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111 堪らない。
しおりを挟む前回の話は閑話か番外だったかな~と(*_*;
* * *
「うわぁ」
嵯峨さん、ええと憲真がマンションに帰って来たので出迎えに行こうとしたら、両手に沢山の食料が入った袋を抱えて既にキッチンにまで来ていた。
「凄い量ですね」
カレーの匂いやらペットボトルやら諸々沢山。
何故か袋の中から葉っぱが付いた大根が「こんにちは」と言いたげに、にょきっと顔を出しているけど、これ多分誰かから頂いたのではないかな。しかも俺が居るって理解している状態で。何せ憲真料理出来ないからね。他にはスーパーで購入したと思わしきお惣菜や、レトルト食品。ゼリーやお菓子類まである。
あ、これもしかして末明さんからかな?凄い大量だ。
それらを次々と冷蔵庫等に入れていく。
因みに俺、全身の筋肉痛はまだ収まって居ないけど先程起きた時よりはましになっていて、ふらふらになりながらもトイレで色々始末して来ました。諸々とね、下半身事情が…げふんげふん。
ヒート中の朧気な状態での記憶では、憲真が食事とかお風呂とか細かく俺の世話をしてくれて居たのは覚えている。でも、残念ながらデリケートな事柄にはその、ね。
本人にしかわからない事細かな事情と言うものがありまして。何がって違和感とか、憲真の体え…その、何が、がその、もにょもにょ、だったのですよ。
ううう、恥ずかしい!
「眞宮もう起きて大丈夫ですか?!」
壁に片手を付き、ふらふらと覚束ない足取りで憲真の傍まで歩いていたため、荷物を片付けた憲真が急いで俺の身体を支えてくれる。優しい。それと同時に香る、αの安心出来る憲真の匂い。
あー俺、頭バカになっている。
その証拠にフェロモンの元である憲真の首筋に思いっきり鼻を近付けて嗅ぐ。
ああ、駄目だ。
いい匂い。
頭の芯から足の爪先まで全身でこの匂いに浸されていたい。
そうして溶けたい。
砂糖が水に溶けるように、憲真に溶けたい。
もっと、もっと。
温もりが欲しい。憲真が欲しい。ずっとくっ付いていたい。
途端に柔らかくふにゃふにゃになる俺の身体。
贅沢な願いだよなって思っているけど止まらない。
衝動が収まらない。
自由が利かない。
これはきっとヒートがまだ落ち着いていないせい。Ωの本能だ。項を噛まれたことでもう憲真以外のαのフェロモンには惹きつけられないから、もっともっとと求めてしまう。
「あ、ま、眞宮?」
「んー」
「大丈夫ですか?!」
大丈夫じゃない。
その匂い、好き。
堪らない。
だけどその前に、
「おかえりなさ~ぃぃ」
へにゃり。
身体も全身、ぐにゃぐにゃになって自由が利かなくて、でもどうしても言いたかった。
挨拶大事。
その言葉を憲真の家で言いたかった。
良いよね?今この時だけでも憲真は俺のだって思って良いよね?
「はい、ただいまです。って、もしかして俺のフェロモンに当てられていますか?」
「でーすぅ~」
へら~って多分俺、へらへらと緩く笑っている、と思う。
鏡が無いから見れないのでわからないけど。
憲真のちょっと困った顔付きが急にスイッチが入った様になり、瞳の奥には熱が籠もる。
「誘っています?」
「ン、んー…?うん?うん」
ぐてんぐてんな俺の現在の脳味噌に聞かれても返答致しかねます。だってもう、頷くしか選択肢はない。誘うなんてそんな気は無かった筈だけどなぁ。
そうして暗転。
ここから俺の記憶は翌々日までシャットアウトした。
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