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3章 モーザ・ドゥーグの影

あるんですかっ!?

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「は~私達新郎新婦よりも結婚式で目立つベールボーイとベールガールって」

「はは、まぁ良いじゃないか。可愛いし、二人とも仲が良いし」

 ウサギと竜王がベールを持つ相手である新婦が吐息を履いて呆れた様に呟き、新郎が苦笑いをしている。

「クラウが仕組んだとは言え何か悪かったな」

「いえいえ、え~と」

「レノだ。今はレノで通してる」

「レノ様今日は私達の結婚式に参加して頂き、有り難う御座います」

 目の前に居る飛竜族の新郎新婦、あの『グリンウッド抗争』の前の晩に「明明後日結婚式だからっ!」と言って居た飛竜族のカップルが抗争の為に延びに延びて延期しまくり、やっと本日晴れの日に結婚式を上げる事が出来た様だ。
 そんな訳でクラウに、

「どうせなら盛大に祝ってあげて欲しい」

 と言われ、参列する羽目になったのだが。
 あれよあれよと言う間に、何故かウサギと共にベールを持つ羽目になった。

 どうしてこうなった?

 まあ、何度も言うが原因はウサギにある。
 花嫁を見た時に「あの長いベール持ちたいね」と然り気無く呟いた途端、クラウに聞かれてしまい……

 ベールボーイとベールガールズにされて結婚式の会場を花婿と花嫁の後を歩く羽目になった。

 アイツ絶対に仕組んでだよな?
 そうでなければこんな長いベール、わざわざウサギに見せないだろうし。おまけにウサギの性格も把握してるだろうしな。

「お嫁さん綺麗だね~!」

 あの衣装綺麗~!と嬉しそうにしているウサギを見れただけでもまぁいいかなとは思う。思うがな、これって広告塔だよな?周囲からの衣装に関してのざわつきが……

「あの珊瑚のドレス着てる女の子可愛いなぁ」

「御近づきになれないかな」

 ………他にもあったか。

 ウサギを狙って居るらしき野郎共に軽く、極々軽く、本当に少しだが殺意を混めて睨みを効かせると、根性が無いのか皆一様に目線を反らすか血相を変える者、距離を開けるもの、会場を慌てて離れる者、泡を吹くもの。

 ……やり過ぎたか?

「レーノ」

 コラッとウサギに言われて気配を引っ込める。

「すまん、少しやり過ぎた。反省はするが後悔はしない」

「もうっ後悔はしないってレノ!」

「叱られても腕つねられても此ればかりは仕方無い。ウサギは私の婚約者だからな、誰にも渡さん」

「はぅ…」

 誰にも渡さんって、と呟いて耳まで真っ赤に染まるウサギ。

 可愛い。
 誰が何と言おうが可愛い。

 ウサギがつねる手は先程より痛くなってるのがちょっと…
 離してくれぬか?
 爪がめり込んでるのだが。





 ***




「も~レノってばぁ」

 ムスッとしている彼女の横を歩く。
 ウサギが剥れているのにはワケがある。
 だが今はその件に関して頷く訳にはいかない。

「あの耳に付けるカフス?だっけ?付けて置けば良かったのに。とっても似合ってたよ!」

「折角クラウから貰った物だからな。落としたら嫌だろう?」

「それはそうだけどぉ」

 今は帰宅途中、と言う事になる。
 本当はもう少しウサギとのデートでも楽しみたかったのだが、周囲の雰囲気が宜しくない。
 キーラも気付いているのか、懐から携帯用の魔道具である杖(頭部に小さな水晶が嵌め込まれて居る。直径20センチ程の長さ)を取り出し握り締め、警戒して居る様だ。

 結婚式の会場を出て1度クラウの店で着替えて出て来てから、ずっと数十人の気配が付かず離れずと言った具合に付いて来ている。
 おまけに近場にはオリアナの気配がしない。
 正確には後方、離れた場所で争っている気配がある。

 私達は比較的広くて人が居ない場所に移動する。
 倉庫の様なモノが幾つか並んで居る。

「ウサギ」

「…うん」

 ウサギが二匹の召喚獣を喚ぶ。
 カーバンクルのカー君とアルミラージのみーちゃんが、瞬時に床に浮かんだ魔方陣から「ピキュ!」と言いながら飛び出して来る。

「もう一匹は?」

「クーちゃんは戦闘向けじゃないから」

「そうか。キーラや召喚獣から離れるなよ?」

「うん」

 ウサギが返事をした途端、周囲を黒い覆面で顔を隠した三十名程の屈強な男達に囲まれた。手には各々捕獲用なのか縄等の他に杖や短剣等各種の武器を手にしている。

「ウサギ、一応聞くが見覚えは?」

「無いです」

「そうか」

「レノは?」

「私か?私はーーあるな!」

「「あるんですかっ!?」」
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