846

宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

処理中です...