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2.5章

2.5 不機嫌なウサギ31

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 そしてまた、ドカッとアドニス様からの蹴りが。
 うわ、痛そうっ!
 加減はしてるのかな?結構音が響いたけども、大丈夫なの?と見ているとーー…

「アドニス様てめぇ、イテェだろうがぁーっ!」

 と言ってアドニス様の襟首を掴もうとしたらしく、その手は当然と言わんばかりに空を切った。
 その横に素早く移動したアドニス様が睨み付けている。

「様付けで"てめぇっ"て斬新だなオイッ!」

「様付けて貰えるだけ有り難いと思えっ」

「あんだとコラ」

「やるかコラ」

 互いに立ち上がり、眼光鋭く睨み合う。
 でも、な~んとな~くだけど、アドニス様楽しんで無い?
 ヒネモスさんも遊んで居るみたいだなぁ。
 あれ?ヒネモスさんって黒髪に黒目だ。
 マルティンさんの一族の人らしいけど、アドニス様みたいな見た目で、身長もあまり変わらないみたい。でも一ヶ所、いや二ヶ所違うヶ所がある。一つは牙。竜王様みたいな牙とは少し違ってやや小さいけど、口が開くと確りと特徴が見える。後は耳。少し尖って居て、エルフみたいだけど…?
 よくよく見ると、肌もうっすらと黒いような?
 もしかしてもしかすると、ダークエルフ?

「うう~ん」と声に出して悩んで居たら、マミュウさんが「彼はダークエルフと人間のハーフです」と教えてくれました。
 人間は人間でも和の国の人間らしく、生まれや血統的に色々複雑な人らしいです。マミュウさん詳しいなあって思って居たら、先日マルティンさんに紹介されたそうです。「一族の悪ガキです」って。こんなに大きかったら大人じゃないでしょうか?それともマルティンさんにとって、こんなに大きくても子供なのかなぁ?

「天下の魔王様にメンチ切るたぁーいい度胸だなクソガキ」

「50の歳過ぎたモノにクソガキとは、等々目が腐りやがりましたか、腐魔王」

「腐女子みたいに言うんじゃねぇ」

「今は貴腐人って言うんですよっ」

「それ、年月……………ぉおう、不毛だ」

 えーと、何が始まったの?
 嗚呼背後から「掛け合い漫才ですか?」とマミュウさんが言ってますけど、漫才ってなんでしょ?
 それは兎も角、静にしてくれないかな?
「取っ組み合いならここ私の部屋なので出てってくれないかな?竜王様寝てるんだよ?」とプックリ頬を膨らませて言ったら、私の背後を一旦見て、青ざめてから二人とも大人しくなった。
 私の背後にはマミュウさんが控えている筈。

 …マミュウさん、何かしたのかなぁ。


 後ろ見るのちょっと怖い。

 そして、大統領さんと補佐官さんと秘書官さんの三人は、アドニス様達のジャレアイ(?)を完全に無視し、固まって見降り手振りで話し合い。

「街のガードはどうなっている?」

 と、大統領のパウルさんがイライラした様子。
 対して落ち着いた印象の秘書官さんのクロウさんが、

「此処からですと連絡が付けられません」

 と一言。そして続けて、

「でも此処が大統領にとって今一番安全な場所かと」

 そして此方を見詰めて来た。

「スイマセンお嬢さん方、状況が分かり次第此方も動きます。ですのでどうか城下町のモノ達と連絡を取らせて貰えないでしょうか?」

「それには及びませんよ、国家の忠犬クーシー達が動いて居ます」






 ***





 ヒネモスさんがやや肩を竦め、言葉を告げる。

「水道橋や街の門の少し前迄来ているモンスター達は、土の精霊が張り巡らした蔦の結界によって足止めを食らっている状態です。これは推測ですが、一時的に彼等は門前迄来て停止し、集合してから明け方再度進行を始めるのでは無いかと。今は街の自警団達とクーシーにダークエルフ、それと上空からは飛竜族と一族のモノで偵察してます」

「マジか」

 大統領さんが一瞬呆けた顔付きをした後、ニヤリと口許に冷酷な微笑を称え、右手をグッと力を込めて握り締めてから己の胸の前に掲げる。
 まるで何かの儀式のよう。
 覚悟を決める為の行動なのかどうかは分からない。
 だが、先程まで呆けていた顔はそこにはもう無い。

「腹を括るか」

 クツクツと微笑を称えたまま俯き、

「おいクロウ、テメェの義弟殺るぞ。構わんな?」

「はい。むしろ私が殺ります」

「いい心掛けだが無理するなよ」

「わかってますよ、パウル」

 そして互いの右の片手をパンッと叩き合い、

「ダレンには何度も苦渋を飲まされましたからね。そのせいで妹は苦労して亡くなりました。彼は、いや、ダレンは今から私の敵でしかありません」

「よく言った!」

 バシバシとアドニス様が秘書官さん、クロウさんの何処か弱々しかった眼を焚き付ける様に叩き、クロウさんは痛いですよと笑みながらーー…
 決意する様な確固たる力を込めた瞳になった。

「いいお顔になりましたね」

 ドアを開ける音がしたなと思って振り向くと、其処にはフフッと言う微笑を称え、室内に土の精霊の赤ちゃんを連れたエイミーさんが入って来た。

 * * * * * *


「小説家になろう」だと、気が付いたらそろそろ100話近くになりました。
吃驚です(*´ω`*)

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