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3章 モーザ・ドゥーグの影

とも、だち?

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「私のランチ代金は問答無用でビビの給料から差っ引くので」

「ひ!酷いニャーーー!横暴ニャーーーッ!」

「横暴ではありません。貴方が言ったのでしょう」

「そ、それはこのちっちゃいお嬢にゃんがお金無いって言うからにゃ!だからランチを奢ったのにゃ!可愛そうだからにゃ!ちっちゃい子には優しくするにゃ!」

「ほう、へぇ…私には奢った事など無いのに。つまりビビはロリコンと」

「違うにゃ!所長はにゃあより高給取りだからにゃし、上司にゃし。…うにゃあっ!!所長あし、にゃあの足を踏まないでにゃぁぁあああっ!」

「…踏んでません。グリグリと抉っただけです」

「余計悪いにゃぁぁあああっ!」

 喧喧囂囂(けんけんごうごう)。
 騒がしい事この上無い状態だが、個室のドアを開けたら聞こえたのでこの部屋は防音装備が付いているのたろう。
 そんなウイニー所長とビビのやり取りを涼しげな顔をして居るキーラとアルバに対し、ミウは割れ関せずとでも言うのか、それとも余程お腹が空いていたのか目の前にあるパンケーキを実に幸せそうに頬張って居る。
 うむ、あれは喧騒など目に入って無いな。

「あ、レノ様にウサギ~やっと来た!こっちこっち」

 ヒラヒラと手を振るミウにさっさとウサギが寄って行こうとするのを呼び止める。

「また何か悪戯をされたら」

「レノ様ひどーしょんなこふにゃふももごもごもご」

「こらミウ、食べるのか喋るのかどっちかにしろ」

「ひゃいっ!」

 アルバに拳骨を食らって撃沈し、静かになった。だが盛大に口にパンケーキを入れて…って良く入るなアレ。
 あ、咳き込んだ。

「全く」

 とかなんとか言いつつ、水を渡して世話をするアルバ。
 実に慣れてるな。

「毎度の事なので」

 目があった途端苦笑したアルバ。
 苦労性だなアルバ、御苦労様。
 兎に角大人しくなったミウの横にしか席が空いて無かった為(恐らくミウが開けて置いた)、その空席にウサギが悪戯をされないようにとミウの横に座ろうとした。だが何故かウサギがスルリと割って入って着て即座った。
 しかもちょっとジトメで見られたし。
 ふむ…?

「ふぉぉっ!ウサギが嫉妬してるっ!」

 何故か其処で考え深げに「ウサギってば成長して!可愛い!」と、握り拳を作ってウンウン頷いて居るミウ。
 それを見たアルバが、

「あほか。ウサギ様は御前より遥かに大人だ」

 と、アルバに言われるミウ。
 ミウは八才だしな。まだまだ子供だ。
 とは言えウサギのが生まれた年月を言うと人間なら生後一年未満の赤ん坊なのだが。

「私は子供です。可愛いくないもんっ」

 ぷぅっと頬を膨らませて居るが、ウサギは店員が持って来たメニューに釘付けだ。

「ウサギってば結構嫉妬深いよね~デモソコガカワユス!」

 またウンウンと頷くミウ。
 何故かキーラまで頷くあたり、変な連帯感無いか?ウサギが可愛いのは事実だがな。

「レノまで、もぅ…」

 うっかり口に出して居たらしい。
 少し前までジトメで見られて居たのが、今はちょっと照れて居るのか頬がうっすらと桃色になっている。

「うん、やっぱウサギは可愛いな~友達甲斐があるって感じ」

 モグモグ食べながらミウが言うと、

「え?」

 と言って固まるウサギ。

「やっぱ可愛い友達って良いよね~一緒に居ると楽しいし」

「とも、だち?」

「うん。ウサギとは友達だと思ってるよ」

 添えられていたジュースを飲みながらミウは繁々とウサギを見、次いで私を見て、

「レノ様とは友達は無理だけど、昔から勝手に御兄ちゃんとして慕ってるし。だからウサギは嫉妬しなくてもいいよ、友達の彼氏取るのなんて無いし、そもそも無理だしそんな気も無いし。大体そんなん友達じゃないもん。私は可愛い友達と遊んでる方が良いし~」

「…ともだち」

 と呟いた途端ウサギの目がキラキラしてる。
 ふにゃぁと呟いたと思ったら、急に私に抱き付いて来て、

「レノ!友達出来た!友達!ここに来てから初めての友達っ!」

 ミウで良いのか?「揉むもの!捲るもの!悪戯するもの!」何て言う奴だぞ?と思ったが取り合えず黙って置くことにした。
 ウサギがとても嬉しそうにしてるからな。
 それに人間の友達と言わなかった辺り、多少は冷静だと思うし大丈夫だろう。

 …多分だが。

「良かったな」

「うんっ!」

 嬉しそうに大きく頷いたウサギはメニュー何にしょっかな~!とウキウキしながら眺め、キーラはキーラで「ウサギちゃん良かった…」と何故かハンカチを手にして嬉しそうにし、ミウが「おか…」でテーブルの下から大きな音が上がった。
 恐らくミウの足がアルバによって踏みつけられたのだろう、ミウは涙目だ。

「お兄ちゃんの横暴…」

 それまで急に黙って居たビビが、同情した顔付きで眺めて居るのが印象的であった。

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