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85 打破とか下品とか

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 よし、言った!言ってやった!
 ふんっと鼻息を荒くして鳴らしてしまうのは仕方が無い。それだけ開き直ったのだから。学生時代『運命の番』だったあの人のことはまぁ…。
 つい先日再会して諸々あったけど、結局俺はヒムカさんを選ばず、嵯峨さんを選んだ。
 どうしても学生時代に見たあの時の光景が頭から離れないと言うのもあるが、何よりより強く惹かれたのは今目の前…正確には横に座っているけれど、嵯峨さんな訳で。


「小林さんが、」


 うん?
 嵯峨さんが戸惑った様な表情をし、右手で自身を指し、


「俺、を?」


 そうそうと言う具合に何度も首を縦に振る。


「え、えー!?」


 その場で思いっきり大口を開けて仰け反り、ハクハクと何度も口を開けたり閉じたり。
 そうして一度目を閉じてから開き、更に俺を何度も上から下から…うーん、視線が。


「そうでなければデートなんて一緒に行きませんよ」


 最近やっと嵯峨さんが好きだなって思えるようになったし自覚した訳ですけど。
「よいしょ」と、何処かのおっさんみたいな掛け声をしてから嵯峨さんが仰け反った為に開いた間。その間にスススと詰めより嵯峨さんを…く、身長差…下から見上げる。
 座っているから多少身長差は無くなっているとは言え、俺の身長は一般平均の女子よりも少しだけあるかな?と言う範囲の167センチ。それに対して嵯峨さんの身長はかなり高い。もうね、二メートルある?と聞きたいぐらい。
 何せ不破さんのお店によく来る白人男性達と互角。もしくはそれよりも高い。
 そんな嵯峨さんが俺と同じソファーに座れば座高云々はなんとやら。


「下から目線、滅茶苦茶かわいい…」


 そう言ってプルプルしだす嵯峨さん。
 嵯峨さん、大丈夫ですか?感性ぶっ壊れていますよ、それ。
 かわいいって口調が何故か平仮名っぽく聞こえていますよ。
 そんな嵯峨さんの方がとっても可愛いと思います、断言出来ます。
 αでも可愛いいやら格好良いって良いと思います。

 まぁ良い、俺のことを可愛いと思ってくれているならば俺が色々と有利な筈!!

 と言うか、ですね。


「好きです、大好きです」


 察して欲しい。
 20代童貞処女Ωな俺。

 恋愛経験値ゼロなのです!!
 告白したらどうしたら良いわけ~~!!

 中学の時に運命の番に振られてから恋愛経験値ゼロ、年齢=恋人ゼロ状態を長年更新続けて来たへっぽこΩの俺にはどうしてもわからない!

 こういう時は打破!打破でいいの!?
 顎に一撃を加え、それから金的だったっけ?
 あれ、これは痴漢の撃退法?それとも喧嘩の打撃方法だったっけ?
 いやいや普通に考えて打破とか殴打とかは駄目、だよね。それでは何?何をして良いの!?
 気分は某ロールプレイングゲームの混乱魔法を食らった状態。
 パニックですよ!
 え、えーと。前に京夏君が言っていた、落合君に告白してからどうしたって言っていたっけ?確か、告白して、それから即お互いに風呂入ってから抱き合って、からの……ベッドイン。

 ちょ、これ、あの二人速攻で行為に及んじゃったの!?
 わ、うわあ、若い、凄い。

 では無くって!
 落ち着け~俺、落ち着け~!
 付き合って欲しいって言うべき!?
 何処を?下、下半身??
 エッロ!
 ああああ、そうじゃない。それは下品!
 下ネタじゃないか!
 落ち着けー落ち着くのだ~!

 と言うか、嵯峨さんさっきから口を開けたり閉じたり忙しいな!そうして目をパチパチして可愛いな!!αか!αが可愛いが過ぎる!!
 俺のじゃないけど、今目の前の俺の好きな嵯峨さんが可愛いのですけどー!!


「いや、俺可愛くないのでっ!」


 右手で顔を覆って左手で俺にストップのアクション。
 いやそれも可愛いです、堪らないです。
 嵯峨さんの仕草ってメッチャ俺の心に突き刺さる!


「あの、小林さん」

「はい」

「先程からほぼ全部口に出していますよ…」

「え」

「ここ、その。不破さん宅の地下の事務所なので、この場所で抱くっていうのは、流石に…それに上の階にはお客さん達もいます、から…」


 言うに事欠いてそれ~!!
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