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2.5章

不機嫌なウサギ30

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 畳み掛ける様に一気に質問攻め。
 ええと~…と。
 黒猫姿ではなく、人の姿の魔王アドニス様からの多すぎる怒濤の様な言葉に、はて、何から説明したらいいのかな?と頭の中で整理をする。その間抱き付いて離れない竜王様の様子に"効いてきた"かな?としていると、

「何故説明無しに俺がアドニスだと気が付いた?この身体だと初めて会った筈だよな?会ったこと無かったよな?」

 うん?それ、聞くような事かなぁ?

「アドニス様はすぐわかりましたよ?ベルちゃんと同じ気配を纏ってますもの、見ればわかります」

 気配って言うかね、纏って居る空気って言うのかな?それが同じなんだよね、アドニス様とベルちゃんは。
 だから一目で判る。
 アドニス様は分からないのかも知れないけど、恐らく精霊さん達なら判ると思うよ?ミトラさんの精霊のアレイスタちゃんとルーナちゃんも納得したのか、浮いたままでウンウン頷いてるもの。

「そう言うもん?」

「ですよ?」

 キョトンとしてアドニス様を見ると、アドニス様の足元にベルちゃんがにゃ~んと1鳴き。ゴロゴロ喉を鳴らして甘えてる。
 可愛い~っ!触りたいよぅ~!
 でも甘えてる相手は私じゃなくて、ベルちゃんの御主人様のアドニス様。いいなぁ、変わって欲しい。喉をゴロゴロ撫で回したいし、頭をナデナデしたい。

「そもそもアドニス様は分かりやすいですから」

「え、どゆこと?」

 そこでトントンと私の左腕を右手で指差し、

「ベルちゃんと付き合い長いですから」

「ぷ。違いねぇ」

 ベルちゃんはアドニス様の左腕ですから。
 どういう理由で身体から外れ、左腕のみで黒猫の姿をして単独で意思を持って行動して居るのかは知らないけど、アドニス様はベルちゃんを大事にしてるし、ベルちゃんもベルちゃんでアドニス様を主人として慕って居る。
 所で。アドニス様の本来なら腕がある部分、何故真っ黒い腕の様なモノがあるんでしょ?ベルちゃんの替わりなのかな?左手に何か持つと黒い色移ったりしたりして?

「所でさ、竜ちゃん大丈夫か?」

 …うん。
 ちょっと大丈夫じゃないと思う。
 顔色悪いままで私に身体預けて眠り込んで居るし。

「大丈夫じゃないと思います」

「…嬢ちゃんやけに冷静だな」

 アドニス様睨まなくていいからね?睨むと竜王様反応するから。さっきみたいに気さくな感じでいてくれた方が良いんだけど。
 そうじゃないと、気配に敏感な竜王様起きちゃうもん。

「竜王様はさっき敵からの攻撃で受けた傷口から毒が廻って、私が召喚したカー君とクーちゃんから、睡眠の魔法と解毒と浄化の治療をして貰って眠り込んでいる最中なんです」

 え?って目が点になってるアドニス様。
 あ、大統領と秘書官と補佐官さん達も吃驚した顔して…あれ?ほぼ全員此方見た?

「御嬢様、御主人様がお怪我を?と言うか解毒!?」

 うん。
 リアムさん切羽詰まった様に慌てて来たけど、もう大丈夫ですよ~。

「竜王様大丈夫何ですか!?」

 うんうん。後はカー君達曰く一時間位の睡眠が必要だって。
 血液の中に入り込んだ毒は意外にも体力を奪うし、無意識に毒を竜王様は抑えて居たらしくてその分の体力も補強させるからって。
 竜王様は決して弱く無いけど、熱だしたばかりだし大事にしたい。これは私とカー君達の我儘だ。
 少しでもこの後の為に癒しておきたい。

