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107 堪らなく好きなだけ
しおりを挟むside.嵯峨憲真
「旋毛が可愛いのだろうか?」
ぶふっ。
危ないあぶない、もう少しで眞宮の前で吹き出すところだった。
目線を下げて小林さ…眞宮を見ると、愛らしい顔を困惑へと変え、俺がつい「可愛い…」と言ったことに対し、思ったことを『うっかり』口に出している。
旋毛も確かに可愛い。
でもそれよりも何よりも、眞宮が可愛い。
外見もさることながら中身が可愛らしいし、行動も可愛い。
今も自身の考え事に集中しているせいか、俺が抱きしめてじっと見ていると言うのにあまり意識をされていない気がする。
此方の事を見ていないあたり、正解だろう。
そう言ったところも可愛いが、出来たら目の前に居る俺を意識して欲しい。
うん、よし。
俺の腕の中に居るのに意識が別の所に飛んでいる眞宮を振り向かせるために行動に出る。
「ひゃ!」
エッチなことも今ならバレないかな、とか男としてどうなのだということを一瞬考えたが、エロイことを考えてしまうのも男である俺なのだし…。
据え膳と言った眞宮の意識を俺に向けるため、眞宮の額にキスを一つ。
ついでに背中を一撫で。
これは不埒な悪戯、そういう意味で。
「ひゃう!」
ビクッと一瞬身体をビクッとさせた眞宮を見ると、顔が真っ赤に染まっている。
…もしかして、背中は敏感だっただろうか。
「…です」
「あーええと、もしかして声に出していました?」
どうやら俺も人の事は言えないらしい。
それとも眞宮の癖がうつったのだろうか。眞宮のならば別に良いか、等と思ってしまうあたり俺も中々恋愛中毒に陥っているのかも知れない。
溺愛、とか?
堪らなく好きなだけなのだが、どうなのだろう?
「はぃ」
恥ずかしいのか語尾が小さな声になっていた眞宮を腕に抱く。
食わぬは男の恥。
なら…いい、よな。
「一度抱いてしまったらもう手放せないですよ。逃げるのなら今のうちです」
「好きな人の部屋に覚悟して来たので、逃げる気はありません」
「本当ですか?」
「イチゴをお土産として持参して来たからそうじゃないと思いました?」
思わず台所に置いてあるイチゴに目線が行ってしまったじゃないか。真っ赤で旨そうだけど。
そんな俺を見て苦笑している眞宮、意外と余裕そう。ううん、こういった所は案外肝が据わっている。そう思わせているだけかも知れないが、此方を見て微笑んでいる顔が眩しいし、愛しい。
我ながら眞宮に惚れまくっているよなぁ。
「イチゴより美味そうな人を逃すことはしませんよ?」
「それでこそ俺が好きになった男、かな」
眞宮の口から好きになった男って。
一瞬先日の眞宮の『運命の番』相手である、阿藤日向夏を思い出し、勝った!!と脳内でファンファーレが鳴り響く。だが此処で失敗はしない。阿藤の名を口に出して一瞬でも思い出させたくはない。
俺、意外と嫉妬深いのだなと自覚する。
さて。
問題は恋愛経験も恋人も居なかったイコール年齢の俺。
この場で手を出していいものか、それともベッドまで運ぶべきか。
幾らなんでも台所ではちょっと拙いよな?初めてだし、何より優しくしたい。
一先ず眞宮の唇を堪能しつつ、数秒だけ苦悶。
その間に眞宮からΩのフェロモンが漂って来て、眩暈がしたように視界が揺れる。あ、ヤバい、これ本能が、疼く。止められない。
一見冷静な思考は即座に塗り替えられた。
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