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4章 茜さす樹、影巣食う街
Tears Ⅱ
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顔を洗ってから軽食スコーンとお茶を貰い、それを「持っていく~」と言って聴かないタマちゃんが運びやすい様にとカートに乗せて部屋に向かう途中、見習いのメイソンが警備に立っており、非常に珍しい事に風の精霊のウイルが付き添っていた。
メイソンがこっくりと頷く最中、無言でウイルは抱っこされているウサギの傍に行き、手にしていたヨモギ(茎の部分がリボンで結われている)をそっとウサギの上へと運んで乗せた。
「幸運」
そう一言囁いて、辛そうにクシャリと顔を歪め、それからパンパンと自身の頬を両手で叩いてからキリっと顔を引き締めて離れる。
「幸運?」
きょとんとした顔をしてウサギはメイソンとウイルを交互に見ると、ウイルは恥ずかしがってメイソンの背後に隠れてしまい、メイソンが代わって口を開く。
「ヨモギの花言葉ですよ」
と教えてくれた。
「ありがとう」
ウサギがウイルに向かってお礼を言うと益々照れてしまったのか、耳まで真っ赤にしてメイソンの頭にグリグリと押し付け始めている。
「ちょ、痛いってば」とメイソンが困った様に笑っているのを見て、心が少しほっこりしながらその場を後にする。
ウサギの部屋に戻って来てからベットの上にウサギを降ろし、レノはお茶の用意をし出す。
ちなみに召喚獣であるカー君達は大人しくウサギの部屋で待っていたらしく、各自適当に遊んいる。カー君は床ででんぐり返りをし、くーちゃんはその横で角が邪魔になる為か横にコロコロ転がって遊んでおり、みーちゃんはそのくーちゃんを楽しそうに追っかけて遊んでいた。
「えへへ」
ヨモギを手にして嬉しそうにしているウサギに、レノは笑いかける。
「しおりにでもするか?」
「うん、そうする」
レノに暖かい紅茶に一匙の蜂蜜を淹れて貰い、ベットの縁に座ってのんびりと飲む。
少しお行儀が悪いかなと思ったが、レノが此処に座らせたのだからとゆったりと寛いでいると、運んで来たカートをウサギの目の前に置いてテーブル代わりにセッティングし、身支度を整えてくれる。
ちょっと贅沢。
目の前で食べやすい様に支度してくれるのはこの世界の竜王で、そして自分の番相手。
軽食のスコーンに塗るジャムや蜂蜜をカートの奥に置いてセッティングしている辺り、少し不器用な所があるのかまたいいんだよね等と思う。
優しいけどおっちょこちょいで。
それでいてエッチな所がある、大好きなレノ。
「ほら、口あけて」
と、問答無用で蜂蜜を付けたスコーンを口に入れられてしまい、その強引さについ笑ってしまう。
「ん?」
「ううん、何でもない」
おっちょこちょいなのは私かな。
奥にジャムや蜂蜜が置いてあったのはレノが私の為に付けてくれる為。そして食べさせてくれる為。それが分かってとても嬉しい。
自然にそれが、まるで当たり前の様にしてくれる。
甘やかし過ぎな気がするけど、今日だけはいいよね?
さっきの事を思い出すと涙腺が潤んでしまうし。
今もちょっと思い出してしまって勝手に涙が溜まっていたみたいで、さり気なくレノが目の端を拭ってくれた。
凄く嬉しい。
「次はこっちのジャムを塗るか?庭でとれた物だそうだ」
イチゴジャムとオレンジジャムに檸檬カードが並んでいる。
色とりどりでとても綺麗だ。
「えっとどれも美味しそう。ん~オレンジがいいな」
そう言うとササッとレノはオレンジジャムをスコーンに塗ってくれる。
「ほら、あーん」
はむっと一口食べるとオレンジの爽やかな酸味と甘酸っぱさが口の中に広がり、またポロポロと涙が零れる。
「ウサギ…」
「何でだろ。安心しちゃったら勝手に出て来ちゃった」
レノの傍で安心して居られるのが、こんなに心穏やかに居られるとは思わなかった。
チラチラと先程まで身体を動かして遊んでいたカー君達が心配して此方を見に来ている。心配させてしまっているなと反省。うん、ウサギはもう元気ですよ。でも身体がまだまだお子様だから涙腺が緩いみたい。
困っちゃうね。
レノに抱き締められて頬にキスをされて。
頬はイヤと喋ると困った顔。
「口がいいの」
そう言うと「フローに聞いたが、アニタと同じこと言っている」って言われちゃった。
アニタちゃん、フローお兄ちゃんにそう言う事言ってるんだ。
そして同じ台詞。
…精霊って基本同じなのかしら?
