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2.5章

不機嫌なウサギ21

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「ぱぱぱぱっぱ、ぱっぱぱーん。竜ちゃんはlevelが上がった。経験値を手にした。称号も手に入れた。その名も【ラッキースケベ】!!」

 黒猫のアドニス様が囃し立てる向こう側、項垂れる子供姿の竜王様が見えますけど当然無視です。
 と言うか、

 し り ま せ ん

 ふんだっ!
 あの後湯船にゆったり入って居た私の目の前に、竜王様が現れたのだ。しかも何も纏って居ない姿で。

 …見ちゃったじゃないのぉぉおお~っ!

 何がとか聞かないで!
 固まった私に対して竜王様も固まってましたが、即座に復帰した私はそのまま竜王様に向かって制裁を致しました。

「あ~相変わらず嬢ちゃん手加減無いな、竜ちゃんの顔面見事な赤い紅葉の手形が~…」

 制裁は前回同様平手打ちデス。
 しかも顔面。
 勿論手加減等ありませんよ?
「業とでは…」と言いますけどね、狙ってやったとしたら制裁は平手打ち処ではありませんからね。

「ワザトでしたら制裁はマミュウさんとマルティンさんに制裁を頼みますし、何でしたら女神様にお願いして重圧が掛かる魔道具を御借りして半日付けて頂きます」

 以前言われたんですよね、女神様に「竜ちゃん制裁用、何かあったら直ぐに貸すから」って。と言うか、何故予め用意されてるんですか…。
 うぐって言葉に詰まった様なお顔をしても知りませんからねっ!

「で、竜ちゃんワザト入ったの?」

 アドニス様何て言う聞き方~…
 フルフル頭を振って否定する竜王様は必死の形相で、違う!と否定してますけどね、あの時マジマジと私の身体見て居たのは知ってるんですからねっ!確かにその、ええと…この間竜王様とその、す、凄いことしちゃったけど、それとこれは別!
 別なんだからっ!
 ぽそっと「レイン」って物悲しそうに言われても駄目っ!
 つーんとそっぽを向いて無視です、無視っ!

「嬢ちゃんさ~…怒ってるのはわかるけど、竜ちゃんワザトじゃないらしいから許してやって貰えないかなぁ?俺も竜ちゃんと一緒に謝るからさ、ね?」

 うぐっ
 アドニス様私の弱点のぴんくの肉球を見せて、「触っていいから」ってなんの御褒美ですかっ!?

「わかりました、許します。その代わり思う存分触り倒しますからね?」

「いいよ~」

 アドニス様、確約はとりましたからね?
 なんてマルティンさんっぽいなぁと思いつつ言って、即座にぴんくの肉球をぷにぷにムニムニ、ぷにぷにムニムニぷにぷにムニムニ………エンドレス。

 ………

「レイン」

「何ですか」

 私は今、肉球に触るのに夢中なんですけど。
 ええと~…ってアドニス様、触っていいって言ったのですから思う存分触り倒しますよ。

「……寂しい」

 うぐっ!
 私の背中にコツンと頭を付けて、竜王様ってばションボリと…
 振り返って竜王様のお顔を見ると、物悲しそうな切なそうな辛そうな美少年の悲壮な面持ち。
 こ、これ弱いんだけどぉ~…

「レイン、構って」

 ってちょっこれ!狙ってる!?
 いや何を狙ってるのか知らないけどもっ!
 や、な、なんかかわ、い…っ!
 抗えないっ!抗ったらいけない気がするっ!
 思わずギューッて抱き締めたら、竜王様ってば安心した様に擦り寄って来て、目の前に黒猫腕の中にわんこちゃんみたいな可愛く擦り寄って来る竜王様って~っ!
 部屋の隅に居たキーラちゃんが「何て言う御褒美、美少年に美少女に黒猫っ!ヤバイ至福っ」って握り拳してる~?
 だ、大丈夫キーラちゃん?

「失礼します御嬢様」

 部屋にノックを一回し(ノックは二度すると急かして居る事になるから、余程急いで居る時以外は一回のみでとマルティンさんに習いました)、入室してきたマミュウさんはまずキーラちゃんを見て、見るからに「?」となりながら此方を見詰め、

「御嬢様、赤ちゃんは今エイミー様が連れてきますので」

 と言ったと思ったら、「ままぁ~」と言う声と共にエイミーさんと一緒に土の精霊の赤ちゃんが入って来た。

「お、チビスケ着替えたか~」

 アドニス様が嬉しそうに赤ちゃんに寄って行きます。
 アドニス様、ほんと赤ん坊好きですよね~。
 実はお風呂上がりの赤ちゃんがむずがったのと、竜王様との件でエイミーさんに預けてたんです。何せお風呂上がりにどうしたら良いのか分からなかったし。
「まま、ままぁ」と手を伸ばして来る赤ちゃんを抱っこして軽くあやすと、

「御嬢様、赤ちゃんはお肌がちょっと乾燥気味だったので、赤ちゃん用の刺激の少ないオイルとパウダーを使いました。もし痒がったら教えて下さいね?それとですね…」

 ふわわわっ!
 聞いたこと無い言葉が羅列し、ええと、うんと?とつい混乱しながら口に出したら、

「大丈夫です、マミュウや他のメイド達も居ますから。何かあったら直ぐに呼んで下さいね」

 と、恙無くエイミーさんは退出していった。
「はぁ~…流石エイミーさんです~」とはキーラちゃんの言葉。
「そうですね、私も見習わないと」とはマミュウさんの言葉。あの、小声で「御嬢様が御子様をお産みになったら育児をさせて頂きたいので、確り見習わないと!」て、あのぅ?私産むの前提…
 誰との子供か聞かないでスルーしときます……(地雷踏みそうだし)

「あれ?赤ちゃん服縫って貰ったの?」

 赤ん坊が羽織ってる真新しい白い布地には手縫いで縫った後があり、またカブリスさん気合い入れたのかな?と思って居ると、

「先程マルティン様が城下町まで行って針子を三人程臨時に雇い、取り合えず一枚仕上げたんですよ」

 何でも城下町まで女の子の赤ちゃん用の肌着やらお洋服やらを買いに行ったら一枚も無く、あるのは中古の品ばかりだった為に"誕生したばかりの精霊様に申し訳無い"と中古の品は止めて針子さん達に説明をし、急遽作らせて居るとか。

 マルティンさん竜王様の子供服の時、最初に慌てて持って来たのリサイクル品じゃあ無かったっけ…?
 竜王様後でマルティンめとか何とか言いそうだなぁ…

「勿論カブリス様も負けないっ!とか言って競って作ってるらしいですよ」

 うん、カブリスさん相変わらずなんだね。
 そりじゃあ私用の、先程竜王様が頼んでいたお洋服はずっと先になるかな?良かった様なそうでも無いような?と思って居たら、御嬢様のも作りますから楽しみにしてて下さいと伝言貰いましたのでってマミュウさん、「何か頼んだのですか?カブリス様異様に目をぎらぎらさせてましたが…」って、それ聞きたく無かったょ…
 無言で"原因はあっち"と言う風に竜王様に目線を送るとマミュウさん、あ~…って言う風に呆れた面持ち。

 何だか変にマニアックなお洋服が、そのうち私の衣装部屋一杯になりそうでちょっと怖いです………
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