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4章 茜さす樹、影巣食う街
気苦労の絶えない兄
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side.リアム&イーサン(廊下)
パタンと御嬢様の部屋の扉を閉じ、イーサンが此方を見て苦笑しながら頷き、
「あの小さな御嬢ちゃんには困ったモノだな」
と苦笑いを浮かべて言う。
「ミウか」
「そ」
クルクルと宙に文字を書き、その文字が徐々に魔力の籠った紅い文字へと変わってリアムの周囲を飛び交う。
「ん?おや違ったか」
「これは?」
「ちっちゃな嬢ちゃんの無意識に放ってた魔法ー…だと思ってたんだがな、違ったみたいだ」
「違った?」
スイッと宙に右手を翳して切断するように文字を一刀両断する。すると浮いていた紅い文字は周囲に失散し、跡形も無くなって行った。
「何なんだ?」
「簡単に言うと、意識操作でもしてると思ってたんだがな」
「何?」
「あの小さな嬢ちゃんをマルティン様が御嬢様に付けただけあって、多少は代償があるみたいだが自身に有利な状況に持っていくからおかしいと思ってたんだけどな。…最近キーラがやけに感情豊かになって表情に出すから、変に思ってたんだ。だけどな」
更にクルクルと宙に文字を書き、次は青い文字がリアムの周囲を舞う。だが直ぐに先程と同じく空中で失散していった。
「此れで白ってわけか。どうやら俺が思ってたのと違ったか」
「イーサン?」
「俺はてっきりあの小さな嬢ちゃん、ミウが支配系の魔法でも無意識に放ってるのかと思ってたんだ。何せ雷獣に変化するだろ?それなら魔力も豊富だろうってな。だけどさ、違った。全く使って無い。計算って感じはしないんだよな、よく叱られてるし。なら天然か。八歳の子供がなぁ、頭良すぎるだろ」
其処でリアムはミウと出逢ってからのウサギの一連の行動を振り返る。
「俺にはヤンチャな普通の子供だと思うんだが」
「そう言う風に見せているだけかもってのも思ったんだがな」
「違ったのか?」
「どうやら天然で斜め上に方向が向いてるって言う、普通と違ってたパターンだった」
それはどう言うのかとリアムは言い掛けて止めた。
イーサンのこの言い方だと"天然"の言葉だけで済まされてしまうだろうからだ。
「は~何だか解らないけど…恐ろしい子だな」
「ははは、当人はただの子供で分かってない様だけどな。どっち道マルティン様に目を付けられてるからなぁ」
可愛そうに、もう逃げられ無いぜと肩を竦めるイーサン。
「ウサギ様とオットー夫妻次第だろうけど、最終的に御嬢様の付き人にさせられるだろうな。それにミウの話術って言うのか?あの天然状態、ウサギ御嬢様と竜王様にマルティン様は効かないみたいだしな」
う~んとイーサンは唸りながら「エイミー様とアンジーも掛かって無かったな。エイミー様は兎も角アンジーは羊獣人だから当然っちゃ当然か」等と呟いて納得している。
「マルティン様は分かっててやらせてるのか」
「そう言う事。じゃ、俺はマルティン様に手紙のお届けとちっさい嬢ちゃんの報告を兼ねてくる」
「おい、それって」
そー言う事と告げ、イーサンはリアムの居る階下へと歩いて行った。
「アルバに教えるべきか否か…」
リアムは一人ポツンと呟き、アイツも気苦労の絶えない兄だよな、と溜め息を吐いた。
パタンと御嬢様の部屋の扉を閉じ、イーサンが此方を見て苦笑しながら頷き、
「あの小さな御嬢ちゃんには困ったモノだな」
と苦笑いを浮かべて言う。
「ミウか」
「そ」
クルクルと宙に文字を書き、その文字が徐々に魔力の籠った紅い文字へと変わってリアムの周囲を飛び交う。
「ん?おや違ったか」
「これは?」
「ちっちゃな嬢ちゃんの無意識に放ってた魔法ー…だと思ってたんだがな、違ったみたいだ」
「違った?」
スイッと宙に右手を翳して切断するように文字を一刀両断する。すると浮いていた紅い文字は周囲に失散し、跡形も無くなって行った。
「何なんだ?」
「簡単に言うと、意識操作でもしてると思ってたんだがな」
「何?」
「あの小さな嬢ちゃんをマルティン様が御嬢様に付けただけあって、多少は代償があるみたいだが自身に有利な状況に持っていくからおかしいと思ってたんだけどな。…最近キーラがやけに感情豊かになって表情に出すから、変に思ってたんだ。だけどな」
更にクルクルと宙に文字を書き、次は青い文字がリアムの周囲を舞う。だが直ぐに先程と同じく空中で失散していった。
「此れで白ってわけか。どうやら俺が思ってたのと違ったか」
「イーサン?」
「俺はてっきりあの小さな嬢ちゃん、ミウが支配系の魔法でも無意識に放ってるのかと思ってたんだ。何せ雷獣に変化するだろ?それなら魔力も豊富だろうってな。だけどさ、違った。全く使って無い。計算って感じはしないんだよな、よく叱られてるし。なら天然か。八歳の子供がなぁ、頭良すぎるだろ」
其処でリアムはミウと出逢ってからのウサギの一連の行動を振り返る。
「俺にはヤンチャな普通の子供だと思うんだが」
「そう言う風に見せているだけかもってのも思ったんだがな」
「違ったのか?」
「どうやら天然で斜め上に方向が向いてるって言う、普通と違ってたパターンだった」
それはどう言うのかとリアムは言い掛けて止めた。
イーサンのこの言い方だと"天然"の言葉だけで済まされてしまうだろうからだ。
「は~何だか解らないけど…恐ろしい子だな」
「ははは、当人はただの子供で分かってない様だけどな。どっち道マルティン様に目を付けられてるからなぁ」
可愛そうに、もう逃げられ無いぜと肩を竦めるイーサン。
「ウサギ様とオットー夫妻次第だろうけど、最終的に御嬢様の付き人にさせられるだろうな。それにミウの話術って言うのか?あの天然状態、ウサギ御嬢様と竜王様にマルティン様は効かないみたいだしな」
う~んとイーサンは唸りながら「エイミー様とアンジーも掛かって無かったな。エイミー様は兎も角アンジーは羊獣人だから当然っちゃ当然か」等と呟いて納得している。
「マルティン様は分かっててやらせてるのか」
「そう言う事。じゃ、俺はマルティン様に手紙のお届けとちっさい嬢ちゃんの報告を兼ねてくる」
「おい、それって」
そー言う事と告げ、イーサンはリアムの居る階下へと歩いて行った。
「アルバに教えるべきか否か…」
リアムは一人ポツンと呟き、アイツも気苦労の絶えない兄だよな、と溜め息を吐いた。
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