それから少し甘えて、疲れて居たのかな。
何時の間にか眠っちゃっていたみたいで、気が付いたらベットの中で朝を迎えていた。
横にはレノの綺麗な顔。
当たり前の様にレノに大事に抱えられて居る。
ちょっとくすぐったい。
でもね。
咄嗟に寝間着を着てるかどうか確認しちゃったのは、ええと、その、ごにょごにょごにょ。
寝てる私に手を出していないぐらいには紳士だったみたいです。
メイソンがこっくりと頷く最中、無言でウイルは抱っこされているウサギの傍に行き、手にしていたヨモギ(茎の部分がリボンで結われている)をそっとウサギの上へと運んで乗せた。
「幸運」
そう一言囁いて、辛そうにクシャリと顔を歪め、それからパンパンと自身の頬を両手で叩いてからキリっと顔を引き締めて離れる。
「幸運?」
きょとんとした顔をしてウサギはメイソンとウイルを交互に見ると、ウイルは恥ずかしがってメイソンの背後に隠れてしまい、メイソンが代わって口を開く。
「ヨモギの花言葉ですよ」
と教えてくれた。
「ありがとう」
ウサギがウイルに向かってお礼を言うと益々照れてしまったのか、耳まで真っ赤にしてメイソンの頭にグリグリと押し付け始めている。
「ちょ、痛いってば」とメイソンが困った様に笑っているのを見て、心が少しほっこりしながらその場を後にする。
ウサギの部屋に戻って来てからベットの上にウサギを降ろし、レノはお茶の用意をし出す。
ちなみに召喚獣であるカー君達は大人しくウサギの部屋で待っていたらしく、各自適当に遊んいる。カー君は床ででんぐり返りをし、くーちゃんはその横で角が邪魔になる為か横にコロコロ転がって遊んでおり、みーちゃんはそのくーちゃんを楽しそうに追っかけて遊んでいた。
「えへへ」
ヨモギを手にして嬉しそうにしているウサギに、レノは笑いかける。
「しおりにでもするか?」
「うん、そうする」
レノに暖かい紅茶に一匙の蜂蜜を淹れて貰い、ベットの縁に座ってのんびりと飲む。
少しお行儀が悪いかなと思ったが、レノが此処に座らせたのだからとゆったりと寛いでいると、運んで来たカートをウサギの目の前に置いてテーブル代わりにセッティングし、身支度を整えてくれる。
ちょっと贅沢。
目の前で食べやすい様に支度してくれるのはこの世界の竜王で、そして自分の番相手。
軽食のスコーンに塗るジャムや蜂蜜をカートの奥に置いてセッティングしている辺り、少し不器用な所があるのかまたいいんだよね等と思う。
優しいけどおっちょこちょいで。
それでいてエッチな所がある、大好きなレノ。
「ほら、口あけて」
と、問答無用で蜂蜜を付けたスコーンを口に入れられてしまい、その強引さについ笑ってしまう。
「ん?」
「ううん、何でもない」
おっちょこちょいなのは私かな。
奥にジャムや蜂蜜が置いてあったのはレノが私の為に付けてくれる為。そして食べさせてくれる為。それが分かってとても嬉しい。
自然にそれが、まるで当たり前の様にしてくれる。
甘やかし過ぎな気がするけど、今日だけはいいよね?
さっきの事を思い出すと涙腺が潤んでしまうし。
今もちょっと思い出してしまって勝手に涙が溜まっていたみたいで、さり気なくレノが目の端を拭ってくれた。
凄く嬉しい。
「次はこっちのジャムを塗るか?庭でとれた物だそうだ」
イチゴジャムとオレンジジャムに檸檬カードが並んでいる。
色とりどりでとても綺麗だ。
「えっとどれも美味しそう。ん~オレンジがいいな」
そう言うとササッとレノはオレンジジャムをスコーンに塗ってくれる。
「ほら、あーん」
はむっと一口食べるとオレンジの爽やかな酸味と甘酸っぱさが口の中に広がり、またポロポロと涙が零れる。
「ウサギ…」
「何でだろ。安心しちゃったら勝手に出て来ちゃった」
レノの傍で安心して居られるのが、こんなに心穏やかに居られるとは思わなかった。
チラチラと先程まで身体を動かして遊んでいたカー君達が心配して此方を見に来ている。心配させてしまっているなと反省。うん、ウサギはもう元気ですよ。でも身体がまだまだお子様だから涙腺が緩いみたい。
困っちゃうね。
レノに抱き締められて頬にキスをされて。
頬はイヤと喋ると困った顔。
「口がいいの」
そう言うと「フローに聞いたが、アニタと同じこと言っている」って言われちゃった。
アニタちゃん、フローお兄ちゃんにそう言う事言ってるんだ。
そして同じ台詞。
…精霊って基本同じなのかしら?
それから少し甘えて、疲れて居たのかな。
何時の間にか眠っちゃっていたみたいで、気が付いたらベットの中で朝を迎えていた。
横にはレノの綺麗な顔。
当たり前の様にレノに大事に抱えられて居る。
ちょっとくすぐったい。
でもね。
咄嗟に寝間着を着てるかどうか確認しちゃったのは、ええと、その、ごにょごにょごにょ。
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