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4章 茜さす樹、影巣食う街
会場と仮面
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side.ミウ
「まさかその格好で来るとは。そもそも黒猫の姿のままで来るのでは無かったのでは無いですか?」
「それ言ったら駄目な奴」
素っ気なくだけど何時も通りの軽い返事をするアドニス様。
そのアドニス様の後ろからやや呆れ君の顔付でウサギの腕を取って歩くマルティン様。
その姿になんとな~く、うん?ってなる。
うううーぬぅこれって何だ?何かすごーく気になるんだけど理由が分からない。
スタスタと前を颯爽と歩く姿は以前も見たことがあるのだけど、何処となく、ん?足音がしない。何時もなら硬い靴を履いているとコツコツと言う硬質な音が『普通』ならするし、以前みたアドニス様も足音はしていた。でも今は全くの無音。唯一響くのはウサギのヒールの音位。
因みにアルバお兄ちゃんは流石のネコ科の獣人らしく無音だし、マルティン様も足音はほぼ聞こえない。従者として控えていたリアムさんも聞こえないし、キーラさんは普段から音は左程しない。ヒネモスさんは論外だ。普通の人とは言えないし(笑)、アンバーさんも同じく。
何せマルティン様の一族の人々は人外。吸血鬼だもんね。
そんな訳で唯一聞こえるのはウサギの足音と衣擦れの音のみ。
ウサギの足音が鳴るのは仕方が無い。
当人曰くヒールとかはここ数か月前に初めて履いたばかりで歩き難いらしい。
普段学園の生活ではほぼ無音なのに不思議だなって思っていたら、当人がやや拗ねた様に呟いていた「皆どうしてこの高いヒールの靴上手く歩けるの?」って。
思わず同意しちゃうけど、それは兎も角として。
思い返すはアドニス様の歩き方だ。
ちょっと所か、ん、んーーーーーーー!?
「分かった踵だ」
つい声に出してしまうと、前列から「ぶっ」って声。
アドニス様の踵、先程からずっと床に付いて居ない。
つま先だけ床に下し、踵は微かに浮いている。
まるで猫の様な、ってあーそゆこと?
「ミアの嬢ちゃん気が付いたか」
ニヤリと笑む顔が何処と無くネコ科の笑みに似て、うへぇって思う。
瞳も猫の目の様に縦に真っすぐ細くなって、ってうひゃぁ、瞳がまんまベルちゃんじゃん!
うわー物凄い違和感っ
「え?」ってウサギキョトンとした顔をしてアドニス様を見てから、「もしかしてベルちゃんが変装してるの!?」って確認してるし。
「まぁそーいう事」
って、軽く頷いてアドニス様は更に笑みを深める。
「積もる話は後でな。後俺が別人?っていうのか?なのは内緒な。っても中身当人だし、この身体も俺だから当人だしなぁ。ま、気にするな」
気にするなってそれどんな無理。変則的過ぎるでしょ!なんて口を付いて出る前にアドニス様の言葉に詰まった。
曰く、厄介な人が先程から会場内で騒ぎを起こしているらしい。
「そんな訳で魔王様直々、ミアの嬢ちゃん達の警護と対策だから~♪極力になるけど俺付いてるんで宜しくー♪」
* * *
「アドニス様!?」
人々の話し声等本来パーティーならある程度離れていても聞こえる筈。
なのに会場に向かう廊下に聞こえるのは囁く微かな声と靴音に衣擦れの音くらい。
おかしいなぁ?と思いながら会場に入った途端、周囲の注目と興味と好意に嫉妬とほんの少しの悪意も籠った視線を一斉に浴び、アドニス様は少し苦笑しながらも周囲を少しだけ強めた視線でけん制しつつ口元には笑みを絶やさない。
こう言う所普通の人間と何ら変わらないとつくづく思う。
「アドニス様よ」
「マルティン様も」
「まぁ」
「相変わらず若々しい」
ウサギが小声で「でたーアドニス様の垂らし込み術~」等と呟いて声が聞こえた周囲の身内がプルプルと肩を震わせたり、口元を抑えたりして噴き出すのを堪える。それに対してウサギは涼しい顔をして周囲を伺っている。
魔王であるアドニス様ばかり注目が集まっているが、ある程度アドニス様の方を観察し終わった人々の次のターゲットは珍しく普段の黒い執事服では無い。今回のパーティーが"夜の"為に燕尾服を着用している。ホワイトタイの指定でも入ったのかな?って思うんだけど、お兄ちゃんはタキシードだからそうでもないのかも知れない。もしかしたらウサギ用に格式が高いのを着用したのかもだけど。
こっそり服装で威嚇ですね、マルティン様。
相変わらずエゲツナイ。
絶対にその服装くっそたけーにちがいねーーー!
