ダンジョンの魔王の種族はエルフー配下と共にまったりのんびり過ごしますー

柚ノ木 碧/柚木 彗

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ダンジョンは地下深く

世間的な通説

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「嘘!数か月っ!?」

 なんで!
 なんで数か月!幾ら何でも早すぎない!?
 普通もっと数年とか数十年とか掛かりませんか!
 だってまだ産まれ出て0歳児な魔王ですよ、しかも貧弱エルフですよ!?

「世間的にはこう思われて居てな、『個体差があるが数年経過してしまった魔王は力が付いて厄介だ。ならば経過する前に殺してコアを奪え』って言うのが通説だな」

「うわぁ…」

 そんな世間的な通説要らないですよ。
 もっと新人魔王に優しい世界が欲しい、今直ぐに。
 私ってば害が無いですよ?
 筋力なんて14しかない無力系魔王ですよ?

 おまけにダンジョンのある地上なんて焼け野原で、日々のご飯に困ってしまった位な貧弱さなのに。

「その為にもレーベルにはゴブリンの『騎士』が必要になって来る。統率を取らせるにも『姫』と『騎士』は非常に相性が良いんだ。勿論他の魔物も召喚した方が良いが」

 そうだよね。

 数か月で来るかも知れないって言うなら、ゴブリンだけだとどう足掻いても無理。更に私のレベル上げだって必要になって来るし、ダンジョンだってもっと念入りに作り込まないと為らない。

「一応服とか作る都合上私が連日は通うつもりだから、その間にやれることはキビキビやっといた方が良い。いざ来た時に対応出来ないのでは困るし、何より…口説き落としたいからな」

 最後不要です。
 そしてルクレツィア、何故其処で目を潤ませる。

「マスター…愛されてる?」

 声に出して言わなくて良いです、そこ。
 そして「ウンウン」って感じで頷かないで下さいアデル。
 ルクレツィア、「パパ、通い妻?」と声に出して言わない。

「通い妻でも通い夫でもどっちでもいいな」ってそこ、言わない。
 そして身震いしない。

 貴方が動く度にカサカサと床が鳴って怖いんですから。











 * * *











「『ゴブリン』の騎士さん召喚」

 つい『騎士』を意識する為に声に出してポチって押したのだけど、何故かアデルの身体がぷるぷるして俯いている。

「か、かわいい。レーベル声に出してかわぃい…」

「ぱぱ、抑えて。鼻血出たらみっともないよ?」

 俯いたアデルの足、布で隠されているけど蜘蛛の足がある位置を摩って落ち着かせようとしているルクレツィア。と言うか完全にぱぱ呼びだし、何となく平仮名っぽい発音だし。

 そして私の目の前に並んだ、厳つい皮鎧やら軽装やらを装備を着こんだゴブリン達。

 そう、『達』。
 おかしい、騎士だけ呼んだつもりなのに。

 私より大きな身長や身体付き、更に厳つい顔付のゴブリンが全員一列に並んだかと思うと、全員が全員土下座した。

 いや、だから何故土下座。
 異世界の服従の印って言うか証拠?は土下座なの?

『マイマスター!召喚により参上いたしました!』

 そう言って土下座から【五人全員】顔を上げると、…ん?一人だけ小さい子がいるんだけど。しかも顔がまた、他の厳ついゴブリンとは違って幼くて可愛い。

 もしかして間違えてまた『姫』ゴブリン呼んでしまったのかな?

「マスター、我らの忠義は貴方に。そしてそこに居られる姫君は我らの統率者として敬います」

 んんん?

 召喚したばかりの一番小さな可愛いらしい子がキリッとした面で此方を見て、ハッキリと宣言して居る。そして同意する可の様に他の厳つい背格好のゴブリン達が、

『我らの忠義はマスターに!姫君には敬いを!そして騎士には尊敬を。我ら従僕一同は今日からマスターに付き従います!』

 ん?

「従僕?」

「「「「はっ!」」」」

 厳つい四名、鎧を着た者や軽装な者達が背筋を伸ばしてからきっちりと…

「いや、土下座はもういいから」

「「「「は!有り難き幸せ!」」」」

 ううん、何か硬い。

 そして、小さな子、だよねぇ?

「騎士?」

「はい!僕はこのゴブリン隊の【騎士】の称号を得ております」

 確かに他のゴブリン達とは明らかに違う衣装、そして武器。

 厳ついゴブリン達は木の棒やら棍棒やらを腰に所持しているけど、この騎士だけは身の丈に合わせたのかロングソードよりは短い、ショートソードを鞘込みで所持して居る。

 そして装備。

 金属製の装備を肩や胸に足と部分的ではあるけど着こんで居て、幼いけど結構勇ましい。

「ほぅ、姫の年齢に合わせた騎士か」

 アデルが成程なと一人頷きながらもその足…蜘蛛の足はサッサッと布を編んでいく。今作っているのは反物にでもするのかな?

 そして騎士さん達や、何故そこでキョロキョロとアデルと私を交互に見るのかな?嫌な予感がするんだけど。

「「「「「パパ?(父上?)」」」」」

 いや、そのネタもう良いから。

 と言うか今騎士の子が父上って言ったよね。一人言い方違うのか、流石騎士って何だか変な感想だなぁ。

 と言う訳で、もうお腹一杯です。








 嬉しそうにしているアデルは放置して、召喚したゴブリンさんの内一名は手伝いますと率先してアデルの元に行って布を畳んだり片付けを仕出し、他のゴブリンさん達は『魔王の間』の外へ魔物が来た際の対応としてお互いの武器で訓練をし出して居る。

 勿論『魔王の間』の外の滑り台がある部屋の方で特訓中。

 そんな訳で急遽『魔王の間』のドアのシステムを変更し、召喚したゴブリン達は罠が発令しない様に、普通のドアの様に出入り出来る様設定を組む。

 …アデルは一応まだ警戒しているので勝手に入れない様にしているけどね。

 これはアデルも気が付いて居る様だけど、彼も何も言わない。それに『魔王の間』へ出入りはしているが、極力気を使って居るのかどうかまでは分からないが部屋の『コア』の傍には行かない様にして居る様だ。

 私もアデルが『魔王の間』に居る間は部屋から動かないし、動けない。疑いたくはないけど、昨日出会っただけで配下でも無ければ其処まで彼に気を許したわけでは無い。

 まあ、アデルが私を殺しに来たら瞬殺出来るだろうし、死ぬのも一瞬だろうから苦しまないならまぁいっかって思って居る節もある。当然回避できるなら回避したいけどね。

 下手に前世の記憶があるから偏屈って言うか枯れてる思考だよなぁと思いつつ、次の配下…召喚出来る魔物をどうしようかと思って居ると、魔王の間の床に「ふんふーん」鼻歌を歌いながらルクレツィアがドアがある場所一杯使って【魔法陣】を書き込んで居た。

「それは?」

「防犯、システム、む~」

「防犯?」

「侵入者、来た、油断した瞬間、雷撃が襲って、真っ黒、。痺れて、動けなく。生き残ってたら、騎士に退治、して、貰う。えんど」

 それ、結構凶悪なシステムじゃないだろうか。

 ルクレツィア、可愛い顔して恐ろしい子っ!
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