商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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62 声に出して言わないけどね

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 末明さんの口から「どっせい!」と、似合わない程ドスがきいた腹から響く声が聞こえたと思ったら…


「あ。間に合わなかった」


 店内の入口に現れた末明さんの旦那さんである不破晃洋さんが店の冷たい床下で気を失って伸びている、先程までゲラゲラ笑って包丁を手にしていた女性の側まで来て、女性を見下ろしていた。
 どうやらこの女性を知らない様だ。
 末明さんも知らないと言っていたし、当然俺も知らない。
 だとしたら何故「あたしの男を取った」等と言う台詞を吐いたのだろう。
 まさか誰でも良かったとか?
 もしくは何かしら、ほんの些細な事柄が引っ掛かってこの場所で騒ぎを起こしたとか?推測しか出来ないが、一先ず怪我が無くて良かった。


「俺が居て小林さんに怪我をさせる訳無いだろ」

「だよね~」


 俺が居ても末明ちゃん、男前に処置しちゃうからなぁと不破さんが困った様に述べる。
 末明さん、「肩透かしを食っただろ」って笑っているし、「女性の素人程度じゃ末明ちゃんがどうこうなるとは思えないけど、でも心配だから無茶は控えて欲しいかな」と苦笑い。


「所で末明ちゃん、手にしている上着の中に入れているのは?」


 不破さんが着ていた上着を末明さんに掛けつつ、末明さんが手に持っている上着を見ている。


「このぶっ倒れているクソ女が鞄から取り出した包丁。振り回すと危ないから、上着で包んでから女の意識を落とした」


 ふんっと口悪く言い出した末明さん。
 不破さんが来たから気が緩んだのかな?口調悪くなっていますよ。


「相変わらず手際が宜しいこって」

「師匠が良いからな」


 どうでも良いけど伸びている女性の目、目が見開いたまま失神して居るらしく非常に見た目が怖い。何せ白目だからね、初めて見たよ目を見開いたままで失神している女性。ホラー案件っぽくて目をソチラに向けるのがちょっと、ちょっとだけ嫌。
 嫌だよ、夜中とかトイレに起きた時にうっかり思い出しそうで怖い。

 そう言えばこの女性、先程末明さんが「(頭部に何かしらの症状が)」と言っていたな。警察にその症状の件も知らせて病院へ連れて行って貰った方が良いだろう。


「小林さん!」


 失礼ながら倒れている女性を拘束した方が後程目が冷めた時に暴れてしまうと困るから、一度店内から扉一つ隔てた住居へ戻って紐か何かで拘束した方が良いだろう。
 等と思って居たら、嵯峨さんが数名の…あ、先程喚いている女性を見てから何処かへ行った人と警官数名が来てくれた。


「大丈夫、ですか、ど、何処かお怪我は」

「俺は大丈夫。それより末明さんが対応してくれて」


 嵯峨さん、物凄い息が上がっている。
 此処まで連れて来てくれたと思われる人も息が上がっているし、警官も数名息が上がっている。
 申し訳ないなぁと店の冷蔵庫から冷やした煎茶を取り出してコップに注ぎ(倒れている女性は除く)、おしぼりと共に全員に配る。
 その際末明さんに小林さん冷静だねぇと言われてしまったが、来て頂いた人に対してのお礼の気持ちと自分が冷静になりたかったからです。

 声に出して言わないけどね。
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