今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】

柚ノ木 碧/柚木 彗

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3章 今日も学園はゴタゴタしていますが、何故か苗字が変わってしまってコッソリ鑑賞出来にくくなる様です。

閑話 ガーフィールド・アナジスタ

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 第二王子。

 14歳。

 次期公爵。

 現在学園で学んでいる。


 これが私、ガーフィールド・アナジスタの弟であるユウナレスカ・アナジスタの現状。



 第一王子。

 23歳

 王太子。

 現在父である国王の元、次期国王として職務の手伝いをしている。


 そして此方が私、ガーフィールド・アナジスタの現状。



 日々職務と言う書類と戦って居る。

 戦乱の日々ならば戦火の最中に居るという事もあるだろうが、このアナジスタは平和を謳歌しており、市井の者から私達まで有り難い事に飢えることも無く過ごす事が出来て居る。

 何でもひい爺様の時代は飢えと戦乱で混沌とした国だったらしいが、有り難い事に我が父は平和を愛する穏やかな性格をしており、日々穏やかに過ごす事が出来て居る。


 我が父は見た目は勇猛果敢な猛者の様な姿だが、普段はとても温厚だ。…多分。筋肉隆々だけどな。


 変わりに書類仕事が大量に執務室に舞い踊るが、国民の日常が穏やかならばそれはそれ、国のトップに立つ者の役目として納得をしている。


 そんな変わらぬ日々を学園を卒業し、諸侯の国へ留学等もして彼方此方の国を見て来た。


 だが、私は勉学だけしてきたワケではない。表向きはそうなのだが、職務の一つとして次代の者を…まだるっこい言い方は止そう。

 つまりアレダ、アレ。

 俗な言い方かもしれんが、正直に言おう。


 …嫁が欲しい。


 日々書類仕事に埋もれて時折騎士団の訓練場に赴いてストレス発散しているが、このままだと肩が凝ってしまって堪らん。誰か傍に居て癒して欲しい。

 出来たら性格のキツイ娘よりはノンビリした娘の方が良い。

 だとしたら田舎にいる娘だろうか。

 そう思って近隣諸侯やら、時折遠出して見たがどうも…思って居たのと違っていた。


 この年まで彼方此方に赴いて居たせいかも知れぬが、次々と知り合う貴族子女ほぼ全て『王太子』としての私しか見て居らず、地位を狙っている娘ばかりで皆とても性格がキツイ。私が席を外すと途端にお互い牽制し合い、愚かな事にバトルを繰り広げて居る。


 癒しを求めて居る私には勘弁して欲しいものだ。


 一応王家という事で今後嫁いで来る嫁(まだ居ないが)多少なりとも性格がキツクなる、もしくは癖が強い傾向になる事も理解して居る。何せ国のトップになるのだからな。

 よく言われているが、『魑魅魍魎』の世界―…政治的なモノやら何やらとドロドロとした混沌とした世界が人によって作られて行く世界だから、妃になるものは芯が強く無ければ為らない。弱いモノは強いモノに飲まれてしまう。

 ある意味戦火は城の中(政治)にあると言っていい。


 一応こんな私にも学生時代何度か婚約の話が持ち上がった事がある。

 その都度相手の事を調べてみると、出るわ出るわ…親族の不正・親の不正・領土の部下の不正。

 部下は兎も角、親の不正は流石に当人が良い娘でも婚約する訳にはいけない。

 それに親族の不正の件もよくよく調べてみたら裏で繋がっており、尚更関係を持つわけにはいかず。

 全ての事柄に罰を下すと気が付いたらこの年まで独身となってしまった。


 最も、何故か私の学年の性格の良い女学生はほぼ既に婚約者がおり…

 普通私と同年代の娘を持って居るモノは私と婚姻を結ばせる為に躍起になると聞いたのだが?と思っていたら、どうやら罰を下した者達が他の貴族達にかなり念入りに裏で牽制をしていたらしく、ほぼ残っているのは変態か変質者か変わり者かヤバイ者ばかり。


