商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
上 下
113 / 138

111 堪らない。

しおりを挟む
 
 前回の話は閑話か番外だったかな~と(*_*;


 * * *


「うわぁ」


 嵯峨さん、ええと憲真がマンションに帰って来たので出迎えに行こうとしたら、両手に沢山の食料が入った袋を抱えて既にキッチンにまで来ていた。


「凄い量ですね」


 カレーの匂いやらペットボトルやら諸々沢山。
 何故か袋の中から葉っぱが付いた大根が「こんにちは」と言いたげに、にょきっと顔を出しているけど、これ多分誰かから頂いたのではないかな。しかも俺が居るって理解している状態で。何せ憲真料理出来ないからね。他にはスーパーで購入したと思わしきお惣菜や、レトルト食品。ゼリーやお菓子類まである。
 あ、これもしかして末明さんからかな?凄い大量だ。

 それらを次々と冷蔵庫等に入れていく。

 因みに俺、全身の筋肉痛はまだ収まって居ないけど先程起きた時よりはましになっていて、ふらふらになりながらもトイレで色々始末して来ました。諸々とね、下半身事情が…げふんげふん。
 ヒート中の朧気な状態での記憶では、憲真が食事とかお風呂とか細かく俺の世話をしてくれて居たのは覚えている。でも、残念ながらデリケートな事柄にはその、ね。
 本人にしかわからない事細かな事情と言うものがありまして。何がって違和感とか、憲真の体え…その、何が、がその、もにょもにょ、だったのですよ。
 ううう、恥ずかしい!


「眞宮もう起きて大丈夫ですか?!」


 壁に片手を付き、ふらふらと覚束ない足取りで憲真の傍まで歩いていたため、荷物を片付けた憲真が急いで俺の身体を支えてくれる。優しい。それと同時に香る、αの安心出来る憲真の匂い。

 あー俺、頭バカになっている。
 その証拠にフェロモンの元である憲真の首筋に思いっきり鼻を近付けて嗅ぐ。

 ああ、駄目だ。
 いい匂い。
 頭の芯から足の爪先まで全身でこの匂いに浸されていたい。
 そうして溶けたい。
 砂糖が水に溶けるように、憲真に溶けたい。
 もっと、もっと。
 温もりが欲しい。憲真が欲しい。ずっとくっ付いていたい。
 途端に柔らかくふにゃふにゃになる俺の身体。
 贅沢な願いだよなって思っているけど止まらない。
 衝動が収まらない。
 自由が利かない。

 これはきっとヒートがまだ落ち着いていないせい。Ωの本能だ。項を噛まれたことでもう憲真以外のαのフェロモンには惹きつけられないから、もっともっとと求めてしまう。


「あ、ま、眞宮?」

「んー」

「大丈夫ですか?!」


 大丈夫じゃない。
 その匂い、好き。
 堪らない。

 だけどその前に、


「おかえりなさ~ぃぃ」


 へにゃり。
 身体も全身、ぐにゃぐにゃになって自由が利かなくて、でもどうしても言いたかった。
 挨拶大事。
 その言葉を憲真の家で言いたかった。
 良いよね?今この時だけでも憲真は俺のだって思って良いよね?


「はい、ただいまです。って、もしかして俺のフェロモンに当てられていますか?」

「でーすぅ~」


 へら~って多分俺、へらへらと緩く笑っている、と思う。
 鏡が無いから見れないのでわからないけど。
 憲真のちょっと困った顔付きが急にスイッチが入った様になり、瞳の奥には熱が籠もる。


「誘っています?」

「ン、んー…?うん?うん」


 ぐてんぐてんな俺の現在の脳味噌に聞かれても返答致しかねます。だってもう、頷くしか選択肢はない。誘うなんてそんな気は無かった筈だけどなぁ。

 そうして暗転。
 ここから俺の記憶は翌々日までシャットアウトした。
しおりを挟む
◇◆◇◆◇ 更新中のお話 ◇◆◇◆◇
新作 BL ※ 商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/192520360

BL ※ ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/488408600

NL ※ 今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/789277952/571182846

宜しかったら見て頂けると嬉しいです(*´ω`*)

あなたにおすすめの小説

Ωだったけどイケメンに愛されて幸せです

空兎
BL
男女以外にα、β、Ωの3つの性がある世界で俺はオメガだった。え、マジで?まあなってしまったものは仕方ないし全力でこの性を楽しむぞ!という感じのポジティブビッチのお話。異世界トリップもします。 ※オメガバースの設定をお借りしてます。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

騎士団長を咥えたドラゴンを団長の息子は追いかける!!

ミクリ21
BL
騎士団長がドラゴンに咥えられて、連れ拐われた! そして、団長の息子がそれを追いかけたーーー!! 「父上返せーーー!!」

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...