今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】

柚ノ木 碧/柚木 彗

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2章 今日も学園はゴタゴタしていますが、学園の外までゴタゴタしていて観賞しようとしてもどうやら無理な様です。

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「きゃあ!」


「うわ」


 悲鳴を上げて床に転がると、硝子を破って突っ込んで来た大鷲の様な姿をした鳥の魔物が部屋へと突っ込んで来た。


「暴風!」


 すぐさまケイン様が風の魔法を繰り出し、飛び散った硝子片を私達に飛び散らない様にしてくれたが、幾つか細かな破片が腕や足等に掛かり皮膚を切り裂く。


「ああ!レナちゃんの顔に傷が!御免、傷物にしちゃったよ~このお詫びは僕がお嫁に貰うから!」


「人聞きの悪い言い方するなあほぅ!」


 直ぐにニキ様に文句を言われて「てへ」と言う感じで舌を出しているケイン様を余所に、モニカ様が「私も傷ついてるんですけど?!」と言う感じにケイン様を睨むと即座にソッポを向く。


 …何をしてるのだって突っ込みたくなるけど、侵入して来た大鷲の様な魔物をグラシアさんがあっという間に一刀両断してしまう。


「は、はや…」


 その手腕に呆然としてしまうと、


「さ、レナちゃん。今のうちに先程渡した魔物除けの薬を自身に振り掛けてね」


「え、あ、はい」


「他の皆も早く。恐らく今ので此処に別の魔物が突っ込んで来るから、一階へ向かうわよっ」


 折角バリケードを施したのにと思って居ると、


「モニカ様、駄目です」


 グラシアさんが引き留める。


「グラシア?」


「一階から魔物が侵入して来ている様です」





 二階の魔物が突き破った窓に多少は防げるかもとカーテンを閉じ、反対側の窓から外の様子を窺う。

 角部屋だったせいか二つの窓がある部屋は、空室だったのにカーテン等一部の家具が備え付けられているらしい。

 ちなみにケイン様がバリケードを施したドア付近には、先程からうろつく魔物の足音や爪が引っ掛かる音が聞こえ始めており、部屋の外に何匹かの魔物が来ているらしい。このままでは拙い。

 更に反対側の硝子が破れて居ない方まで魔物が来てしまうと、逃げ場が無くなってしまう。


「こうなってはここから移動した方がまだ安全ね」


 そう言われてから城門の方角へ視線を向けると、門の上から魔法や弓を射る者や岩の様なモノを落とす者が居るがそれらはほぼ城壁を登って来ている魔物に対して行われている様で、飛行系の魔物が飛び交い始めた空へは一部の魔術師達以外は対処して居ない様に見受けられる。


「空への対策はあまり出来て居ないようね」


 困った顔をするモニカ様。

 確かにまだここから見える範囲だと空を飛び交う魔物はそう数は多くない。

 だが大型故に脅威だ。


「いやあ!」


 案の定飛行系の魔物が女性の手から布に包まれた小さな赤子を拉致し―…ええっ!赤子!?


「待って!」


 女性の被って居る帽子からは銀髪が覗き、顔を隠す様に覆った布から目だけが覗いており、その瞳の色は薄い栗色の瞳。若干記憶よりも肌の色が白い気がするが―…


「姉さん!」









「レナァッ!」


 背後から悲痛なニキ様の声が聞えた気がしたが、私は無視して身体強化を施して二階から飛び降りる。無理をしたせいで少し足が軋んだ音がした気がしたが、今はそんな事は構わない。

 子供の名を呼んで悲痛な声を上げている女性の元へと駆け付けようと、いや、赤子を拉致して飛行する魔物に追い縋ろうと必死に走るが距離が縮まらない。


「このぉ!」


 地面に落ちていた石礫を何個か拾い、身体強化の魔力を更にアップさせて空中に飛び交う魔物に投げつけるが中々当たらない。それ所か煩わしいと思ったのか、赤子を抱えたまま魔物、ワイバーンは一旦空中を迂回してから此方に狙いを定めて突進して来る。

 その凶悪な目付きはギョロギョロと始終蠢き、視界が定まって居ないとかと思ったが、私が逃げの体制に入った途端ギラギラ血走った目をギンッとした睨みを利かせ、嘴を開けて迫って来る。


 あれ、もしかして今チャンスじゃね?

