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103 対抗出来るように
しおりを挟むside.嵯峨憲真
「やっちまったよー!!」と顔面を真っ赤に染め、慌ててその顔を両手で隠してしまった小林さん。いや、眞宮さんと言うべきだよな。
可愛い。
ほんと、可愛い。
Ωの男性って学生時代から何人か見たことはあるが(注・憲真が生まれ育ったのは都会だったため。田舎に行くほどこの世界のαとΩが居ることは稀になる)、この人ほど愛しいとか可愛いとか思ったことは無い。気を許す人が身近にいると口から思っていることを漏らす癖があるようだが、それもまた愛嬌があって良い。
何より思っていることが分かって良いし、今みたいな俺のことを考えていることも嬉しい。同時に恥ずかしさも込み上げるけど。
初恋は学生時代にしたが、もしかしたらあれは本当の恋では無かったのかも知れない。
なにせ眞宮さん程胸が苦しくて、ぎゅっと締め付けられる程に堪らなくなる人など傍に居たことは無い。
初めて見た時から可愛い人だなと思ったが、年月を得てこれ程惹かれるものだとは思っていなかった。
そんな眞宮さんから『好きな男性を落とすためには胃袋を掴め』だなんて言葉が出て来るとは。しかも言葉の端々に俺のことを気にしてくれていて。
俺の体格が細いのは気にしないで欲しいのだけど。
鍛えるか。
少なくとも鍛えた筋肉はこの先眞宮さんを守るために必要だろうし、何より男だから多少なりとも頼りにされたいし、頼られたい。
明日からトレーニングジムにでも通うか?行ったことが無いから周囲から浮く気がするが。
せめて水泳から始めてみるべきだろうか。
筋肉痛に陥るだろうから少しずつするべきだよな…ふと、気になって己の二の腕を見る。
気のせいか、『ぷにっ』としている気がする。
……本気で鍛えよう。
その場で固く決心をし、空いた時間等で最低でも腕立て伏せ等もするように考え込む。
二の腕を鍛えるのは腕立て伏せだけでは足りない気がするから、早急に鍛えねば。一先ず腹筋背筋も鍛えたい。
そうこうするうちにスーパーで購入したお弁当を食べ終えた。
普段購入して食べている弁当なのだが、こうして眞宮さんを目の前にして食べていると何時もとは違った旨味を感じるような気がする。スーパーで購入した弁当はどちらかと言うと普段は味気無く感じていた。だがこうして、好きな人を目の前にして共に弁当を食べることが出来るということは大袈裟に言うと世界が薔薇色に染まった気がする。
もしくは俺の家だけが色彩が変わったような、そんな風に思えてしまう。
何て幸福なのだろう。
眞宮さんの店が大変な状況になったと言うのについ不謹慎なことを考えてしまう。
それでも今、共にいるこの状況に神様有難うと言ってしまいそうになる。
(言ったら言ったで、変人扱いされたらショックで死にそうになるだろうから言いませんが)
眞宮さん曰く、「次は何か栄養のあるものを作りますね!」と。同時に目線が下がり、俺のウエストを見るのは止めて欲しい。頑張るから、鍛えるからと声に出さずに言葉を飲み込んだ。
それでも眞宮さんの心の声が聞こえる気がする。
「細い」と。
いや、今はっきり口に出していたよ。
小声だけど。
眞宮さんのタイプって筋肉質な男性、かな。そう言えば眞宮さんの『運命の番』相手、警備会社に勤めているだけあって中々均等が取れていた人だったな。背筋も伸びていたし、確りと身体を鍛えているのだろう。
ふと、自身の胴体を見る。
……無言になってしまうのは何故だろう。
鍛えるだけでなく、食事もちゃんと三食取るようにしよう。
あの男(日向夏)に眞宮さんを奪われないように、せめて対抗出来るようにせねば。
等と固く誓った。
*
小林店長の店で食べられない時は食事を摂取するのを面倒くさがり、取っていなかった嵯峨さんです。
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