45 / 48
焔ノ章
貴方もです
しおりを挟む
姿を隠蔽されていた天空島の周囲をミトラの風の高位精霊達が見回り、異常が無いかどうかを確認してくるという事でハク達もライトシールドから降り、地上へと移動する。
『周囲に落下した魔物の駆逐はどうやら無事終わった様じゃな』
ハクとモチの周りを上空に上がりつつ事の次第を見詰めているミトラはそう報告し、次いで自身の弟の方を見詰める。
轟音を発して未だに燃え盛る業火と化したモノは時折火花を飛ばし、周辺地域へと飛び火する。その度にファンダムの人々が「ぎゃー!」とか「消火、消火が先だ!」と右往左往して木で出来た桶やバケツ、もしくは動物の皮で出来た水筒を持って消火に繰り出している。先程等街の中央の民家に飛び火し、自警団の者達や待機していた魔法使い達が大慌てで消火活動を開始していた。
迷惑掛けまくってすまんのじゃと萎れるミトラ。
周囲はそれに関しては何とも言えずにいた。どう考えてもミトラの弟が街に襲撃しに来ている魔物と闘って居るわけだし、かといって被害は出るし。しかも相手は大精霊で悪気が無いのは解っているし、と言った具合である。
『未だ拮抗しとるのじゃな』
「あれは俺だと傍に寄れないなぁ」
ハクがそう答えるとモチも「熱いです」と答える。
熱もそうだが相手が大き過ぎる。
一体どうやって倒せと言うのか。
ハクもモチも解決策が分からない。
「(う~ん向こうの世界の戦車とかバズーカとか、もしくは大砲とかあればどうだろう?)」
とか思ったが、それでもこの火力に耐ええるのだろうから無理では無いだろうか?兎に角あのデカブツはミトラや他の者に任せよう。適材適所だ。
【…逃避ともいうがな。】
ハクの内部で呆れた様に聞こえた気がするがそれはそれ、聞こえなかった事にした。
『そうじゃの、アレは妾達精霊に任せるのが一番じゃ。だがあの天空の島も気になるのじゃ。また魔物が出て来ても困るのじゃ』
街の上空に浮いている島。
今はまだうんともすんとも言わず、敵が居るのかどうかも一見するだけだと分からない。それに先程ハクが火薬を放った時に一回目は出て来たが、二度目は扉が落ちて来ただけ。だとしたら踏み込めるだろうと言う事で、精霊達の見回りが済み次第何人かのチームを組んで偵察に行く事にした。
「あまり大人数で行くのも良くないだろうし、どうなるかな」
「ですね」
モチはピキュと一鳴きし、ちょこんとその場に座り込んでいる。
同じようにハクも地面に座り込んでおり、減った魔力を回復中である。
* * *
「あー!やっと見つけた~っ」
カリナタがタッタッと軽快な音を鳴らせながら走り寄り、座り込んでいるハク達の傍に寄って来て同じように座り込む。手には幾つか動物の皮で出来た水筒を持っており、その水筒をハクとモチに「どうぞ」と手渡してくれた。
「お疲れ様ですカリナタさん」
モチがぴきゅーと鳴いて労うと、カリナタはふふふ~と笑ってから「何もしてないけどね」と苦笑する。
「お陰で魔力満タンだから、恐らくあの天空の島へ行くチームに入れるとは思うけど」
「島行くですか?」
「恐らくね。多分ハク君達も選抜に選ばれるんじゃない?」
何せ上空であの島を発見した人物だ。
不測の事態にも何か突飛な事をして収拾させるかも知れないと、先程ディーネが呟いていたのを聞きちゃったとハクに教える。
「俺、怪我人だけど…」
しかも結構な。
等と言いハクは傍に座っているモチの頭を撫でる。
モチはモチできゅぃ~?と小首を傾げて座りながらも、改めて自身の足に装備しているモノを点検し始める。
腕に嵌めて使う小さな盾と槍、それと特注の武器は背に背負っている。
鍛冶師に頼んだ特注品だ。
代金はどうしようと困っていたのだが、一度はこの街を守る際に使う事と素材は自力で集める事と言う条件で安価で作ってくれた品。
本来ならもっとするのだろうが、モチに武器の制作をする為に鍛冶師に紹介したのがケンネルであり、またその鍛冶師がケンネルの彼女でありドワーフの混血であった為、同じ低身長で悩む同士と言うよしみで安価にしてくれたのである。
頼んでいた武器を背中の革袋に背負って居たのだが、そろそろ使うべきかなと取り出して装着する。一見するとただの靴にしか見えない。
だが中に仕込まれている為に普通の靴よりは少しだけ重く、そしてとても硬い。
その場で軽く跳ねてみるが足に少しだけ重さが感じられるだけで違和感は左程無い。
少しは気に為るかな?と思いつつ、モチは各種武器の点検を軽く仕出す。
「そうでしたって、動いて大丈夫なの?」
「今の事は平気。それにモチも居るからな」
そう言ってモチの頭にポンポンと手を乗せると、モチが「えへへ~」と嬉しそうに笑う。
その姿に何処からか背後から「かわいー!」と言う黄色い悲鳴が上がったが、その声にモチは"知らないふり・見てないふり"をする。理由は下手に相手にすると余計黄色い悲鳴が上がり面倒だからだ。
「モチは相変わらず人気者だな」
ぴぴきゅ~とグリグリ主人に撫でられて幸せそうな顔をしているモチとハクの横で、一人だけ「貴方もです」と心の中でだけカリナタは突っ込んだのだった。
