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4章 茜さす樹、影巣食う街
一閃
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side.ミウ
アドニス達の方でゴタゴタが起こる少し前。
「お父さんお疲れさま」
警備員達に突き出したマルティン様はヤレヤレと言った感じで、ウサギ達の居る場所に殊更ゆっくりと歩いて来た。途中一睨みしたのはけん制だろうなとは思うが、ミウは誰に対して睨んだのか見逃した為にご愁傷さまと心の中で言っておく。
恐らくガクブルしている男子達の辺りだろうけど、特に誰に強く睨んだのかまでは分からない。もしかしたら同い年辺りの男子全員にやったのかも?と思っている。
「嗚呼ウサギ疲れました、癒してくれますか?」
「うん!」
ぎゅーっとウサギに抱き着かれて喜んでいるロリコ…じゃなかった、マルティン様は「ああ愛娘と言うのは良いモノですね」としみじみと幸せそうにしていたが、ウサギは即座に離れた。
うん、親子ならそんなもんだ。
ましてウサギは恋人いや婚約者であるレノ様が居る。
ウサギもその程度の引き際はちゃんと弁えた様だけど、こう言った会場でやるのは…どうなんだろ?良く分からない。仲良いんですよって言う外界的なアピールにはなるのかも?
そう言った大人のルールとかはドコゾの国のお貴族様で無いから理解しにくいのよね~と思いつつマルティン様を見ると酷く寂しいと言う顔。
…これ、笑ったらダメ?
普段と違い過ぎて可笑しくて口元が変に歪む。
仕方なしに咄嗟に口元に手を当て、くしゃみした振りをして誤魔化す。
勿論右手は添えたまま。
だがしかし、確りとばれたらしい。
マルティン様睨まないでくださーいっ
面白ネタ提供したのはご自身であるマルティン様ですからねっ!
堪えた私は誰がなんと言おうと偉いと自画自賛しますよ!
「アドニス様が居ませんね」
こそこそしながらヒネモスさんがパパに聞いてる。
オットーパパは周囲を見渡してからウサギと此方を見て、それから大統領側を見て、
「不味いかもな。ヒネモスさんは結界を」
「俺のが年下ですしヒネモスでいいですよ、結界了解です」
…何かヤバそう。
不穏な空気がって思ったら、ウサギ…?
何時の間にかウサギの召喚獣であるカー君やクーちゃんにみーちゃんの三匹が足元で固めてる。
「ミウ、アルバの傍に。いざとなったらウサギ様を抱えて逃げなさい。アルバはわかっているな?」
「はい」
「マルティン様」
「ええ、リアムにキーラ、ウサギを任せます」
先程のゴタゴタでリアムさんとキーラさんの二名は護衛として会場内に入って後方に下がって居たけど、この不穏な空気に傍まで来ていた。
と言うか何か自称美少女改め微妙少女…やっぱ美少女でいいや!まぁ、私の鼻が妙にひくつくんだよね。こう、変な気配がするぞーって感じで。
って、カー君やみーちゃんも鼻をひくひくさせてる。
これって動物的感って感じなのかな?
「きゃああああっ」
「何だこれは」
「真っ白でみえない」
「やあ!」
「ぐっ」
一瞬何が起こったのか分からなかった。
ただ目の前が真っ白になって、誰も彼もが視界から見えなくなった。
「え、ウソ」
周囲を見るが隣にいた筈の兄のアルバの姿は見えないし、パパの姿も消えて居る。
「そんな」
ただ時折悲鳴が上がるのでこの場には居るのだろう。でもこの悲鳴って明らかに攻撃されて居る声ではないだろうか?
「ミウ居るか!」
「居るよお兄ちゃん!」
「さっきまで俺が居た方向に右手を上げろ!」
「うん!」
さっと言われた通りにアルバお兄ちゃんが居た方向に右手を向けて上げると、さっとその手を掴まれる。
「ミウ無事か」
「私は平気。それよりウサギ達は」
「分からん!」
お兄ちゃんに抱えられる様な姿になって「うえ」と声を出したら「我慢しろ」と怒られた。
いや、だってこれってお子様扱い…あ、お子様だった、自分。納得をして、周囲を見渡すが霧の様に視界を遮っている白い靄は一体何処から出て来た?
外から?それとも入口から?
窓の方って事もあるよね。それから…
…ん?
