今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
上 下
58 / 113
4章 今日もお屋敷も学園もゴタゴタしていますが、働いて・学んで・そして何故か陰謀に巻き込まれつつ何とか奮闘致します。

50 ユウナレスカ・アナジスタの思惑2

しおりを挟む
 今だ音楽が奏でる会場の最中、一人グラスに口を付ける。

 紅い色の液体は一口含むと酸味が微かに口内に広がる。その後を追う様に甘味の味がし、次いでこの赤身の元のフルーツ、真っ二つに割ると真っ赤な果肉が特徴のルビーオレンジとグレープフルーツの匂いがする。

 レナとユリアが先程幾つか飲んで居た飲み物の一つだ。



「へぇ~レスカが珍しいね。甘い物を飲んでるし~」



「ケイン」



「お疲れってことかな~?ん~と、レナちゃんはグッタリ消耗してたから部屋に置いて来たよ~。ついでにユリア様もね。レスカずっと物思いに耽ってたから、彼女心配してたよ~」



「ニキはどうした」



「あはは、あの鈍臭いのはレナちゃん達と一緒。もう少ししたら部屋から追い出されるんじゃないかな~?」



 レナちゃんコルセットがキツイって言ってたし、部屋に帰ったら即着替えるだろうし?と笑うケイン。

 確かにレナはコルセットに締め付けられるのが苦手がって居たからな。

 ユリアは平気な顔をして普段から付けているらしいのだが、そんなに苦しいのだろうか?やはり慣れか?





 …男の私には分からない話だな。





「レナちゃん貴族の令嬢なのに迂闊だよね~でもそこが初心でちょ~可愛いんだけど」



 えへへへと嬉しそうに言う辺り、何だかな。



「溺れ過ぎるなよ」



「それぇ~レスカが言う?」



「む、そうか」



「自覚してよ~まぁ良いんだけどね。僕としては以前のレスカとユリア様の関係は不自然過ぎてて何か妙に嫌だったし~。元に戻って、ん~違うか~アツアツ過ぎて困っちゃうぐらいの今の関係のが僕は好きだな~。と、そうそう。明日は街へ行くみたいだよレナちゃん達~。レスカはどうする?」



 このどうすると言うのはアイツ、つまりアレスの捜索の事だ。



「何かわかったか?」



「今日来たばかりだよ?って言いたいんだけどね~」



 んーと唸ってからニヒヒと小さく悪戯っぽく笑い出すケインに、ああまたかと思い視線を潜んでいる相手にあわせ無い様に窓辺に向ける。



「(ひーふーみーよー…居るね)」



 こっそりとケインが同じく窓辺の目線を向けて囁く様に小声で良い、



「んー取り合ず塩買いにいこ~それからお魚!海鮮!貝類!僕楽しみにしてたんだ~」



「そうだな」



 四人程私達二人の周囲に何時の間にか来たのか、影の様に忍び寄る者達。

 さて、どうしようと思案しようとするが、何時の間にか私の周囲に居た筈の近衛兵二名、内一人は近衛兵見習いだが姿を消しており、代わりに今回の護衛に連れて来た腕っぷしの良い騎士が三名程配属されていた。



 これは今暫く動きがあるまで動かない方が良いな。



「楽しみだなぁ~」



 ケインの言う楽しみとは、ジーニアスとコリンの腕前拝見って事だろう。

















 * * *

















「ご苦労」



「「は!」」



 私が労いの言葉を掛けるとジーニアスとコリンの両名は軽く頭を下げて一歩下がる。

 コリンは兎も角、ジーニアスは『仕事』の時は公私混同しない。

 …レナが居なければ。

 他にもコリン曰く他の姉妹、次女のデュシーと四女の末っ子であるオルブロンの時も中々なシスコン振りらしい。だが面白い事に長女には頭が上がらないらしく、少し苦手がって居るらしい。

 その姿、是非一度見て見たいものだ。



 そう言えば次女のデュシーは産まれたばかりの娘が居るという事だったな。

 今度デュシーの体調が良ければ是非見せて頂きたいものだ。勿論ユリアを連れて。私がガルニエ家を何度か訪問した際にはまだ万全の体調では無いらしく、使用人達からも遠ざけられて居たからな。