 …約一名ヤバイ者は何故か私の側近になっているが、それは置いといて。

 見事に誰も居なくなっていた。


「女運無いんですね」


 魔法大臣が何時ぞやの時に溜息を共に呟いたのだが、そんな事を言われても困る。

 私自身は問題が無いと言うのに…


「選び過ぎるのが悪いんですよ」


 …。

 自覚はある。

 憩いが欲しいからな。

 見た目だけの中身が貪欲な女は欲しくないのだ。


 その点弟のユウナレスカは良い女を宛がわれたモノだと思う。

 当初こそ不仲だった様だが、近頃は姿を見掛けるとアツアツ過ぎて傍に行く気も失せる。

 弟との仲が完全に無理な様なら是非嫁に欲しかったのだが、実に残念だ。


「元々ユウナレスカ様はユリア様の事が幼い頃より好いておりました。自覚は無かったようですがね」


 それは私も薄々と分かっていた。

 しかし先程から私を崖から突き落とす発言は酷くないか?


「今この城に嫁ぎに来ても身の危険があるかも知れませんからね」


 分かってる。

 理由は王の側妃だ。

『不渡りの側妃』等と言う、彼女にとって大変不名誉な事柄を吹聴されてしまっている側妃。

 あれは余にもと思うが、国王の心情も理解して居る。


「ガーフィールド様、くれぐれも彼女には注意して下さい。何をされるか分かっておりませんので」


「ああ」


 先日、私の寝室に彼女…側妃が忍び込んで来たのだ。

 その時私は別室に居て不在だった為に防がれたが、あの女はそれから虎視眈々と私を狙う様になった。


 ある時は飲み物に睡眠薬。

 ある時はワインに痺れ薬。

 ある時は食事に興奮剤(性的な。悪質な惚れ薬とも言う)。


 いい加減にして欲しい物だが、あの女は中々の曲者で証拠が出て来ない。

 だが確実に裏に居て、うっかり一度だけ痺れ薬を口に含んでしまった時に何処からともなく部屋に侵入し、私の襟元に手を掛けて来た。

 無論私の側近や影の者達が即座に摘み出したのだが、一体何処から侵入して来たのやら。

 本当に計り知れない。

 年が離れ過ぎて居ると言うのに私と既成事実を作ろうとする辺り、地位に貪欲過ぎる。


 だがこの一件で彼女の事が知れ渡り、余計に立場を悪化させた。

 お陰で今は沈黙を保っているが、あの目…先程の新しく爵位を持ったガルニエ男爵の爵位式の時。あの目は未だ『正妃』の地位を狙っている様だ。


「末恐ろしい女だな」


「全くです」


 今も廊下に居て、此方を虎視眈々と狙っている様な気がする。

 本来狙うべきは父である国王の妃であると言うのに、完全拒否をされてしまっている現状どうにも出来ないのだろう。


 それならば父もあの女をどうにかしてくれれば良いのに…

 制御が出来ないならば尚更だ。


「して、あの女の『昔の名』はなんだったかな」


「黒狼の森の魔女です」


「黒狼の森と言うと」


「…ガルニエ家の領土にある森です」


「なんと。関係者だと言うのか?」


「いえ、ただあの女の親族は死に絶えて居りますので」


「確か国家転覆を狙ったのだったな」


 つまり処刑済みと。


「はい。そして当時の王家で現国王に密告したのが彼女です。元々彼女は両親と仲が宜しくなく、幼き時より当時まだ健在だった前ガルニエ伯当主の温情で、養女ではありませんが生活の面倒を見る為に引き取られていたそうで」


