今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
上 下
4 / 113
1章 今日も学園はゴタゴタしていますが、私は厨房の仕入れ作業に勤しみつつ鑑賞し、本日も萎えています。

2

しおりを挟む
「オルブロン!」

 オルブロンとは私の末の妹、四女の事だ。
 今年八歳になったばかりの末の妹。私から見ても中々利発な子なんだよね。

 何せ私など8才の時は連絡の取り方とか当時やり方が判らなかったのに、オルブロンは商業ギルドを使って長女であるシドニーお姉ちゃんに連絡を取る事が出来たのだから(もしかしたら領民や母様の知恵を得たのかも知れないけど、私にはそんな発想は出来なかった)。
 その子が親元にいるという事は、恐らく周囲の魔物は討伐されなくなりどんどん増え、幼いいもうとでは魔境になった実家からは逃げ出す事も出来ない筈!
 そりゃ多少は討伐…あ~多分無い。
 少なくとも長男は無理だろうし、次男はどうなんだろ。ちょっと分からない。それに長男の性格はクソ親父二世って感じで非常に感じが悪い。女は見下す者とでも思って居るのか知らないけど、二女や私に妹と、見下している感じが凄くて毛嫌いしていた。もしかしたら母様迄見下して居たような気がするんだよね。
 そんな訳で私は今も嫌いだ。
 でも次男はちょっと…うーん優柔不断気味だけど人は悪くないんじゃないかなって思う。恐らく環境のせいや親父のせいでこっちにはあまり接して来れなかったみたいだけど、これまた親父のせいで売られてしまった髪結い紐の代わりに植物の蔦や茎を乾燥させて繊維を作り、それをせっせと手作業で結い上げてプレゼントしてくれたのだ。

 あの時はとても感動したな…
 問題はそれを隠れて見ていた長男のせいで親父に発覚してしい、また勝手に売られてしまったのだけど。
 ほんと、クソったれ親父と長男。

 ええい、禿げろ!禿げてしまえ!
 父・兄共に徹底的にツルッパゲになってしまえ!
 と、話逸れた。

「オルブロン?」

「はい、末の妹です。今八歳なんですが、恐らくもう少し大きくなったら例の跡取りロリコン伯爵に狙われるでしょう」

「なんと…ゲシュウ・ロドリゲス伯爵跡継ぎがか」

 フォーカス様が驚いた顔をしております。
 と言うか私、今初めてあのロリコン伯爵後継ぎの名前を知りました。
 …もしかしたら聞いて居たのかも知れないけど、毛嫌いし過ぎて脳内にインプット出来なかったのかも。

 それは兎も角、私が領土にまだ居た時の話を伝えました。二女が妾になって一年もしない内に何度もアレイ領土に来て、私を様も無しに呼びつけてニヤニヤと見て居たと。
 そう言えばその時初めてあった時に名乗られたのかも知れないけど、完全視界からスルーしてたから聞いて無かったのかも知れない。もしくはどうやってこのロリコンから逃げようと懸命に考えて居たのかも。ほんっと厭らしい視線が痛くて嫌いだったからなぁ。

 でもな、ロリコン伯爵跡継ぎ。
 私はあの時より育ったぞ!
 主に背丈と凹凸武器がな!
 Dは伊達で無いぞ!
 …イヤらしい視線が面倒だけどな。
 多分あのロリコン、幼女趣味じゃないかと思うんだよなぁ。じゃあなきゃ一番上の姉を逃すわけ無いって思うんだわ。こう言っちゃ何だけど、姉は子供の時から身長そこそこあったから。久し振りに王都で逢った時なんて、また身長伸びてたからね。とは言えこの国の平均身長なんだけど。
 あ、凹凸武器も育ってたよ。どうやらウチの女子は食事さえ改善されたら基本的に巨乳みたいだなあ。母様もそこそこあったし。

 そう言えば昔、領多が話していたのを偶々聞いたのだけど、ロリコン伯爵跡継ぎの正妻が凄く幼い子どもみたいな人だって言う噂だったな。

 …その際のフォーカス様は兎も角。
 ニキ様は苦虫を潰したような顔付になってます。ちょっと、その顔怖いんで止めて貰えませんかねぇ。

「此方に早々に逃すか?」

「いいですね。それに長女のシドニーお姉ちゃんが今妊娠していて身動きするのもしんどいそうで、身の回りの事をしてもらう人を雇おうとしていたんですよ。まだ八歳だから大したことは出来ないでしょうけど、軽い作業と話し相手位は出来るでしょうし」

「よし、善は急げだ」

 そう言ってフォーカス様とニキ様がサクサクと事を進めてしまった。
 どうでもいいけどニキ様、何故私が八歳って言った時此方を見たかな。何か思う事あり?そういえば八歳って丁度私が畑を取り上げられた辺り―…

 クソ親父、禿げろぉおおー!

