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しおりを挟む「食った、食った~」
と言った後、「何処の親父だよ」なんて思う残念台詞を呟いて嵯峨さんから苦笑を貰った。
うんうん、笑ってくれ。
自分でも最近オヤジ化しているなって思っているから。
あの後お好み焼きと焼きそばを更に追加し、子供達が満足するまで食わせたのだけど、気が付いたら俺も沢山食っていた。と言うより食わされた。
俺が食わずに次々と子供の世話を焼いていたら、年長組の男子が「兄ちゃんあ~ん」と言って俺の口に次々とお好み焼きやらもんじゃ焼き、焼きそばと食べて!と笑顔で勧めて来て断れなかった。
子供ってほんとカワイイよな。
笑顔で「兄ちゃんも!」なんて勧められたら断れない。
可愛いは正義なり。
勿論生意気で可愛くないお子様は断るけどな。
それ以前に俺に接触して来ないだろうけど。
…お茶屋の店主って基本子供は寄って来ないもんだしな。
和装を着ているだけで子供からは遠巻きに見られることが多いし、多分だが年齢より上に見られている気がする。商店街によくお母さんと買い物に来る女の子なんて、俺を見て「おじちゃん」なんて言うんだぜ…お子様がお母さんと呼んでいる人よりかなり若いのに。
俺まだ20代よ?……とほほ。
それは兎も角として、お陰でお腹が満腹。
って、あれ。
「そう言えば夕飯食いに行くって…」
嵯峨さんに夕飯誘われて居たんだよ。
それなのに、何故俺の腹は焼きそばやらお好み焼きやらで腹いっぱいになっているんだよ。炭水化物多すぎてこれ以上腹に入らんわ。
美味かったけどな!
「小林さんを連れて行きたかったのは先程の店です」
「え」
それならそれで最初に言って欲しかった。
子供達が居て滅茶苦茶可愛かったから良いけど。
「何時もならもう少し遅い時間帯にあの子達が来るので、先程の店に入ってから「この店に連れて行きたかった」と言おうとしたのですが…」
早速子供達にカモにされていましたね?と、クスクスと笑う嵯峨さん。
あー良いね、その笑顔。
αらしいイケメンさんの人の良い笑みを浮かべて俺此方を見られると、何だかこう…むず痒くなると言うか。今まで感じたことの無い、不思議な感じがする。
胸のあたりと言うか、心臓のあたりが疼く感じ?
おまけにドキリとしてしまう。
心拍数が上がっているのか?
そういう感じはしないと思うけど、う、うーん?
αの美しい顔って、Ωには威力高過ぎでは無いだろうか。胸の辺りが変な感じになるよ。
「それにしても良かったのですか、俺まで奢って貰って」
「良いの良いの、予想外安かったし」
そう、もんじゃ焼きが一枚100円と安かったからもしかしてと思っていたら、お好み焼きも安かった。一枚150円也。他に卵と豚コマが入ったお好み焼きは200円だったが、他所の店よりも遥かに低価格。
子供5人に大人2人で3千円にもいかない魅力的なお値段。
お店のオバちゃん経営大丈夫なのかね?経営者として不安になってしまうよ。
「この界隈は治安も良い下町ですし、比較的安いお店が多いんですよ」
近場に神社がありますし、少し離れると学校があります。更に私達がいる駅前商店街側には交番がありますしね。
そう言われて納得する。
俺の店も朝食、結構リーズナブルでした。
それでも大人相手の価格設定。先程のお店はオバちゃんが個人経営をしているからこその価格設定なのだろう。
「そう言えば、小林さんのお店も安め設定ですよね」
「俺の店はちゃんと利益は出ているぞ」
低価格でも俺個人で経営しているから人件費は抑えられているし、出来ないと思ったらちゃんとお金は頂いている。この世の中シビアですからー。
シビアだからこそ、請求はキッチリと致しております。
お陰様で1円足りとも無駄にはしておりません。
無駄なのは2階以上ある俺の借りている家です。
なーんと俺の借りている家ってば3階まである、ほぼ一階でしか生活していないけど。
店と台所がある部屋と小さな和室で寝泊まりしているし、2階は店の倉庫と昔此処の店でやっていた店舗の生地やらミシンやらの置いていかれた物。
最近きちんと整理してみたら、生地を切るハサミやら採寸用のメジャーが出て来ましたよ。
流石に顧客用の品やら住所やらの名簿等は処分したようだけど、細々とした品まで出て来て処分に困ったので大家である嵯峨さんに聞いたら、使うのはそのまま貰って欲しいとのこと。
不必要な物は嵯峨さんが引き取ってくれるらしい。
助かる。
お陰で使えそうな品はちゃっかり頂いております。
生地とかミシンはほぼお宝です。
どうでも良いけど、三階は風呂やらトイレ(一階にもある)やら洗面所やら、部屋も結構あるけど風呂以外ほぼ使っていない。夏場になると熱くなるから尚更。前の借り主達もほぼ一階と二階で生活していたのではないかな。
「お茶屋さんって利益はあるのですか?」
「俺の場合は先代が店を畳む際に顧客を紹介されたから、だな」
「先代…と言うことは、小林さんが店舗を出す前に商店街に唯一あったお茶屋さんの?」
「そう、その先代のお茶屋さんの跡を継いだのが俺の店。店の名前は違うけど、顧客は先代と共に挨拶に伺ったのでそのまま俺の店の顧客になっている。つまり、俺は先代の弟子って感じかな」
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