上 下
220 / 255
4章 茜さす樹、影巣食う街

閑話 僕の宝石

しおりを挟む
注意。残酷描写有り←

今回短めです。

 * * *

 あーやだやだ。
 何で君達役立たずなの?

 ブツブツブツブツと怖いくらい静かな真っ暗な場所で、同じく漆黒のモノ(?)は口の中だけ赤く見える為、まるでその場所に口だけが閉じたり開いている様に見える。

 はっきり言って不気味だ。

 何故私達はココに居るのか。

 つい先程騒ぎを起こした人族至上主義な面々は、異様な様子に固唾を飲んで沈黙をする。ここが何処だか分からないのも困るが、視界が闇に包まれていて距離感が掴めない。それに彼是この場所に来てから数十分は経過している筈なのに、一向に目が慣れないのか視界が利かない。
 ただただ、真っ黒の漆黒の闇だけが見える。

『ねぇ聞いてる?』

 そして先程から延々と愚痴を零す者。
 自分たちはパーティー会場に居て、そして…何故此処にいるのだろう。
 悩むが答えが出て来ない。
 それに、それに、それに、それに、それに。
 何故、こんなにも沢山の思考が頭の中に流れるのだ。
 まるで自身の中に沢山の人の意識が、思考が集まったかの様だ。

『どうせ混乱しているんだろうけどさ。いい加減現実見たらどう?』

 現実とは何だ。
 いい加減と言われるとは嫌な奴ねぇ、ねぇそう思わない事?
 はは、そうだそうだ。

 ………?

 何故沢山の声が頭に響く?

 それに凄く重い。
 肩が、首が重いのは何故だ。

『ああ、ここは暗いからね。”僕ら”にはとても昏くて居心地がいいのだけど、慣れない君には辛いか。いや、見えたら見えたで余計辛いかもね』

 クツクツクツと含み笑いをし、口だけ見えて居た場所からポウッと光が溢れ視界が広がって行く。

 ああ、やっと見え…???

 そして固まる。
 目の前の光景に。

「私が」

「わたくしが」

「俺が」

「なぜ僕が」

「ひぃ」

「頭、頭がない」

 数名の声が一気に私の横から聞こえる。
 何故だ。何故真横から複数の声がするのだ。
 何故なのだ。
 何故男の声も女の声も、真横から聞こえるのだ。

 そして足元に倒れている人々の首から上が全て消失しているのは何故なのだ。
 一滴も血が垂れて居ない床に広がる死者の首から下の身体。

 ――私の身体は無いな。
 頭から上が無い死体達を見下ろす。

「あああ、わたくし死んだの?」

「俺死んでるのか」

「これは夢か?」

「なぁ、何で皆の声が聞えるんだよ」

「はは、あははははは」

 横の声が五月蠅い。
 と言うかな、彼奴の言う通り現実を見ろよ――。


 嘲笑っていた漆黒の妖精の横に映った己の姿に納得をする。

 首が、皆の首が私の、わたくしの、俺の、僕の、自分の横に付いて居た。
 そりゃ五月蠅い筈だよな。
 あはははは…

 こりゃ傑作だ。

 全員生きているじゃないか。








『やっと邪神の注文通りの人工悪魔ダンダリオン作れたよ。全く手間が掛かる。エルフだとグール位しか作れなかったからなぁ。やっぱり強欲な人間のが土台に良いのかもしれないな。とすると、他の悪魔も人間を土台にした方が作れそうだな。だが巨人はどうなんだろうなぁ…』

 黒い、漆黒の妖精はニヤニヤと昏くほくそ笑む。

 もっと実験増やすか。
 エルフは大量に居るからね、彼奴らは中々死なないから助かるよ。

 クツクツとまた、笑い声が響き渡る。

『ああ、待っててね僕の”宝石”。何時か条件を全て揃えて、君をこの手で喰らってあげるからねぇ』

 * * *

ダンダリオン
(心理をよむことによって相手よりも先手で動くことが出来る。右手には書物をもっている。学術に関する知識がある)ソロモン72柱の悪魔


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。

藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。 そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。 私がいなければ、あなたはおしまいです。 国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。 設定はゆるゆるです。 本編8話で完結になります。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

生まれ変わっても一緒にはならない

小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。 十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。 カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。 輪廻転生。 私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

契約婚しますか?

翔王(とわ)
恋愛
クリスタ侯爵家の長女ミリアーヌの幼なじみで婚約者でもある彼、サイファ伯爵家の次男エドランには愛してる人がいるらしく彼女と結ばれて暮らしたいらしい。 ならば婿に来るか子爵だけど貰うか考えて頂こうじゃないか。 どちらを選んでも援助等はしませんけどね。 こっちも好きにさせて頂きます。 初投稿ですので読みにくいかもしれませんが、お手柔らかにお願いします(>人<;)

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

処理中です...