ほんとに本当に威嚇だね!子供の目で見てもいい生地だってのは分かるよ!
お値段はわかりませんがっ。ほんっとそゆとこエゲツナイ。
ウイングカラーシャツに白い蝶ネクタイ。ジャケットの胸ポケットには…これ、ウサギが贈ったのかな?シルクのハンカチーフだよね?何か刺繍入ってるけど、公式の場では白無地でないと不味いんでなかったっけ?まぁマルティン様なら文句等でないだろうし、むしろ文句言った奴は勇者だわ。
おっと、マルティン様ばかりじゃなくてアドニス様の服装は…さっき見た時服装チェックし忘れてよ~く見て無かったんだよねっと。あれ、意外な事にお兄ちゃんと同じくタキシード。しかも普通っぽい。変身だからかな?
何でかな?なんて思っていたら、アドニス様お知り合い?らしき人に何だか変な言葉を唱えてる。「●キシード仮●」って何それ?「タ●シード●面」ってまた怪しい言葉普及させてるんじゃ…(一応前科ありまくり)
と言うか、その言葉が聞こえたら何だか怪しい一団が周囲に沸いて来た?
「○にかわって」とか「お仕置きよ」とか。それって女言葉じゃ…
「●ーラーV」とか「マー●ュリー」とか何の呪文?
その怪しい言葉にドンドン人が追加されてきちゃって、私たちの護衛なんて言ってたけど無理でね?
何か変だな。
さっきから挨拶に来ている人達皆人間ばかり。
おかしい。この国は獣人が集まって作った国と言われているだけに人間よりも獣人や亜人のが圧倒的に多いのに。それにマルティン様の耳にコソコソと何かを告げている人もやけに多いような?
あ、ウサギとマルティン様の顔がしかめっ面になった。一瞬で元に戻ったけど、明らかに表情を変えた視線の方を向くと、
「ああ臭い、くさいわっ」
等と喚く人間の女が一人。
「何なのこの会場は、嫌だわ獣臭いわ」
場に似つかわしく無い程に嫌悪感を表している女は周囲を見渡し、近くに居た獣人の男性を見てしかめっ面をしている。年の頃は三十台後半から四十代位だと思われるが、歪に歪ませる表情のせいで下手すると相当な年寄りの様にも見える。
その女は何が臭いと言うのか、頻りと臭いと連呼してレースのハンカチを鼻に当ててブツブツ文句をずっと話している。
悪態ばっかついてると皺よるぜバーサン
思わずそう心の中でアッカンベー!として悪態を付いていると、
「(人間至上主義のクズです)」
ボソリとマルティン様が此方に小声で話して背で私達、特に獣人の特徴があるアルバお兄ちゃんの姿が見えない様に庇う。やばい、紳士だ!意外にもかっちょいい!普段怖いけど!
そしてお兄ちゃん…オイ。目を白黒させてるだけってちょっと我が兄ながら情けないぞー!
こう言った人種差別に慣れてないのはわかるけどさぁ。
「(あれか。へぇ、面白い)」
「(アドニス様面白がっている場合では無いですよ)」
アドニス様とマルィン様はどうやらあのじょせ…あーやだ。女性なんて言い方したく無いからやっぱり女でいいや。むしろバーサンでも良いくらいだ。って、バーサンが可愛そうだな。
バーサンに謝れや悪態クソ女。よしコレだな。
この国を何だと思ってるんだ。頭悪いな悪態クソ馬鹿女。おっと増えた。
ちなみに獣人の従者であるリアムさんとキーラさん達は従者なので会場に入って居ない。
だからこそこんな悪態クソ馬鹿下品下劣バア女の下品な言葉を吐いてる場面を見なくて良かったと思う。キーラさんとリアムさん、あの二人優しいもの。
まだ学生だからかも知れないけど、キーラさんは何処かおっとりとしたとこがあるし、リアムさんは仕事以外はどっかおっちょこちょいと言うか優しい性格のせいか鈍くさい。おまけにちょっと精神面が弱いトコがある。そんな二人には見せたくないし聞かせたく無い。
お兄ちゃんはまぁ、我が兄貴だろう、根性据えて気合入れろや。
普段私に拳骨いれてんだからそんぐらい乗りこなせ―!