『周囲に落下した魔物の駆逐はどうやら無事終わった様じゃな』
ハクとモチの周りを上空に上がりつつ事の次第を見詰めているミトラはそう報告し、次いで自身の弟の方を見詰める。
轟音を発して未だに燃え盛る業火と化したモノは時折火花を飛ばし、周辺地域へと飛び火する。その度にファンダムの人々が「ぎゃー!」とか「消火、消火が先だ!」と右往左往して木で出来た桶やバケツ、もしくは動物の皮で出来た水筒を持って消火に繰り出している。先程等街の中央の民家に飛び火し、自警団の者達や待機していた魔法使い達が大慌てで消火活動を開始していた。
迷惑掛けまくってすまんのじゃと萎れるミトラ。
周囲はそれに関しては何とも言えずにいた。どう考えてもミトラの弟が街に襲撃しに来ている魔物と闘って居るわけだし、かといって被害は出るし。しかも相手は大精霊で悪気が無いのは解っているし、と言った具合である。
『未だ拮抗しとるのじゃな』
「あれは俺だと傍に寄れないなぁ」
ハクがそう答えるとモチも「熱いです」と答える。
熱もそうだが相手が大き過ぎる。
一体どうやって倒せと言うのか。
ハクもモチも解決策が分からない。
「(う~ん向こうの世界の戦車とかバズーカとか、もしくは大砲とかあればどうだろう?)」
とか思ったが、それでもこの火力に耐ええるのだろうから無理では無いだろうか?兎に角あのデカブツはミトラや他の者に任せよう。適材適所だ。
【…逃避ともいうがな。】
ハクの内部で呆れた様に聞こえた気がするがそれはそれ、聞こえなかった事にした。
『そうじゃの、アレは妾達精霊に任せるのが一番じゃ。だがあの天空の島も気になるのじゃ。また魔物が出て来ても困るのじゃ』
街の上空に浮いている島。
今はまだうんともすんとも言わず、敵が居るのかどうかも一見するだけだと分からない。それに先程ハクが火薬を放った時に一回目は出て来たが、二度目は扉が落ちて来ただけ。だとしたら踏み込めるだろうと言う事で、精霊達の見回りが済み次第何人かのチームを組んで偵察に行く事にした。
「あまり大人数で行くのも良くないだろうし、どうなるかな」
「ですね」
モチはピキュと一鳴きし、ちょこんとその場に座り込んでいる。
同じようにハクも地面に座り込んでおり、減った魔力を回復中である。
* * *
「あー!やっと見つけた~っ」
カリナタがタッタッと軽快な音を鳴らせながら走り寄り、座り込んでいるハク達の傍に寄って来て同じように座り込む。手には幾つか動物の皮で出来た水筒を持っており、その水筒をハクとモチに「どうぞ」と手渡してくれた。
「お疲れ様ですカリナタさん」
モチがぴきゅーと鳴いて労うと、カリナタはふふふ~と笑ってから「何もしてないけどね」と苦笑する。
「お陰で魔力満タンだから、恐らくあの天空の島へ行くチームに入れるとは思うけど」
「島行くですか?」
「恐らくね。多分ハク君達も選抜に選ばれるんじゃない?」
何せ上空であの島を発見した人物だ。
不測の事態にも何か突飛な事をして収拾させるかも知れないと、先程ディーネが呟いていたのを聞きちゃったとハクに教える。
「俺、怪我人だけど…」
しかも結構な。
等と言いハクは傍に座っているモチの頭を撫でる。
モチはモチできゅぃ~?と小首を傾げて座りながらも、改めて自身の足に装備しているモノを点検し始める。
腕に嵌めて使う小さな盾と槍、それと特注の武器は背に背負っている。
鍛冶師に頼んだ特注品だ。
代金はどうしようと困っていたのだが、一度はこの街を守る際に使う事と素材は自力で集める事と言う条件で安価で作ってくれた品。
本来ならもっとするのだろうが、モチに武器の制作をする為に鍛冶師に紹介したのがケンネルであり、またその鍛冶師がケンネルの彼女でありドワーフの混血であった為、同じ低身長で悩む同士と言うよしみで安価にしてくれたのである。
頼んでいた武器を背中の革袋に背負って居たのだが、そろそろ使うべきかなと取り出して装着する。一見するとただの靴にしか見えない。
だが中に仕込まれている為に普通の靴よりは少しだけ重く、そしてとても硬い。
その場で軽く跳ねてみるが足に少しだけ重さが感じられるだけで違和感は左程無い。
少しは気に為るかな?と思いつつ、モチは各種武器の点検を軽く仕出す。
「そうでしたって、動いて大丈夫なの?」
「今の事は平気。それにモチも居るからな」
そう言ってモチの頭にポンポンと手を乗せると、モチが「えへへ~」と嬉しそうに笑う。
その姿に何処からか背後から「かわいー!」と言う黄色い悲鳴が上がったが、その声にモチは"知らないふり・見てないふり"をする。理由は下手に相手にすると余計黄色い悲鳴が上がり面倒だからだ。
「モチは相変わらず人気者だな」
ぴぴきゅ~とグリグリ主人に撫でられて幸せそうな顔をしているモチとハクの横で、一人だけ「貴方もです」と心の中でだけカリナタは突っ込んだのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる