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4章 茜さす樹、影巣食う街

スイーツと精霊樹のある学園

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『仕方無いのじゃ、妾が話すかの』

 エッヘンと身長40㎝程の優美な服装を纏った華麗な姿、だがしかしツルペタな残念…慎ましやかな胸を反らし、煌めく鱗粉を纏わせながらスイッと宙に浮き、ミトラは『愚弟、後で対価を所望するのじゃ。美味しいスイーツを頼むのじゃ、出来ればケーキが良いの』とフフンと鼻を鳴らす。

 スイーツって…
 とか思って居ると『お土産にするからの、数を所望する』ってちゃっかり頼んでるよ。

「ミトラさん、お庭の檸檬で作った檸檬パイなら幾つか作り置きあるから要ります?」

 って、ウサギそれレノ様の対価にならないんじゃない?
 もしかしてウサギってレノ様に弱い?いや甘い?

『うさちゃん、それでは愚弟の対価にはならんのじゃ。でも個人的にお土産に欲しいから貰えんかの?』

「はい。それであの、出来たら弟にも良いですか?」

『解っておるのじゃ、うさちゃんの弟にもちゃんと届けるのじゃ』

 精霊女王様食いしん坊か。
 ってウサギ弟居るのか、まだ聞いたこと無かったな。もっと仲良くなって、何時か話してくれないかな。

「姉上、後程お渡し致します」

『ふむふむ、では話すかの』

 レノ様がマルティン様に何かをメモって渡してる。
 精霊女王様の好物か何かを書いて渡してるのかな?ウサギさりげな~く覗いてるけど、お目めが驚いてる。
 …注文してる数が多いのかな?「ほぇぇぇ50個…」多いな。お土産って言ってたけど、どうやって持って行くんだろ。重くないのかな?飛んで行くにも持ち上がらないと思うんだけど。

『まず、マルティンが義理とは言え父親になるのは拒否は出来んからの。これは了解して欲しいのじゃ』

「何故ですか?」

『うさちゃんの社会的な意味で、またこの国での法律的な保護の為じゃの。内情を理解して居るマルティンを義理とは言え父親として置けば、余程の奴は手を出して来ぬし、今契約して措かねば為らぬ位にの。現に今朝偽造して申請書を持って来たアホウがおるわ』

「えええ!」

『大丈夫じゃ、即刻捕らえておる。だがの、今後もこの様な愚かな事を仕出かす輩が現れぬとは言えぬ。おまけにうさちゃんが成人すれば勝手に婚姻申請を出されて受理されてしまうと言うこともあろうしの』

 唖然とした顔でウサギは自身を抱き締めて居るレノを振り返り、レノはレノでウサギをギュッと抱き締める。

『その様な事をされぬ様に事前に対策を打って置かねばならん。それでじゃ、先程も言うた様に一番うさちゃんを守れる義理の親が必要となる。あ~因みにの、竜は義理の親には為れんのじゃ。何せ今は見た目が子供でどうみても大人では無いしの、それに竜はこの先うさちゃんには悪いがの、妾達の都合等で愚弟を長期で駆り出さねばならん』

「長期ってどれくらいですか?一週間?それとも二週間?一ヶ月?まさか1年以上?」

 小さく震える様な声がして、ミウはその声の主を見ると「…ウサギ」と辛辣そうな竜王、レノの姿があった。

 レノ様って本来なら大人も大人、だよね?でも今の姿はまるで最愛の者から離されるのを恐れる、小さな子供の様に見える。そんなワケ無いよね。
 でも…

 チラリとウサギを見ると、此方はまた違った恐れを持って居る様に見える。まるで離れたら竜王がどうにかなってしまうのではと、レノの身を心配して居る様だ。

『解らんのじゃ。もっと長期になるかも知れぬし、短くなるかも知れぬ』

「あの、私っ」

 恐らく連れていってとか、付いてくとか言おうとしたのかな、ウサギに精霊女王様が待ったと手を出して止める。

『わかるの?うさちゃん。言い方は厳しくなるがうさちゃんでは付いて来れぬし無理じゃ。それにの、愚弟がうさちゃんが来る事を拒むじゃろう。妾達の敵対者達は先日のエルフ達だけでは無いのじゃ。それにの、うさちゃん。竜はもう、御主を失うのにはーー…』

 最後の方の言葉は掻き消されて聞こえなかったけど、レノ様はウサギをこれ以上傷付けたく無かったんだと思う。

 先日の闘いの件は私は子供だからと避難してて現場に居なかったし、ウサギを知ったのもその後だから話を聞いただけだけど、城に居た人達、特にウサギの周囲に居た人達の怪我は酷かったと聞いた。

『期間は解らぬがの、なぁにコヤツの事じゃ、途中で我慢出来なくなってうさちゃんに逢いに行くじゃろう。妾も出来るだけうさちゃんに会いに来るしの。だからの、竜の不在中はうさちゃんの警護は手薄になってしまうのじゃし、この先マルティンは午前中は愚弟の不在中に執務や視察等を行うので城には居れん。その為に学校に行って欲しいのじゃ、この国で一番結界の強い精霊樹のある学園への』
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