「お兄ちゃん天井。天井だけは見える」
「何」
「ちょっと離して、変身して天井からウサギ達見つける!」
「は、って天井からって行けるのか」
「うん!」
アルバお兄ちゃんから離れてからその場で一回転。
変身してから誤解され無い様に声を上げる。
「はいは~~い!ミウちゃんのお通りですよー!霧っぽいモノで白くて見えないから、もし踏んじゃったらゴメンね!」
言い方は軽いけどそれはそれって事でご勘弁。
今「ぎゃ」って声聞こえたから多分誰かの頭か顔面を踏んだ気がする。
「ミウ!」
…パパだった。
「ごめんなさーい!」
見えないんだからゴメン!後で説教受けるから!優先すべきは友人だ!
でも多分柔らかかった気がするから多分パパの顔ふんじゃったよね。青あざ出来ちゃったらゴメンなさい。
獣化してから一気に駆け抜けたりジャンプしたりして何とか天井まで辿り着き、柱に爪を立てて身を固定してから見下ろす。ちなみに今逆さまだったりする。会場全体を見る為だけど、血が頭に昇る~。
「ウサギ!マルティン様何処!」
この会場で一番重要人物は大統領だろうけど、私にとっての重要人物はウサギ。次いでマルティン様だ。お友達のヒューカちゃんは別枠。「元」なのは悲しい事実だけど、何時か「元」は取っ払ってやる!
それはさて置き、と。
「ミウ!」
声は私がいる場所から遠いけど、この声ってばマルティン様の声だ。次に「きゅー!」と言う鳴き声。カー君にみーちゃん?
「窓際だミウ!」
お兄ちゃんの声が聞こえたと思ったら、
「ちぃ!見えない!悪いが抜刀させて貰うぜ!」
アドニス様の焦った声が。
と言うかアドニス様何処に行ってた…お?
一閃!
とか言うアドニス様の声が響いたと思ったら、あれほど真っ白で見え難かった視界が開けって、え、えーーーーーーー!
「やだウサギ!」
窓辺でウサギがぐったりと力無く項垂れており、そのウサギをやけに美麗な、だが何もかも黒一色…黒髪に肌が漆黒に染まっている少年が嬉しそうに抱えて居た。
アドニス達の方でゴタゴタが起こる少し前。
「お父さんお疲れさま」
警備員達に突き出したマルティン様はヤレヤレと言った感じで、ウサギ達の居る場所に殊更ゆっくりと歩いて来た。途中一睨みしたのはけん制だろうなとは思うが、ミウは誰に対して睨んだのか見逃した為にご愁傷さまと心の中で言っておく。
恐らくガクブルしている男子達の辺りだろうけど、特に誰に強く睨んだのかまでは分からない。もしかしたら同い年辺りの男子全員にやったのかも?と思っている。
「嗚呼ウサギ疲れました、癒してくれますか?」
「うん!」
ぎゅーっとウサギに抱き着かれて喜んでいるロリコ…じゃなかった、マルティン様は「ああ愛娘と言うのは良いモノですね」としみじみと幸せそうにしていたが、ウサギは即座に離れた。
うん、親子ならそんなもんだ。
ましてウサギは恋人いや婚約者であるレノ様が居る。
ウサギもその程度の引き際はちゃんと弁えた様だけど、こう言った会場でやるのは…どうなんだろ?良く分からない。仲良いんですよって言う外界的なアピールにはなるのかも?
そう言った大人のルールとかはドコゾの国のお貴族様で無いから理解しにくいのよね~と思いつつマルティン様を見ると酷く寂しいと言う顔。
…これ、笑ったらダメ?
普段と違い過ぎて可笑しくて口元が変に歪む。
仕方なしに咄嗟に口元に手を当て、くしゃみした振りをして誤魔化す。
勿論右手は添えたまま。
だがしかし、確りとばれたらしい。
マルティン様睨まないでくださーいっ
面白ネタ提供したのはご自身であるマルティン様ですからねっ!
堪えた私は誰がなんと言おうと偉いと自画自賛しますよ!
「アドニス様が居ませんね」
こそこそしながらヒネモスさんがパパに聞いてる。
オットーパパは周囲を見渡してからウサギと此方を見て、それから大統領側を見て、
「不味いかもな。ヒネモスさんは結界を」
「俺のが年下ですしヒネモスでいいですよ、結界了解です」
…何かヤバそう。
不穏な空気がって思ったら、ウサギ…?
