ダンジョンの魔王の種族はエルフー配下と共にまったりのんびり過ごしますー

柚ノ木 碧/柚木 彗

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魔王が何故か、主神?の乗り物を召喚した件

心に潤いを

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 幾つかの通路を潜って、3つ目のワープゾーンを通ると其処は…

「オドロオドロシイ」

「ぱぱ、しゅみ、わる」

「うわぁ…」

「怖いですっ!何ですかこの恐怖の大王な部屋の入り口はっ」

『ブルルルルルッ!』

 一言で言うと、多分この場所がアデルの『魔王の間』手前の部屋なんだと思う。
 だって大きな扉が荘厳……違うな、何かの骨とか骨とか骨とか、うん、骨だらけだわー。
 骨で埋め尽くされて居て、何処の地獄の門かと思った。
 これって『魔王の間』の前の扉だよね?
『地獄の門』か『骨の国』、もしくは『死者の国』への門じゃないよね?

「や、やっぱり?」

 そして此方を伺うアデル。
 いやーそんな顔して見られても、ねぇ…元日本人としては曖昧な言葉を発したいけど、既にルクレツィア達が的確な言葉でアデルにグサグサ刺していってるから、今更どうにも救いようがない。
 かと言ってこのまま無言と言うのも…

 するとサササッとアデルの配下の蜘蛛達が布地(この布地、さっきから蜘蛛達がこすり合わせると文字が消えるんだけど、どういった性能で出来ているんだろう?お蔭で何度も使えていて便利そうだ)に文字を書き、此方に見せて来た。

 曰く、

『アデル様に粘着して婚姻を迫るドラゴンが『骨』を嫌うんです。ですからこのダンジョンには彼方此方ドラゴン避けに飾られています』

「…アデル」

「…」

「苦労したのね」

「言わないでくれ………」

 因みに骨が苦手だと気が付いたのは既に三十年程過ぎてから。
 それまで一度目はダンジョンを燃やされ、二度目には崩壊。頭に来たアデルが黎明の森に入らないように結界を敷いて居たのだが、二十年後にはその結界を破って襲われ…現在私が居る深淵の森にて来る度にぶん投げて半殺しの目に合わせ、追っ払って居たのだとか。

 お蔭で深淵の森には嘗て無い程魔力が豊富に貯まり、ダンジョンが産まれて私が誕生したってワケなんだけど、理由を聞くと何とも言えなくなる。
 そしてドラゴンさん、骨が苦手なのか……意外と女の子っぽいような、そうでないような。ただの迷惑な様な。

 うん、やっぱり迷惑な存在だよねぇ。

「ねぇアデル、骨ってあのドラゴンのみ苦手としているの?それともドラゴン全般?」

「過去出会ったドラゴンは全て違うんじゃねえかな。普通に骨咥えて喰ってた奴も致し、ドラゴンもピンキリだからなぁ」

 何でもドラゴンはドラゴンでも、下級ドラゴンとかは知性が無く、粗野で横暴で雑食。更に中級になると力が倍増し、下手すると同族以外からも気に入った奴がいると喰らいながら交尾するのも居るとか居ないとか…って、それって蟷螂か!いや蟷螂の場合は終わった後だっけ?

「と言うことはあのドラゴンさんは中級?」

 何となく中級よりは上級なんじゃないかと思うんだけどね。

「いや、最上級の種族だった筈だ。俺もあまりドラゴンには詳しくはないがな」

 顰めっ面で呟くと、うへぇ…と言いながら扉に付いているノブ(骨付き)に手を掛け、扉を開けた。






 * * *






 うへぇって嫌がる位ならせめて取っ手の部分だけでも骨を外せば良いのにと思うのだけど、この骨が無いとドラゴンさんが扉を開けて来てしまうのだそうで。って、それなら扉を小さくして『魔王の間』に来る通路も狭くしてしまえばいいのにって思っていたら、

