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5章 海と水の向こう

お茶目を通り越しておるな

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 side.ウサギ

 うーん何だかマルティンお父さん、今日はちょっと機嫌悪いな~って思ってみると、あれ?目がさっきのイラっとした赤い濁った色合いから回復し、何時もの澄んだ綺麗な赤い目になってる。
 もしかしてさっきの意地悪で機嫌直った?イライラが解消されたのかも。でもそれはそれでイヤだなぁ。
 主人であるレノを弄って回復する機嫌ってどうなの~?
 執事としては駄目なんぞゃない?
 それに…
 折角レノの膝に居たのに。
 抱っこだってもっとしていたかった。
 もうちょっとだけ長くスキンシップしたかったんだよ?最近古城に居る時より会えない気がするし、会えても皆か居るから余り我が儘いってレノを独占したらいけないし。

 本当はもっと甘えたい。
 ぎゅっとだきしめて欲しいし、もっともっと触れていたい。
 お話だってしたいし、何なら、その…キスとか、えっとちょっと、うぅ、したい…。
 もう、何てこと考えてるのよ私。
 恥ずかしいっ。
 頭を振って邪な考え退散!

 でも、折角みーちゃん達が遠慮して部屋に来なかったのに…むーっ!少しだけ強めに睨んじゃうもんね。
 お父さんのばか~!

「お父さんレノに意地悪しないで」

 む~と頬を膨らませて言うと、目線が合わさって「つい、ですね」と言って苦笑する。

 ついじゃないですーっ!
 あんまり意地悪すると!お父さんが嫌がってた義理父ってよんじゃうよ!?って言ったら「それだけはっ!」って嫌がられた。だったらしなきゃ良いのに。

「御主人様は小さい頃から知ってますからね。最近の御主人様はとても嬉しそうなので、つい悪戯してしまいますね」

 といって笑って居る。

「もう、それって執事長としてどうなの?」

「良くないですね」

 クスクス笑いつつ、姿勢を正しているお父さん。む~義理だけどね、こうしてみるとカッコイイと思うよ?思うけど意地悪だー。

「あんまり意地悪するとミウじゃないけど悪戯するよ?」

「プ。それは是非見たいような気がしますが、嫌われそうですね」

「そうだもん。レノに意地悪するお父さんは嫌いだもん」

 ぷいっとソッポを向くと、楽しそうな笑い声と共に少し後ろから追い掛けてきたレノが微かに戸惑った様な顔をしつつ、嬉しそうに微笑んだ。

 うう、うっとりするような綺麗な微笑み。
 私そのお顔に弱いんだよ。
 顔がつい赤くなっちゃう。

「レノ~」

 誤魔化す様に空いた手を出すと、即座に寄って来て手を繋いでくれる。
 こう言うのちょっと嬉しい。ただ廊下が三人並んじゃって狭くなっちゃうのが難点。他に人が居ないからいいけど、次からはやらない様にしないとダメだなぁ。迷惑掛けちゃう。

「どうぞ」

 厨房に続いている食堂のドアを開けてくれて、マルティンお父さんは恭しくお辞儀をする。
 こう言ったトコは執事なんだけど、ねぇ…

「コラ、マルティン」

「はい」

「はいじゃない。何故私が入ろうとすると閉める」

 やっぱり~

「お と う さ ん」

 むーって頬を膨らませて怒ってます!とアピールすると、謝りながら開けてくれる。
 まったくも~。

「お父さん子供みたいよ」

「えええ」

 そんなショック!って感じでよろめいてって、何をしてるのマルティンお父さん。

「娘が反抗期…」

「「あの(ねぇ)な」」

 私とレノで同時に呆れてしまったよ。
 食堂にいた皆、キーラちゃんにリアムにキアヌ、ミウにヒューカちゃんが驚いてるじゃないのっ。

「お父さんちゃんと仕事しなさい」

 駄目でしょ!と叱るとションボリとした様子で肩を落として、

「うう、ほんのお茶目なジュークなのに」

 とか何とか言いながら、目が楽しそうだよお父さん?

「ククク、竜王の執事はお茶目だな。な、ガスパール」

「お茶目を通り越しておるな」

 クレメンタインさんとガスパールさんが何時の間にか私達の背後に居て苦笑して居る。

 なんだかなぁ…
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