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127 俺の一人息子でもあるのー!
しおりを挟むside.嵯峨憲真
「あら、結構余ってしまったわね」
「おばさん幾ら眞宮が帰宅したからって張り切りすぎだよ」
「そうねぇ、滅多に来ない眞宮ちゃんがわざわざこんな雪の最中に帰省するって言うだけでも嬉しくて、ついついお父さんと二人で悪乗りして張り切ってしまったわ」
「ちょっ、おばさん達二人で悪乗りって!」
そう言って五ツ木君は大笑いをし、眞宮の母親である蕗(ふき)さんは自分の夫である延司さんの方を見詰め、
「いい加減にしなさいな」
と、呆れた声を掛けている。
実は眞宮が膝で眠ってからずっと、背後から延司さんからの殺気、いや圧を感じていたのだ。
βなのにαとは違う、大した圧力では無いから少々気配を感じるかな?と小首を傾げる程度で済んでいる。
この状況だ、俺からは何もアクションをしない方が良いだろう。今は甘んじて受けるべき。何せ延司さんの大事な一人息子である眞宮と夫夫になるのだから。
…まだ挨拶は出来て居ないけど。
何せ俺達が番になってから少し経過し、夏前ぐらいに眞宮の実家に連絡を入れてからずっと延司さんの【仕事の都合】で今まで会うことが叶わなかった。
ついでに言うと俺からの電話も即蕗さんに代わってしまい、まともに言葉を交わすことも出来なかった。
これは完璧に避けられているのだろうなと思っていたら、痺れを切らした眞宮が「強行突破する!」と宣言し、雪が積もる時期にこうして眞宮の実家へとやっとの思いで来たのだ。
なお、眞宮の母親である蕗さんと五ツ木君の協力が無ければ恐らく今日、延司さんに会うことは叶わなかっただろう。
(眞宮曰く、仕事と言いつつ自身の友人や幼馴染の家に逃げ出すか、もしくは町の宿やネットカフェに逃げだしているだろうと予想し、眞宮が頼み込んで五ツ木君や蕗さんに見張って貰って居たらしい。実際今朝逃げ出そうとした為、蕗さんが予約をしたから運転して欲しいと頼み込み、お寿司屋へと車で連行していった)
等と思って居ると、
「だって蕗さん、俺の眞宮が~!」
「はいはい、貴方のでは無く嵯峨憲真さんのですよ」
「違う!俺の一人息子!」
「それなら私の一人息子でもあるわねぇ」
「そうだけどー!でも!でもー!俺の一人息子でもあるのー!」
駄々っ子かと言う五ツ木君の呟きが聞こえたなと思っていたらバタンと言う音が背後から聞こえ、圧が消え失せた。
…もしかして、延司さん倒れていません?
「あははは、やあねぇ~面倒臭いからついお父さんにお酒飲ませ過ぎちゃったわ~」
「流石眞宮のかーちゃん、グッジョブ!」
「ふふ、それにしてもこういう所は親子ねぇ。眞宮が家でお酒を飲んだのは今日初めて見たけれど、お父さんそっくりでお酒に弱いみたいね」
背後を見ると、眞宮の父親である延司さんが倒れて寝ているテーブルの上には350mlの缶が一本、蓋が開いており、「まだ入っているねー」と五ツ木君が缶を手に持ち中身を自身のコップに注いでいた。
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