「なんつーか、嬢ちゃんさぁ…」

 ん?何々アドニス様。
 道理でさっきから竜ちゃん黙ったままで嬢ちゃんにくっついてるから、変に心配して損したって。
 一言言えば良かったかな?えと、御免なさい。
 するとザジ先生が此方を見て、

「それなら此処よりは建物の方がいいですね。私が以前迄住んでいた元住居が近いですから、そこへ移動しましょう」




 ***






 アドニス様が「何処でもポケット~」と謎の呪文?を唱えてから空中から毛布を取りだし、次いでにチャララチャッチャッチャーンと鼻歌?を歌って居たのはスルーした。
 と言うか、音程が外れて居る気がしたのは何故なのか。

「空中から毛布が出てきたのは何故?」

 と問うと、圧縮空間魔法の一種とかで、1度空間に自室位の空間があると仮定し、其処に色々な物を収納して置けると魔法を掛け、取り出せるのは自分のみとしておくと出来るらしい。
 早速取り出した毛布を竜王様に掛けて「俺が背負うよ」と竜王様を背負ったアドニス様は「うわぁ、竜ちゃん軽っ」と呟いて居る。
 それ竜王様起きてる時に言ったら嫌がられるだろうな~と見つつ、圧縮空間魔法ってわかんないやって言ったら、アドニス様が「それじゃあ自分の部屋に入るドアを思い描いて、そのドアを開ける感じ?」と言ったので早速やってみたら………

「「「「「御嬢様(お嬢ちゃん)異常っ(チート)!」」」」」

 と、皆に言われました……………え、えへへ………

 何でこうなったのぉっ!?
 アドニス様の真似してみただけなのに、何故か自室の部屋に繋がりました。うん、アドニス様曰く「空間魔法の超上級魔法!!いや、移転魔法!?」と大興奮。やり方教えてっ!!って言われたけど、アドニス様に教えて貰って実行しただけなんだけどね。

 そんなわけで古城に戻って来ちゃいました。
 はい、入り口到着。
 って何か違うね!

 寝ている竜王様を起こさない様に私の部屋のベットに寝かせ、マルティンさんはそのまま古城の皆に連絡して貰ってます。
 アンバーさんはマルティンさんに一族のモノに連絡して下さいと伝言を貰って、即目の前で消えました。

 ……吃驚です。

 アドニス様は私の部屋から出て、廊下側の窓から外を見て「なんだあの蔦は?」と独り言中。
 リアムさんはマルティンさんから連絡が来た古城の人達と廊下で会話中。あれ?初めて見る人が居る。
 私がじっと見てると、ペコリと御辞儀をしてきたので此方も慌てて御返しの御辞儀。
 何方ですか?と聞いたら、「マルティン様の配下で一族のモノです。名乗る名はありません」とニッコリ。
 …名前云いたく無いのかな?
 此方も名前を聞かれたら「名無し」なので返答出来ないのだけど。

 等と思ってたら、この人アドニス様に蹴り飛ばされてた。


「バッカヤロー竜王のツガイに格好付けてモテようとしてんじゃねーヒネモスッ!」

 * * * * * * 

プチ解説(情報?)←

・圧縮空間魔法
良くあるアイテムボックスみたいなモノ。某青いののポケットには夢があるが、アドニスのには実用的なモノしかない。ちなみにアドニスの好物の飴玉は常備されているらしい。ある意味アドニスの夢。なお、エロ本は勝手に焼失(消失ではない)されて消し炭になっていた過去がある為に二度と入れて居ない。

・ヒネモス(終日と漢字で書く)
一族の中に入り込んだ若造で、一族で独身は珍しい輩。と言うか初めてじゃないかな…………。見た目設定17歳。中身はオッサン。一族のモノはマルティン以外は見た目年齢が止まる。不老不死の吸血鬼。一族の中で一番日が浅い(50の歳月は流れて居る)ので若造と言われて居る。黒髪黒瞳、172センチで細身。

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