商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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134 五ツ木君、俺の名前忘れてないか?

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 side.嵯峨憲真


「こんにちはお邪魔します。あ、そうだ。眞宮とその旦那、飯食った後に色々報告~」


 眞宮の予想通り、五ツ木君が此方を見て「招かれていないのになーんと!ジャジャジャジャーン」とふざけた口調で言った後、急に真顔になり「あ、これ良かったらどうぞ」と蕗さんに持って来た御米を5キロ貢いでいる。

 うん、あれはどう見ても朝食とこれから頂くつもりの昼食のお礼なのだろう。
 と言うより俺のことをその旦那って。嬉しいけど、嬉しいけど!嬉しいから三度いっちゃうけど!それでも気が付いたのだが五ツ木君、俺の名前忘れてないか?
 目を合わせるとゆっくりと不自然にならないように、だが確実に反らされた。
 忘れているね、五ツ木君。


「あらー何時も有難うねぇ、助かるわ~」


 とそんな一幕は置いておいて。蕗さんが嬉しそうに受け取っている。


「いやいや、親父の急な単身赴任に母さんまでついて行っちゃったから、俺の食生活コンビニとスーパー頼りになっちゃって壊滅になったので本当、助かります」


 因みに五ツ木君とご結婚予定の彼女さん、料理は勉強中だそうだ。
 一回料理をしに来てくれたそうだが料理自体は美味かったらしいのだが、レパートリーが壊滅的に無いのだとか。カレーとサラダしかまだ作れないらしい。
 おまけに後片付けがダメとのこと。
 料理をしながら皿とか洗えないらしく、テンパってしまうのだとか。

 …大丈夫なの、それ?

 とか思って居たら「俺も色々習うつもり。彼女にばかりさせる気は無いし、今晩は彼女一家を招いて料理の勉強会をする」と。
 俺も料理が得意な眞宮にばかりして貰って居ないで見習うべきだよなぁ。反省。
 帰宅したら眞宮に料理を教えて貰おう。


「良いのよ~五ツ木君のお母様とお父様から今回のことで食事代とか色々頂いているし、遠慮しないで」

「それでも遠慮しちゃうってもんですよ、って訳で俺からもう一品!十和田牛でーす。知り合いから安くして頂いたので、此方も良かったらどうぞ」

「あら~良いお肉!厚みも丁度良いし、ステーキに出来ちゃうわね」


 嬉しそうに遠慮なく受け取る蕗さん。


「今晩はステーキかしら~」と嬉しそうに微笑むと、受け取った包みを抱えてそそくさと台所へと去っていく。


「ううん残念。俺、今晩は料理の勉強会があるから来られないなぁ」


 と言いつつほくほく顔の五ツ木君。
 彼女に会えるから嬉しいのですね、ご家族が来るから多少の緊張はあるかも知れないけれど初めて会った時から今迄見たどの表情よりも嬉しそうな顔付き。
 ご馳走様です。




 ***




 ちょっと豪華?なお肉が入ったお昼(和牛入りの焼きそばとスープ)を済ませた後、二階の部屋へと眞宮と俺に五ツ木君と三人で入る。途端ここ数日二人だけで快適だった空間が一気に狭く感じた。
「うわ」とか、眞宮なんて明らかに部屋が狭いと口にしているよ。
 すいません、狭く感じている一端を俺が担っている状態なので。この中では一番の長身だし、とは口には出さないけど。
 ちょ、五ツ木君、明らかに身長がある俺が原因では?と、目で訴える様に見ないでくれる?普段は眞宮と二人でいる分には狭くは無いのだからさ。

 眞宮が部屋のファンヒーターのスイッチを入れている間、蕗さんが暖かいお茶を持って来てくれた。


「お~狭山茶だ」


 流石お茶屋さんを開いているだけあって、香りを嗅いだだけで何処のお茶か眞宮はわかるようだ。


「先日眞宮が送ってくれたお茶よ。深みがあって良い匂いで好きよ、このお茶。有難うね」


 違った、眞宮が送った品だからか。
「ごゆっくり~」と言って去って行った蕗さんの後ろ姿を確認し、それから徐に五ツ木君は語り出した。


「眞宮が【運命の番】相手だって言って居たこの辺り出身の唯一のαだった男性と付き合っていたΩの女性がさー…」
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