 …事情も事情だしな。

 この次屋敷を訪問した際には何か手土産でも持参しよう。

 その辺りも今度ゆっくりとユリア相談するとしよう。







 閑話休題。



「ふ~ん二名自決に一名死亡で一名捕縛、計四名ね」



 あれから数分後、動きがあった為に会場を後にして退出して当てられた部屋にケイン共々移動した。途中ケインの予想通りレナが着替える為に追い出されたらしいニキも合流し、サザーランド家の執事から渡された報告書を読み上げる。



「やーっぱりアレクサ様の刺客みたいだね。言葉に微かにウィックロー国の訛りが見受けられるみたいだよ。とは言え生き残って居るのが『ワザと』やってるかも知れないし~、まだ吐いて居ないから信用度は微妙だけどね~」



「そうか、アレクサはどうしてる?」



「部屋から出て来てないよ~。当人も「初日は危険だろうから」って籠って居るねぇ~」



「難儀な奴」



 ニキ、そんな面倒臭そうな顔して呟くな。

 まぁお前にとっては隣国の王子等正直どうでも良いのだろうがな。



「あはは、ニーキー仕方ないよ~アレクサ様は今、迂闊に本国に帰れないみたいだし~?おまけに王城に護衛付けて詰めて置けば、どういう訳か妾の筈のキャメロン様がにじり寄って来るし~。ひやひやしっ放しみたいだしね~」



 そうなのだ、あの妾のキャメロンが等々アレクサに色目を使い始めて来た…らしい。私は見て居ないのでハッキリとはして居ないが、何人も使用人達が目撃し、アレクサ自身も迷惑している様だ。

 当人にも問うてみたら、



「母より年上なんじゃないですか、あの人…」



 とグッタリ消耗して居た。

 気持ちは分かる。だがキチンと対処しないと泣くのは自分だ。



「と言うかですね、国王様が本来なら対処すべき案件です」



 それを言われると辛いのだが、どう言う訳か父上は放置の姿勢を崩さない。

 私もだが、現在一番の迷惑を被っている兄上も何度か告げたのだが、梨の礫で返事が一向に返って来ない。仕方ないのでハリントン魔法大臣に告げて護衛を増やして貰って居るのだが、そのお陰でケインから「ねぇレスカ、僕の仕事が増えてるんだけど!?」と言う苦情が来た。

 彼方を立てれば此方が…と言う悪循環。

 いっそキャメロンに魔道具でも極秘に付けて、何処に居るか把握する様にするか?と迄思ってしまった。高価な魔道具だから使いたくは無いのでその案は即却下したが。



「一先ず部下に拷問をさせて吐かせて居るが、口を割るかどうかは微妙な所だな。何せ猿轡を取ると即舌を噛もうとするから難しい」



「難儀だな」



「ああ、今はこんな時間だから出来んが明日医者を連れて来る」



「自白剤か」



「効くかどうか分からんがな」



「やらないより良いんじゃない~?と言うか魔術は?」



「魔法抵抗が思ったよりも高くてな、抵抗されて出来なかった」



「ありゃ~それはまた」



「質の良い刺客を送って来たって事だな」



 バーネットが呆れた顔付で報告書を纏め、封をしてから執事に渡して居る。



「今日の所は一先ずコレでお開きにしよう。済まなかったな、初日からこんな騒動に合わせて」



「いや、ユリア達が無事なら良い」



「お?…おいケイン、何時の間にこんなにレスカは恋に盲目になったんだ?」



「ん~最近。お陰で僕は退屈しなくて気に入ってるよ~」



「そ、そうか。ニキは?」



「前よりは良い」



「おう、そうか。何だかこう、寂しいやら虚しいやら、無性にむず痒いのは何なんだ…」



 五月蠅いバーネット。

 調子に乗って私の頭を撫で回すな、崩れる。いやもう崩れたか。



「お兄ちゃんは寂しいぞ~!こんな可愛いユウナレスカが何時の間にか大人に…」



「そう言うならさっさと相手見付けて結婚しろ」



「レスカが冷たい…」



 五月蠅いぞ。

 そこ、ニキ、腹抱えて笑うな。

 ケイン蹲って爆笑するな。

 明日もあるのだからさっさと部屋に帰って寝るぞ!!

しおりを挟む
◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360

BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600

NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846

宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

処理中です...