身内のメンバーでは獣人の特徴があるのはアルバ兄さん位なので、気が付くとマルティン様だけでなくアドニス様にウサギ迄庇うように前に出ている。ふぉ、ウサギかわいっ!って何故私の前に立つ?今は変身してないから獣人の特徴は無いんだけど。
あ、私がちっこいから当たり散らすかもって。うわー…ウサギ、まじ素敵!結婚して!って言ったらマルティン様から拳骨貰った。くそぅ…
ついでにちっこいは余計ですからねウサギ…感謝してるけども!
おっと、悪態クソ馬鹿下品下劣皺バア女に誰か知らないオッサンが離し掛けてる。
誰か知らないがオッサンJG!
でも罵られてるワケじゃないよね?って思って見て居たら、そのオッサン悪態クソ女を上手い事誘導し、会場の隅っこに連れて行ってくれた。
助かったー!
「(さあ、あの女が居ない内に)」
アルバお兄ちゃんを連れてサササーっと会場に入って行くと、とある一角で獣人ばかりが集まっている。
おー?何で?
「マルティン様お久しぶりです、それにアドニス様も」
途端に囲まれてしまった為にどうしよっと周囲を見渡すと、ウサギも戸惑っている。
ウサギーそこは挨拶ですよーっと目線で示すと私にチラっと視線が降りた瞬間、相手のオッサーンがウサギに失礼の無い様に卒無く挨拶。おぉ、紳士!おっさーん私が褒めて遣わす!なんてひっそり思いつつオッサンぐっじょぶ!と賛美を送っていると、
「ミウちゃーんミウちゃんがいる」
んむ?
昨年の雷獣変化事件からこっち、クラスが変わって友達が一気に減った私の名前を呼ぶ奴は誰?どんな勇者!?よし、友達じゃ、友達になるのじゃーっ!とワクワクしながら声がした方を向くと。
「ヒューカちゃん?」
当然っちゃあ当然か。
名前呼ばれたしね。
声の主は私の元クラスメートにして元友達であったヒューカちゃんが微笑んでいた。
「まさかその格好で来るとは。そもそも黒猫の姿のままで来るのでは無かったのでは無いですか?」
「それ言ったら駄目な奴」
素っ気なくだけど何時も通りの軽い返事をするアドニス様。
そのアドニス様の後ろからやや呆れ君の顔付でウサギの腕を取って歩くマルティン様。
その姿になんとな~く、うん?ってなる。
うううーぬぅこれって何だ?何かすごーく気になるんだけど理由が分からない。
スタスタと前を颯爽と歩く姿は以前も見たことがあるのだけど、何処となく、ん?足音がしない。何時もなら硬い靴を履いているとコツコツと言う硬質な音が『普通』ならするし、以前みたアドニス様も足音はしていた。でも今は全くの無音。唯一響くのはウサギのヒールの音位。
因みにアルバお兄ちゃんは流石のネコ科の獣人らしく無音だし、マルティン様も足音はほぼ聞こえない。従者として控えていたリアムさんも聞こえないし、キーラさんは普段から音は左程しない。ヒネモスさんは論外だ。普通の人とは言えないし(笑)、アンバーさんも同じく。
何せマルティン様の一族の人々は人外。吸血鬼だもんね。
そんな訳で唯一聞こえるのはウサギの足音と衣擦れの音のみ。
ウサギの足音が鳴るのは仕方が無い。
当人曰くヒールとかはここ数か月前に初めて履いたばかりで歩き難いらしい。
普段学園の生活ではほぼ無音なのに不思議だなって思っていたら、当人がやや拗ねた様に呟いていた「皆どうしてこの高いヒールの靴上手く歩けるの?」って。
思わず同意しちゃうけど、それは兎も角として。
思い返すはアドニス様の歩き方だ。
ちょっと所か、ん、んーーーーーーー!?
「分かった踵だ」
つい声に出してしまうと、前列から「ぶっ」って声。
アドニス様の踵、先程からずっと床に付いて居ない。
つま先だけ床に下し、踵は微かに浮いている。
まるで猫の様な、ってあーそゆこと?
