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123 実家は積雪二メートル2
しおりを挟むside.嵯峨憲真
「いや~マジ、眞宮ってば愛されている~♪いや、溺愛か!愛され幸せ状態の御裾分けを俺にくだせぇー小林眞宮御代官様~!」
「そういう五ツ木もそろそろだろ、結婚」
「まーなーって、いい加減眞宮の旦那を紹介してください、マジおねしゃす」
「無理に変な言葉を話すなって」
「えーつか、俺のイントネーション変だと思うけど都会で通じる?」
「むーり。方言は何とか堪えている感じだけど、発音が津軽弁丸出しできっつい」
「ぐほぅ」
ぐほぅと言って雪の大地に突っ込む眞宮に五ツ木と言われた男。
成程、この様子から察するに眞宮の幼馴染なのだろう。「田舎で家族経営をしていて、色々商品等を宣伝のために低価格で卸してくれる幼馴染」と以前話していた。そうしてお調子者だとも。
「えーと、雪の中に突っ込んでいる最中になんですが、眞宮の幼馴染の五ツ木さんですか?」
眞宮が実家の事を話す時、この幼馴染の事だけは楽しそうに言葉を紡ぐ。他の、例えば中学のクラスメートの事とか話す事は無いと思って居るのか言葉を濁す傾向があるが、本当に話すことが無いのか少ししか話さない。恐らく第二性のΩになってからあまり良い思い出が無かったのか、それとも【田舎】と言うことで特に何も無かったのか。
予想としては前半だろうとは思って居る。
眞宮は【運命の番】にスルーされた身だ。
そのことで辛い思いをしただろう。
そんな過去は俺がこの降り積もる雪の様に覆い、痛みも辛さも何もかも覆い尽くして全力で幸せにする。
…本当は辛い過去だとか痛みだとかは思い出させたく無いが。
「へい、冷たーい雪の中に突っ込んでいる五ツ木さんでっす。ついでに言うと幼馴染の眞宮が相変わらずのツンツン具合で、わ、あんべわるー…(私、具合悪い)」
ん!?前半は兎も角、後半何を言っている??これが方言?
そう言えば眞宮がスマホで幼馴染や実家と会話している時、難解な言葉を話していたな。外国語のような、フランス語のような、宇宙語のような不可解な言葉で。
「そっただとこ(そんな所)何時までもいるからだっつーの」
「いっとまがやし!おばぐだ!(ちょっとの間だし!横柄だ!)」
えーと?
喧々囂々と騒いでいるが、此処って眞宮の実家の家の前では無かったか?言い合っている言葉は既に異国の地にでも来た気分で何を言っているのかわからないが、隣近所にご迷惑では……。
右を見て。
左を見て。
俺の目の前にあるのは真っ白い雪の壁。
お隣さんの家があると思わしき場所に降り積もった雪。二メートル以上の高さがあり、その場所にあるのかどうか此処からだと見えないのだが…。
*
名無し状態だった幼馴染君、小林店長の実家帰省編でやっと名前持ちに。そうして今、名前持ちにと打ったらPCの変換で何故か「もつ煮込み」と表示され…。
「五ツ木 冴」と言う名前を思わず改名し、五ツ木もつ煮込みにしようか、もしくは似たような名前にしようかと思ってしまった。
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