「以前そう思ってドアを小さくして通路も狭くしたら、全部ぶっ壊してあの大蜥蜴が襲ってきたんだよな…」

 成程。敵もさるもの引っ掻くもの。むしろ癖が凄い…。
 うん、自分で言ってて意味がわからなくなって来たよ。それだけ相手がヤバイ相手ってことだよね。

「流石にアノ時は俺の貞操と精神が死ぬと思ったけど、配下が必死で阻止してくれて難を逃れたんだよな」

 貞操…うわぁ…あのドラゴンさん、どれだけ。
 アルフォンソがヒィって言う顔をしていたので私の配下達の顔を見てみれば、大抵がドン引きしていた。

「どらご、んおっきい、い?、ルクレツィア、ますた、まま、守れない、の…」

 そう言ってしょんぼりするルクレツィア。

「どれ位の大きさか分かりませんが、何時か倒せるように力を付けます!」

 と宣言するアルフォンソ。うん、頼もしい。
 ガルヴィーノとバイアルドは二人揃って「ドラゴンってどういうの?」と、比較的側に居たアデルの蜘蛛に聞いて、その蜘蛛がサラサラとドラゴンの絵姿を細部に渡って描いていくって、上手い…高度過ぎてリアルに怖いよ、その絵。そして横に書かれた文字によってドラゴンさんのサイズが判明。

「ええ、あのドラゴンさんサイズ変更出来るけど、通常60メートルって…」

 そんな巨体で大空を飛んで(浮かんで?)居たのか。流石異世界魔法があるだけでなく、生物もミステリーな巨体状態で空にいるのね。

 ちなみに私の配下である”彼女”を熱望しているセンギョク、こんな事を口走っております。

「俺、デカイのは無理かも。通常サイズのメスなら多分口説ける!」

「お前種族と色々超え過ぎだろ」

 突っ込んだのは安定のシユウ。
 何だろ、軍神の名前を頂いたのに気が付けばセンギョクにツッコミを入れている。私のダンジョンのボケとツッコミ担当に為りつつある二人を見ていると、徐々にルクレツィアとアルフォンソを除いて、この面子の性格が浮き彫りに為ってくる。

 ミンは最初に解りやすかったが世話好き。
 シユウはセンギョクのツッコミ件、オーク達のリーダー。
 コウテイはそのシユウのサポート的存在かな?的確に行動している。頭が良いのかも知れない。
 ガルヴィーノはバイアルドと共に、疑問に思った事を即問い、その事を確りと覚えて理解しようとする。知識欲が強い傾向があるのが垣間見えるけど、少しだけ差がある。最後まで細かく質問攻めするのはガルヴィーノで、バイアルドはその様子を聞いていて解りにくかった事をよく考えて言葉を吟味する傾向がある。ただし二人共産まれて間もないこともあり、少し子供っぽくて無遠慮気味だが。今も蜘蛛達に擦ると消える布地を指差し、「これ、何で消えるの?」「どんな素材?」「炭ってなに?」等と質問攻めを繰り出して居る。
 蜘蛛達が困っていたらヤメさせようとしたのだけど、その蜘蛛達の雰囲気が『もっと聞いて!』『質問歓迎』という風に布地に書き、次いでササササッツと次々と布地に文字を書いて答えている。

「うちの奴って受け答え好きなんだよな。客が来ると大歓迎して何時までもああやって会話を楽しんでいるし」

 というアデル。
 成程。という事は、結構頻繁にお客さんが来るのかな?

 ソレに対し、私の配下である四海龍王の名を付けたゴウゴウ・ゴウジョン・ゴウキン・ゴウジュウは今だ良く分からない。何となくだけどまだ個性が浮き彫りに為って居ないだけでそのうち判明すると思うのだけど、最後のゴウジュウだけはジィっとヴァルヘルムのフサフサした鬣と尻尾を見詰めている。もふもふか、もふもふが好きか?モフラーなのか、そうなのか?その気持はよく分かるぞ~ヴァルヘルムの毛並みはツヤツヤだからね!尻尾なんてツヤツヤのサラサラで、触るとふわぁってするんだから。お蔭で世話好きのミンまでお世話したがって身体を拭いたりしてるぐらいだ。
 だがしかし、存在感が凄まじいけどね。
 威圧感半端ないです。

「で、何時まで扉の前でヴァルヘルムを見て突っ立っているんだ、レーベルにええと、ゴウジュウだったっけか」

 アデルそんな不審そうな顔付きで此方を見ないでよ。
 だって、その扉予想外骨が多すぎなんだもん。
 ちょっとヴァルヘルムを見て、ツヤツヤのサラサラ尻尾や鬣を目に焼き付けて、心に潤いを与えてからだって良いじゃないの…
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