商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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132 雪搔きスコップ

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 side.嵯峨憲真


 昨夜、眞宮の部屋に二組の布団。
 新婚か?とか心の中で突っ込み、顔では隠し切れない幸せを醸し出しニヤニヤしながら眞宮と二人布団をくっ付けて眠りに付いた。
 勿論眞宮に怒られたりはしないし、小林家の実家なので不埒な真似はしていない。
 していないけど、互いに顔を見合わせてから笑い、鳥がついばむように何度か軽く唇を触れ合わせるようにバードキスをし「おやすみ」と挨拶をして寝た。
 眞宮ってこのキスをすると照れながらも嬉しそうに微笑むんだよな。
 俺としてはもうちょっとこう、濃厚な、いや、何でも無い。
 此処は小林家の実家だ。

 悪霊退散、否
 煩悩退散。

 尚、昨夜の件では眞宮のご両親から有難いことに結婚のお許しが出た。
「眞宮を不幸にしないこと、泣かせないこと」と言う条件付きだが。
 勿論俺はそんなつもりは無いし、この先もさせる気は無い。
 それと眞宮の父親である延司さんから「息子から聞いているとは思うけど、憎たらしいことに『運命の番』もどきである阿藤日向夏のことは…」と聞いて来たので、「もう思い出させません」とキッパリと宣言してみたら、「そうか」と、泣きそうなそうでないような複雑そうな表情を一瞬見せたあと、「頼む」と一言告げて晴れやかに笑った。

 その笑顔、眞宮にそっくり、いや。眞宮がそっくりなのか。



 そうして今、俺は真っ白な景色と頭の上から爪先まで冷気に覆われた玄関先に『除雪スノーシャベル』『雪掻きスコップ』等と呼ばれている物を持ち、除雪作業中である。
 因みに、自信をもって言えるが除雪作業には役に立たって居ない。


「腰が入っていないぞ!」

「一々雪をスコップで掘るのではなく、スコップで雪を押し出して!」


 等など。
 こんな年齢まで雪国に来たこともない初心者には難関!
 と言うかな、スコップって土とか雪とか掘ってから掻き出すんじゃなかったのですか!?
 まさか降り積もった雪の中にスコップを突っ込み、そのまま雪を押し出して突き進むとは思わなかった。しかも何度も何度も繰り返し、山高く積み重なった雪の上に更に山を作ると言う作業。そりゃ~腰が、腰がっ!
 とは言え雪はパウダースノー。
 湿気が一切無いさらさらの雪。
 真新しい雪が降り積もった場所に足を軽めに置くと、バフンッと飛び散る白い粉。
 ついさっき初めて見た光景なのだがこの銀世界が一気に小麦粉の中の世界かと思ったね。ついでに腹が減って来た為か、「粉モノ?」と呟いたら一緒に外に居て雪掻きをしていた延司さんが盛大に「ぶほぉっ」と吹き出していた。
 どうやら俺の頭、慣れない環境と言う名の極寒な場所にいたために頭がバグったらしい。
 寒いんですよ、極寒二日目いまだ慣れません。


「おはようさんって、初心者にはキツイか~」


 いつの間に来たのか、昨夜ぶりの眞宮の幼馴染である五ツ木君が電動除雪機の運転を一度止め、挨拶して来た。
 何でも此処の道、子供達の通学路らしくきっちりと除雪をしておかないとならないのだとか。


「俺等もガキの頃此処の通学路使っていたし、放置しておくと雪が降り積もってどんどん山の様に積み重って危険だ。すぐそばの道路は車が走るし、そうなると子供等が怪我してしまうからな」


 此方もいつの間に来たのか、つい先程まで俺達が泊まっていた部屋の氷柱をつついて落としていた眞宮が部屋着のまま玄関ドアから顔を出し、


「父さんに憲真、朝御飯出来たって母さんが。つーか五ツ木も居たのかおはよう。飯食ってく?」


 眞宮さん、幾らつい先程まで部屋に居たからって靴下ぐらいは履こうよ。
 サンダルを履いて玄関先から一歩も出て来ない姿を見ている此方の方が寒いです。
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