 何でも前ガルニエ伯が訪ねた時、まだ幼い彼女は全身傷だらけで両親に虐げられて居たと聞く。


「成程。だが魔女とは穏やかでない呼び名だな」


「はい。何故魔女と呼ばれて居るのか今は分かりません。そして前ガルニエ伯の遺言で王家の側妃へと上がったのです」


「ふむ…」


 つまりこうだ。

 父である国王は前ガルニエ伯とは交流があり、並々ならぬ恩があった。そして恩がある前ガルニエ伯の遺言に従い、国王は従ったと言う形だ。


「ハリントン、前ガルニエ伯の遺言はまだ残されているのか」


「恐らくは国王が所持して居ると思われます」


「本物か?」


「ガーフィールド様御疑いで?」


「近頃のあの女の所業のせいでな。もしかしたらと言う疑念が生じて居る」


 するとハリントン魔法大臣は何事かを思念する可の様にブツブツと呟き、


「確かに最近の様子はおかしくなっております。何かわけがあるのか、それとも。一度国王にお伺いしてみなくてはいけませんな」


「頼む」


 私がそう言うとハリントンはゆっくりとした動作で頷き、次に書類を渡して来る。


「ガーフィールド様、例の娘のです」


 書類を手に取り目を通す。



 元レッティーナ・アレイ

 男爵三女


 現レッティーナ・アルセーヌ・ガルニエ

 男爵令嬢



 書面にはこう書いており、更に事細やかな詳細な事柄が記してある。


「ふむ…中々不遇な娘だったのだな」


「ええ、姉妹共々苦労していた様です」


 何となくだがジトリとハリントン魔法大臣に睨まれた気がする。


「良いですか、ガーフィールド様。この娘を王家の魑魅魍魎の政治の世界に引き込むのは私は反対です」


 おや?


「それでなくても今は王城は不穏な状態です。そんな最中に成人前の子供等引き込むモノではありません」


 まだ引き込むとは言って居ないのだがな。

 だが、それは…


「それにこのレッティーナ嬢は貴方様の弟であるユウナレスカ様の御友人です。その方を引き込む様になると、ユウナレスカ様を怒らせる事になりますよ」


「それは困るな」


 私の弟であるユウナレスカ。

 あの弟は怒らせると面倒なのだ。

 昔から周囲を気が付くと巻き込む癖があり、決して一人で勝てる舞台には立たず、周到に舞台を整えてから裁きを下す。

 お陰で一切の弁解の余地が無くなり何度も苦汁を飲まされた。


 いや、今もユリア嬢の件で飲まされていると言って良いだろう。


「それに先日の件も覚えて居られるでしょう?レッティーナ嬢にはニキ殿が睨みを利かせて居た事を」


 確かに。

 初めて会ったあの場所で、共に居た騎士団団長の息子ニキ。

 その者が私がレッティーナ嬢を視界に入れた途端、激しい程の睨みを利かせられてしまい、ユウナレスカが困惑して居たのだ。


「それにあの場に居ませんでしたが、私の息子であるケインも彼女に懸想しております。親友のニキ殿に遠慮しておるようですがね」


 ホゥ…という事はライバルが多いな。


「聞いて居るのですかガーフィールド様」


「聞いて居る、聞いては居るがあの娘を逃すのは惜しい。是非とも手に入れたい」








 その後散々家臣である筈のハリントン魔法大臣に叱られ、一先ずは様子見という事になった。

 いや、そうしたかな。

 本来なら早々に婚約の申し込みをしたかったのだが、今は次期早々。おまけに側妃の件がある。不穏な状態の最中、まだ13才と言うレッティーナ嬢を巻き込みたくは無い。


「最もレッティーナ嬢は兎も角、彼女の兄上であるジーニアス殿が許さないでしょうけどね」


 シスコンと言う噂がありますし、とハリントンが告げる。

 それは中々の難関になりそうだな。


 それでは此れから交流が出来る様に動き出すしかないか、と書類を手に取り思案する。




「そうそう、ガーフィールド様。先日の王都で起ったスタンピード、やはり城壁の外には国王の弟の息子の一人(フォーカスの兄)で奔放癖のある例の冒険者になった三男坊。その者が仲間達と共に無双していた様です。最も今は連れ戻されるのが嫌なのか、煙の様にあっという間に姿を晦ませましたが」


 報告を聞きながら思考の渦に…否。


 この国に無双出来る奴多過ぎないか?


 等と考えつつ、これからどうレッティーナ嬢の興味を引き込めるか思案するのであった。
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