 その後無事に妹が来て姉の所に今御厄介になって居る。
 何でもニキ様の実家の従者の数名がウチの母様と結託し、無事に逃れて来たのだとか。
 うう、モイスト家様サマには何から何までほんっと申し訳ない。この仮は何時か必ず返します!
 それにしてもそ母様も逃れてくれば良かったのに、従者が勧めたら「足止めしませんと行けませんし、領民が心配ですから」と残ったと。

 …母様大丈夫かなぁ。

 ちなみに勝手に事を進めてしまったフォーカス様とニキ様だが、姉は豪快に笑って許可をした。

「レナは良いお友達を持ったわねって」

 いやぁ、友達じゃないんだけどね…
 どうでもいいけどお姉ちゃん、「で、どっちが好みなの?」って聞かないでくれ。そう言うのじゃないから。どう考えても無理だから。「私はふぉーかすさま~」って末妹よ、年の差凄いんだが…我ながら末恐ろしい妹だ。






 * * *






 それから。
 幾ら元男爵家三女とはいえ「特訓だな」と何故かニキ様に捕まり、貴族のご令嬢の指導を何故かニキ様、御付きのメイド様、稀にフォーカス様から受ける事になった。

 なーぜーぇー?

 一応仕事があるので終わってから一時間(私の勤務は朝から夕方迄)後と夕食後に一時間。
 合計二時間を週に三回ぐらいと結構みっちりやらされている。
 先ず礼儀作法として最低限のお辞儀の仕方、それと喋り方は程々に、もし本性がバレそうなら挨拶以外は黙ると言う忠告(それってどうなんだろう)を聞き、後は各学科の勉強と歴史。正直学校に行ったことが無いと伝えたら「まじか…この国は平民でも教育を受けるのが義務なのだが」と言われた。そんなこと言っても親父のせいで行って無いのだから仕方ないし、「田舎の貧乏庶民だと稀に行かないことがあるので」とメイドさんが教えてくれた。だが貴族なら行かないと不味いのかも知れない。良く知らないけど。
 ニキ様に「社交界デビューに支障をきたすだろ」と言われたけど、それ以前に「貧乏だから衣装代も出せないんで社交界デビュー何て無理ですよ」と言ったら黙った。

 勝った!
 とっても虚しい貧乏自慢だけどね。
 おまけにあのクソ親父が社交界なんて行かせないと思う。
確か長男も行って居ないんじゃないかな。あ、長男と次男は王都の学園に通ったんだっけ。ならばその時に…
 ちくしょうめ!
 それにしてもメイドさんが用意してくれた(御古ですがと言っていたけど、とんでもない!素晴らしいです!)幾つかのドレスに初めて腕を通してみたのだけど、とっても綺麗でドキドキした。一応(簡易らしいけど)ドレスを着て貴族女性としての事柄を身に付けるという事でヒールの高い靴(八㎝!)も履いたんだけど、二歩も歩けずにすっころぶ。笑っちゃう位膝がガクガクでこれは駄目だなと、偶々来ていたフォーカス様が大笑いしながら何処から出した?な、ローヒールの靴を出してくれた。
 よかった、これなら歩ける。
 ぐっと拳を上げてニキ様に笑うと、「ご令嬢は拳を上げない」と注意を受けてしまった。
 おうふ、キツイ。

 でもこのドレス、凄い胸が強調されるんだよなぁって思っていたら、

「私の御下がりですわ」

 と、メイドさんの声。
 …ごめん、胸見てごめん。
 このメイドさん子爵の家の出らしく、ニキ様の所に奉公しに来ているのだとか。その伝手で子供の時に着て居たドレスを私用に仕立て直してみたのだそうだけど、この凹凸武器の場所だけは布地が足りなかったとか。いや、ほんと御免。

ニキ様顔面真っ赤にしてソッポを向かないでくれ。
フォーカス様無表情を装っているけど、メイドさんの胸元と私の胸元、一瞬見比べたの知ってるからな?

メイドさん、顔が一瞬般若のようになったの知ってるかい?

 兎に角このドレスを着こなしして、社交界で必須のダンスの講義をするからと言われたが、その前に歩くのさえ至難の業だったのだから貴族様のご令嬢はどれだけ努力して居るのだろう。

あれだ、前世で聞いた「水面を優雅に浮かぶ白鳥の水面下では必死に足をもがいている」って奴だ。
 実際は水鳥は対してもがいていないで浮力で浮いて居るのだけど、貴族社会では子息や子女は幼少から学んで行くからって奴ですね。私に出来る出来ないではなく、兎に角型を覚えろという事だと言われた。
ついでに優雅さは捨てろとも。
 それで良いのか、貴族って不思議って思って居たら、

「大抵はエスコートの質次第だからな、下手な奴に当たったら諦めろ」

 それでいいんだ貴族。
そして何か物凄く言いたそうなフォーカス様。
 多分違うんだろうなぁ。


 その日、勉強が終わった後に出されたフォーカス様用の紅茶だけが異様な程真っ黒だったのを私は見逃さなかった。
メイドさん辛辣…。





 そうこうしている内に一ヵ月が過ぎ、準メリーこと、アメリー・メメントリー準男爵令嬢が学園に復帰してから10日後が経った。
しおりを挟む
◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
新作 BL ※ とある商店街のお茶屋さん
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360

BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600

NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846

宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

処理中です...