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70 小林茶坊周囲で彷徨く者達
しおりを挟むside.木村壽人
「チンピラだな」
「元、じゃね?」
深夜0時過ぎ。
俺、木村壽人(ひさと、β)と神宮寺代紋(だいもん、α)、クラウディオ社長がイタリアで立ち上げた会社、その日本支部にすったもんだの末、勤めている。
要人相手にガードをする仕事だから、基本αの威圧に腰が引ける様では駄目なので当初俺は事務仕事をする気だったのだが、何故か現場に配属された。
現場に連れて行かれた当初、βなのに何故?意味分からんと思って居たのだがまぁ…うん。慣れた。色々馴れた。そうして俺を現場に連れて行く意味も理解した。
何せ外国組等と言われている面子の個性が強かった。
一人だけ突拍子もない位強すぎた。
普通じゃない。
なんて思って居たがアレはもしかして国外、ピンポイントで失礼だとは思うが彼の母国がイタリアなので…その国だと普通なのだろうか?
島国である日本が特殊なのか?
先程から「暇です」と言って、何度も己の利き腕を細かく縛ったり解いたりを繰り返している。
意味が分からん。器用か。
「フハハ、片手で縛った割にはまぁまぁな縛り方ですねぇ。ただ完璧では無いし、美しさが無い。初めてやってみましたが、中々どうして奥が深い」
「何度もやれば美しい縛り方になるでしょうか?」等と呟いて居る変人。
誰かってもうおわかりになるかと。
我が社ではライモンドと書いて変人と読む。等と言う声が隣の神宮寺から聞こえて来るが、そんなお前も今日は普通では無いからな?
「こう、もうちょっと素早く上手い具合に美しく縛り付けたいのですが、中々上手く出来ないのですよね」
この外人、ライモンド先輩は「仕事中なので」と言って、「本来なら全身を余すこと無く亀甲縛りにしたいのですが、何かあった時に咄嗟に動けないのは流石に禁止されていまして~」等と言い、現在は網状に細かく自身の手首から肘までを縛っている。
そうして縛り付けている糸にも拘りがあるらしく、「先日私の番相手に贈り物をしようと百貨店に出向いたら、何ともまぁ美しい絹糸を発見致しまして…」等と言い、手芸で使う朱色の絹糸を器用に編み込み、みるみるうちに何度も利き腕を縛り付けていく。
確かにその縛り方ならば仕事には支障は無い…のか?疑問は残るがまぁ、良いや。これ以上考えるのは面倒だ。放置だ、放置。それに限る。
それよりも小林茶坊の周囲に一人だけ、彷徨いている人物が気になる。
「昼間も来ていたな」
「ああ。不破さん曰く、少し前まで某団体の組合員だったが組長の一声で解散。その後真っ当な企業になり、下っ端として雇って貰って頑張っていると調書が来ている人物だな」
「それが何故深夜に周囲をうろうろと?」
「さぁ…つうか、あいつΩだろ」
「え、若い番の居ないΩなのに一人深夜に彷徨いて大丈夫なのか?」
流石α、匂いに敏感なのか。
等と思っていたら、
「大丈夫では無いでしょうね~」
と、変…ライモンド先輩から否定の声。
「あの子、もしかしたらヒート起こし掛けて居るのでは無いですかね?Ωのヒートのフェロモンが微妙に漂って来て居ますね」
「ちょっと私の鼻には刺激臭みたいに感じますね、私の番相手では無いからでしょう」等と言って周囲の匂いを嗅いでいる。
その仕草が犬っぽくて、こういう時はαとはβとは違うなと思ってしまう。
「ああ、だから神宮寺が落ち着かないのか」
先程から妙に浮足立って居る珍しい仕草にハッと我に返り、咄嗟にβ用の即効性の抑制剤を口に放り投げると共に、神宮寺の口の中にもα用の抑制剤を突っ込む。
因みにライモンド先輩は吸引式の抑制剤を取り出して吸っていた。変態だけどこう言う時は行動が早くて助かる。
「これで一先ずは大丈夫」
呟くとライモンド先輩が「何を言っているのです」と呆れたような口振り。
「ああ、Ωの彼を安全な場所に移動させないと駄目ですよね」
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