何時の間にかウサギの召喚獣であるカー君やクーちゃんにみーちゃんの三匹が足元で固めてる。
「ミウ、アルバの傍に。いざとなったらウサギ様を抱えて逃げなさい。アルバはわかっているな?」
「はい」
「マルティン様」
「ええ、リアムにキーラ、ウサギを任せます」
先程のゴタゴタでリアムさんとキーラさんの二名は護衛として会場内に入って後方に下がって居たけど、この不穏な空気に傍まで来ていた。
と言うか何か自称美少女改め微妙少女…やっぱ美少女でいいや!まぁ、私の鼻が妙にひくつくんだよね。こう、変な気配がするぞーって感じで。
って、カー君やみーちゃんも鼻をひくひくさせてる。
これって動物的感って感じなのかな?
「きゃああああっ」
「何だこれは」
「真っ白でみえない」
「やあ!」
「ぐっ」
一瞬何が起こったのか分からなかった。
ただ目の前が真っ白になって、誰も彼もが視界から見えなくなった。
「え、ウソ」
周囲を見るが隣にいた筈の兄のアルバの姿は見えないし、パパの姿も消えて居る。
「そんな」
ただ時折悲鳴が上がるのでこの場には居るのだろう。でもこの悲鳴って明らかに攻撃されて居る声ではないだろうか?
「ミウ居るか!」
「居るよお兄ちゃん!」
「さっきまで俺が居た方向に右手を上げろ!」
「うん!」
さっと言われた通りにアルバお兄ちゃんが居た方向に右手を向けて上げると、さっとその手を掴まれる。
「ミウ無事か」
「私は平気。それよりウサギ達は」
「分からん!」
お兄ちゃんに抱えられる様な姿になって「うえ」と声を出したら「我慢しろ」と怒られた。
いや、だってこれってお子様扱い…あ、お子様だった、自分。納得をして、周囲を見渡すが霧の様に視界を遮っている白い靄は一体何処から出て来た?
外から?それとも入口から?
窓の方って事もあるよね。それから…
…ん?
「お兄ちゃん天井。天井だけは見える」
「何」
「ちょっと離して、変身して天井からウサギ達見つける!」
「は、って天井からって行けるのか」
「うん!」
アルバお兄ちゃんから離れてからその場で一回転。
変身してから誤解され無い様に声を上げる。
「はいは~~い!ミウちゃんのお通りですよー!霧っぽいモノで白くて見えないから、もし踏んじゃったらゴメンね!」
言い方は軽いけどそれはそれって事でご勘弁。
今「ぎゃ」って声聞こえたから多分誰かの頭か顔面を踏んだ気がする。
「ミウ!」
…パパだった。
「ごめんなさーい!」
見えないんだからゴメン!後で説教受けるから!優先すべきは友人だ!
でも多分柔らかかった気がするから多分パパの顔ふんじゃったよね。青あざ出来ちゃったらゴメンなさい。
獣化してから一気に駆け抜けたりジャンプしたりして何とか天井まで辿り着き、柱に爪を立てて身を固定してから見下ろす。ちなみに今逆さまだったりする。会場全体を見る為だけど、血が頭に昇る~。
「ウサギ!マルティン様何処!」
この会場で一番重要人物は大統領だろうけど、私にとっての重要人物はウサギ。次いでマルティン様だ。お友達のヒューカちゃんは別枠。「元」なのは悲しい事実だけど、何時か「元」は取っ払ってやる!
それはさて置き、と。
「ミウ!」
声は私がいる場所から遠いけど、この声ってばマルティン様の声だ。次に「きゅー!」と言う鳴き声。カー君にみーちゃん?
「窓際だミウ!」
お兄ちゃんの声が聞こえたと思ったら、
「ちぃ!見えない!悪いが抜刀させて貰うぜ!」
アドニス様の焦った声が。
と言うかアドニス様何処に行ってた…お?
一閃!
とか言うアドニス様の声が響いたと思ったら、あれほど真っ白で見え難かった視界が開けって、え、えーーーーーーー!
「やだウサギ!」
窓辺でウサギがぐったりと力無く項垂れており、そのウサギをやけに美麗な、だが何もかも黒一色…黒髪に肌が漆黒に染まっている少年が嬉しそうに抱えて居た。
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