「ミアの嬢ちゃん気が付いたか」
ニヤリと笑む顔が何処と無くネコ科の笑みに似て、うへぇって思う。
瞳も猫の目の様に縦に真っすぐ細くなって、ってうひゃぁ、瞳がまんまベルちゃんじゃん!
うわー物凄い違和感っ
「え?」ってウサギキョトンとした顔をしてアドニス様を見てから、「もしかしてベルちゃんが変装してるの!?」って確認してるし。
「まぁそーいう事」
って、軽く頷いてアドニス様は更に笑みを深める。
「積もる話は後でな。後俺が別人?っていうのか?なのは内緒な。っても中身当人だし、この身体も俺だから当人だしなぁ。ま、気にするな」
気にするなってそれどんな無理。変則的過ぎるでしょ!なんて口を付いて出る前にアドニス様の言葉に詰まった。
曰く、厄介な人が先程から会場内で騒ぎを起こしているらしい。
「そんな訳で魔王様直々、ミアの嬢ちゃん達の警護と対策だから~♪極力になるけど俺付いてるんで宜しくー♪」
* * *
「アドニス様!?」
人々の話し声等本来パーティーならある程度離れていても聞こえる筈。
なのに会場に向かう廊下に聞こえるのは囁く微かな声と靴音に衣擦れの音くらい。
おかしいなぁ?と思いながら会場に入った途端、周囲の注目と興味と好意に嫉妬とほんの少しの悪意も籠った視線を一斉に浴び、アドニス様は少し苦笑しながらも周囲を少しだけ強めた視線でけん制しつつ口元には笑みを絶やさない。
こう言う所普通の人間と何ら変わらないとつくづく思う。
「アドニス様よ」
「マルティン様も」
「まぁ」
「相変わらず若々しい」
ウサギが小声で「でたーアドニス様の垂らし込み術~」等と呟いて声が聞こえた周囲の身内がプルプルと肩を震わせたり、口元を抑えたりして噴き出すのを堪える。それに対してウサギは涼しい顔をして周囲を伺っている。
魔王であるアドニス様ばかり注目が集まっているが、ある程度アドニス様の方を観察し終わった人々の次のターゲットは珍しく普段の黒い執事服では無い。今回のパーティーが"夜の"為に燕尾服を着用している。ホワイトタイの指定でも入ったのかな?って思うんだけど、お兄ちゃんはタキシードだからそうでもないのかも知れない。もしかしたらウサギ用に格式が高いのを着用したのかもだけど。
こっそり服装で威嚇ですね、マルティン様。
相変わらずエゲツナイ。
絶対にその服装くっそたけーにちがいねーーー!
ほんとに本当に威嚇だね!子供の目で見てもいい生地だってのは分かるよ!
お値段はわかりませんがっ。ほんっとそゆとこエゲツナイ。
ウイングカラーシャツに白い蝶ネクタイ。ジャケットの胸ポケットには…これ、ウサギが贈ったのかな?シルクのハンカチーフだよね?何か刺繍入ってるけど、公式の場では白無地でないと不味いんでなかったっけ?まぁマルティン様なら文句等でないだろうし、むしろ文句言った奴は勇者だわ。
おっと、マルティン様ばかりじゃなくてアドニス様の服装は…さっき見た時服装チェックし忘れてよ~く見て無かったんだよねっと。あれ、意外な事にお兄ちゃんと同じくタキシード。しかも普通っぽい。変身だからかな?
何でかな?なんて思っていたら、アドニス様お知り合い?らしき人に何だか変な言葉を唱えてる。「●キシード仮●」って何それ?「タ●シード●面」ってまた怪しい言葉普及させてるんじゃ…(一応前科ありまくり)
と言うか、その言葉が聞こえたら何だか怪しい一団が周囲に沸いて来た?
「○にかわって」とか「お仕置きよ」とか。それって女言葉じゃ…
「●ーラーV」とか「マー●ュリー」とか何の呪文?
その怪しい言葉にドンドン人が追加されてきちゃって、私たちの護衛なんて言ってたけど無理でね?
何か変だな。
さっきから挨拶に来ている人達皆人間ばかり。
おかしい。この国は獣人が集まって作った国と言われているだけに人間よりも獣人や亜人のが圧倒的に多いのに。それにマルティン様の耳にコソコソと何かを告げている人もやけに多いような?