 と思って開いた嘴に手に持って居た石礫を狙いを定め、思いっきり身体強化を施している身体を使って投げつけると…


「げげっ!」


 バシュッ!と言う音を立ててワイバーンの嘴から脳天を突き抜け、即死したらしく落下して来る。


 わ、わ、わっ!

 どうしよう赤ちゃんが~っ!


 このまま落下したら赤ちゃんが危険だし、かと言って助けようとするとワイバーンの下敷きになってしまう。しまった考え無しでやっちゃったけど、ヤバイよ、ほんとどうしよう~~!


 とした時が私にもありました、はい。

 いや、目の前でザシュッっと音がしてワイバーンの死しても掴んで離さなかった足を切断し、王国騎士団の鎧を着た人が赤ん坊を奪取してからワイバーンの落下地点から少し離れた場所に降り立った。



 …


 ……



 ナンデスカ、この超絶カッコイイヒトハ。


 ドコゾノ御誂えられた様に居る、背景に花々とキンキラ~な眩しいエフェクトを背負って居る様に見える、輝かしい乙女ゲームの攻略対象者よりも格好良いんですけど。そしてリアルに響くイケメンボイス。


 あかん、惚れそうだ。

 案の定赤子を返して貰った女性の目がハートになって…あ、この女性姉さんで無かった。よく見たら髪の毛は白髪や銀髪では無く薄い金髪だったし、瞳の色も濃い目の茶色だ。



 呆然として目を何度か瞬いていると、唐突に「こんの、クソ馬鹿野郎!」と言う実に下品な台詞の叱咤が…


「レナてめえ、死にたいのか!」


 うん、知ってた。

 ジーニアス兄さん本気で怒ると言葉が下品になるんだよね。普段は品性良いお坊ちゃん風な感じを出しているのに、昔から本気で怒るととても怖い。

 この状態になると、父のカルロスも長男のカイデンも力でも口でも敵わなくなるんだよ。唯一敵うのは理で諭す母上のモーリーだけ。ああ、時折だけどオルブロンもそうかもしれない。

 あの子の場合は引っ掻き回す事前提だけども。


 周囲の魔物が先程からジーニアス兄さんに襲い掛かって居るんだけど、その度にバッサバッサと切り倒して来る。って、これって無双?兄さんそんなに強かったっけ?

 もしかして怒りで火事場のクソ力って奴が発動してる?


「何がクソ力だ馬鹿者!」


 ゴィンッと言う頭に衝撃音を喰らった音が耳に響き、同時に目の前に火花が散る。


「うごぁああ~痛い~!」


 思わず喚いてしまう程強烈な痛みに頭を押さえると、「…何故この周辺だけ他と違って魔物が寄って来にくい?」と聞かれる。そう言えばモニカ様の『魔物除け』を身に振り掛けたっけと周囲を見渡し告げる。


「成程、『魔物除けの薬』か。コリン!」


「はーい先輩~!」


「魔物除けの薬をもって無いか?あったらこの親子に掛けて欲しい」


「ん~ちょっと待って下さいね」


 どうでも良いけど、この後輩らしいコリンさんも何だか凄いんだけど。

 兄に呼ばれて駆け付けて来たのは良いんだけど、その移動方法が全ての魔物を蹴り上げ・蹴り殺していると言うあたり、あの足捌きは一体どうやったら出来るのやら。


「あ、僕ね。剣の腕はイマイチなんだけど、蹴るのは一級品なんだよね」


 何でも田舎で習って居た武術が蹴りに特化した武道らしい。

 それって騎士としてどうなのかな?

 しかしあの足技、前世で言うテコンドーに似ている様な、そうで無い様な。

 少し変則的だけどって、テコンドーってハテ、何故覚えているんだろう?


「そのうち上手くなって剣の腕も上げて見せますよ。っと、はい先輩」


 渡された薬品をその女性は自分の赤ちゃんと自身に掛ける。それを見届けたコリンさんがその女性を振り向いて、


「じゃ、ここは危険なんで僕に付いて来て下さいね~。僕は先輩程強くは無いですけど、貴女を避難場所までは導く事が出来ますので」


 と女性の手を引いて連れて行ってしまった。


 どうでも良いけど、騎士団って何故ああも女性の扱いが上手いのだろう。

 あの女性兄に次いでコリンさんに目がハート型になって居たけど、単にあの女性が惚れっぽいだけだろうか?


 そこでふと、違和感を覚える。


 この光景を私は知ってる…?

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新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
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BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
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NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846

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