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【田畑】

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「この厨房で、ですか?」


 厨房が水浸しになってしまうし、ご迷惑でしょう?と言うオルフリオ様。
 因みに現在彼等三人、ニキ様とオルフリオ様は日中の勤務が終わって現在は自由時間。
 そんな貴重な時間帯を使って我儘…いや、ケイン様の「珍しくて美味しいもの食べたい人、レナちゃんが働いているお店のお手伝いに付いて来て」の言葉でホイホイと付いて来ちゃった辺り、大丈夫なのだろうかこの領地の騎士様。
 しかも団長と副団長の二名が居ると言うね。
 更には魔法大臣の一人息子であるケイン様までご一緒状態。

 ケイン様の設定は乙女ゲーム時の設定だけど、乙女ゲームの期限が過ぎてから三年。
 少しだけ大人になっている攻略対象者達。
 時間が経過した分、身分とかは違うのかしら?

 ニキ様は何時の間にかモイスト領の騎士団団長だし。とは言っても、ニキ様のお父様が王都で騎士達をまとめる騎士団長をしているから、ニキ様は父親の代理で領地を守っている。
 おまけにモイスト領の騎士達は周辺の領地へ討伐依頼も引き受けているらしく、今この領地の騎士は
 年二回行われる討伐遠征前の訓練の時期。
 だから何時もよりも時間が取れて気になったことに顔を出していると言うことかな?

 暇潰し。
 多分そんなことでは無いだろうか?
 そうして、胃袋掴んでしまったと言うやつでしょうか?
 なーんて、ね?
 そんなワケ無いよね~。攻略対象者なら学園に居た当初、王都で美味しいもの食べていたと思うし、おまけに貴族だからイイ物を食べていただろうし。うんうん。


「そそ、レナちゃんの新作作るのには必要らしいよ~」

「ほう、それはそれは…世にも珍しい、美味しそうなモノが絶対に出て来ますね」


 オルフリオ様、目が、目が肉食獣の様にギラついていますが。
 飢えておられますか?でも肉食獣の目には相応しくない甘味なのですけど、大丈夫でしょうか?


「でしょう?他の奴にやらせて先に食われたくないもんね~」


 と、同じく食べ物に飢えた肉食獣のような目付きをするケイン様。
 大丈夫かな、甘味なのだけど。


「くっ!何故、何故俺は今回の料理に使えない土魔法なんだ!」


 等と吠えて項垂れるニキ様。
 皆…単に食いしん坊なだけかも。

 私はと言えば、甘味だと言えない、言い出せない雰囲気に困惑中。
 それでもニキ様のフォローは大事デスヨネー。


「いえいえ、土魔法は美味しいお野菜や果物を育成するのに大事ですよ」

「そ、そうだよな!」


 速攻で復活するニキ様。
 やばい、ちょろい。チョロイン、いいやチョロヒーローか。
 瞳うるうるさせて流石元攻略対象、乙女ゲームの時期は数年経過してしまって年相応の男らしさが上がって幼さは抜けたけれど、ちょっと中身が可愛いぞ。

 等と思っていたら、ニヤリと何処か腹黒い?何か企んでいる風な顔付きになったケイン様がニキ様の肩に手をぽんと置いて、


「そう言えば寮の裏庭に畑があったけど、あの畑ってレナちゃんが育てているの?」

「あ、はい。殆ど家庭菜園と化していますけど。以前寮で住んでいた人から種とか譲り受けて頂いたので、香草とか胡瓜とか野菜類を少々」

「へ~成程。だって、ニキ」

「…!」


 ガバッと此方に勢いよく顔を向けたニキ様に、ついビクッと驚いていると、


「その畑、良かったら手伝わせて貰えないか?」

「え」


 モイスト領の騎士団長様に畑仕事を!?


「ほら、俺土属性だから土とかフカフカに柔らかくさせることが出来るし、周囲を固めたりも出来る。更には土に魔力を与えることも出来るぜ。何より植物の成長促進等の魔力があるケインもいるし!」

「ぶ。ニキってば必死過ぎ」

「だってよう…」

「ふふ、ま~僕としてはレナちゃんの畑の隣、空いていたら借りたいって思っていたので提案したのだけど、そのついでに土魔法持ちのニキに手伝わせようって思ってね?何せ此処の領地の騎士団って怪我が多いのに、肝心要の筈の薬が少なくて。だったら今からでも薬草等を育て、多少でも薬を作れたらって思ってね。ああ、パン屋の女将さんにもちゃんと許可を得ないと、駄目だね」


 パチンと此方にウインク一つ。
 うわ、ちょっと格好良い。
 乙女ゲームの時はちょっと愛らしい系の攻略対象者だったのに、三年も経過するとこうも違うのか。

 ちょっとだけドキッとしちゃったよ。
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