あ、ウサギとマルティン様の顔がしかめっ面になった。一瞬で元に戻ったけど、明らかに表情を変えた視線の方を向くと、
「ああ臭い、くさいわっ」
等と喚く人間の女が一人。
「何なのこの会場は、嫌だわ獣臭いわ」
場に似つかわしく無い程に嫌悪感を表している女は周囲を見渡し、近くに居た獣人の男性を見てしかめっ面をしている。年の頃は三十台後半から四十代位だと思われるが、歪に歪ませる表情のせいで下手すると相当な年寄りの様にも見える。
その女は何が臭いと言うのか、頻りと臭いと連呼してレースのハンカチを鼻に当ててブツブツ文句をずっと話している。
悪態ばっかついてると皺よるぜバーサン
思わずそう心の中でアッカンベー!として悪態を付いていると、
「(人間至上主義のクズです)」
ボソリとマルティン様が此方に小声で話して背で私達、特に獣人の特徴があるアルバお兄ちゃんの姿が見えない様に庇う。やばい、紳士だ!意外にもかっちょいい!普段怖いけど!
そしてお兄ちゃん…オイ。目を白黒させてるだけってちょっと我が兄ながら情けないぞー!
こう言った人種差別に慣れてないのはわかるけどさぁ。
「(あれか。へぇ、面白い)」
「(アドニス様面白がっている場合では無いですよ)」
アドニス様とマルィン様はどうやらあのじょせ…あーやだ。女性なんて言い方したく無いからやっぱり女でいいや。むしろバーサンでも良いくらいだ。って、バーサンが可愛そうだな。
バーサンに謝れや悪態クソ女。よしコレだな。
この国を何だと思ってるんだ。頭悪いな悪態クソ馬鹿女。おっと増えた。
ちなみに獣人の従者であるリアムさんとキーラさん達は従者なので会場に入って居ない。
だからこそこんな悪態クソ馬鹿下品下劣バア女の下品な言葉を吐いてる場面を見なくて良かったと思う。キーラさんとリアムさん、あの二人優しいもの。
まだ学生だからかも知れないけど、キーラさんは何処かおっとりとしたとこがあるし、リアムさんは仕事以外はどっかおっちょこちょいと言うか優しい性格のせいか鈍くさい。おまけにちょっと精神面が弱いトコがある。そんな二人には見せたくないし聞かせたく無い。
お兄ちゃんはまぁ、我が兄貴だろう、根性据えて気合入れろや。
普段私に拳骨いれてんだからそんぐらい乗りこなせ―!
身内のメンバーでは獣人の特徴があるのはアルバ兄さん位なので、気が付くとマルティン様だけでなくアドニス様にウサギ迄庇うように前に出ている。ふぉ、ウサギかわいっ!って何故私の前に立つ?今は変身してないから獣人の特徴は無いんだけど。
あ、私がちっこいから当たり散らすかもって。うわー…ウサギ、まじ素敵!結婚して!って言ったらマルティン様から拳骨貰った。くそぅ…
ついでにちっこいは余計ですからねウサギ…感謝してるけども!
おっと、悪態クソ馬鹿下品下劣皺バア女に誰か知らないオッサンが離し掛けてる。
誰か知らないがオッサンJG!
でも罵られてるワケじゃないよね?って思って見て居たら、そのオッサン悪態クソ女を上手い事誘導し、会場の隅っこに連れて行ってくれた。
助かったー!
「(さあ、あの女が居ない内に)」
アルバお兄ちゃんを連れてサササーっと会場に入って行くと、とある一角で獣人ばかりが集まっている。
おー?何で?
「マルティン様お久しぶりです、それにアドニス様も」
途端に囲まれてしまった為にどうしよっと周囲を見渡すと、ウサギも戸惑っている。
ウサギーそこは挨拶ですよーっと目線で示すと私にチラっと視線が降りた瞬間、相手のオッサーンがウサギに失礼の無い様に卒無く挨拶。おぉ、紳士!おっさーん私が褒めて遣わす!なんてひっそり思いつつオッサンぐっじょぶ!と賛美を送っていると、
「ミウちゃーんミウちゃんがいる」
んむ?
昨年の雷獣変化事件からこっち、クラスが変わって友達が一気に減った私の名前を呼ぶ奴は誰?どんな勇者!?よし、友達じゃ、友達になるのじゃーっ!とワクワクしながら声がした方を向くと。
「ヒューカちゃん?」
当然っちゃあ当然か。
名前呼ばれたしね。
声の主は私の元クラスメートにして元友達であったヒューカちゃんが微笑んでいた。
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