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焔ノ章
緋色に空は染まり、そして闇は詰め寄る
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『あやつ…あんな所で何をしてるのじゃ!』
精霊女王のミトラが見ている先では街を包む様な轟音と何かが暴れる様な音、そして巨大な何かが喚くような咆哮でファンダムの街は恐慌状態に陥った。
その状態にいち早く対応したのは街の自警団らしく、次いで傭兵達等が次々と戦闘装備を身に付けて街の中央に繰り出して来る。
だが騒音の場所は離れた空中にあるらしいのだが発光していて詳細が見えない。
時折ドガガガと言う音が聞こえて来るが何が起こって居るのか見えない為に如何したら良いのか分からない為、自警団や傭兵等の者たちがオロオロと宙を見上げているのみ。
「皆いるか!」
だが其処に街の名物女将、剣聖のディーネの声が響き渡る。
「「「「「はい!」」」」」
それまで如何したら良いのか判断が付かずオロオロとしていた街の者達が颯爽と現れたディーネとその夫のキアフを見詰め安堵し、気合を入れた声を上げる。
「皆心して聞け!」
ディーネの横にいるキアフは妻の聖剣を手に抱え、右手に立ち。二人の子であるアレフはディーネの左に立って彼女の最近の獲物である大筒の大砲(?)らしきものを抱えて控える。
「敵らしきものは我が街から離れた上空。だが白ずんで詳細が分からぬ」
朝日と共に徐々に姿が見えて来たが過熱した熱気は伝わって来るが、それ以上が分からない。
「ディーネ、あの光は発火からだろうな」
キアフが上空を見詰めながら言葉を発すると横に居る息子のアレフがこくりと頷いている。
「発火か、可能性は何か考えられるか?」
ディーネは普段女将の口調からは考えられない硬い口調になって居るが、これは彼女の師匠である教えだ。昔彼女の師匠は某国の軍隊に所属していた為に口調が普段から硬く、ディーネを扱いた時にもその口調で居た為に彼女の中で剣を扱う時と街を脅威から守る時にスイッチが入り、軍隊の指揮官の様な口調になる。
「母さん、発火から考えられるのは幾つかある。けど多分アレは俺は見た事無いけど恐らく火の属性の精霊とか、もしくは」
『フローじゃ』
アレフがディーネに話していた声を遮りミトラが空中から急に目の前に現れた様に飛んで来た。
「ミトラ、それは姉弟の火の精霊であると?」
アレフが急に現れた風の大精霊ミトラに向かって問うとミトラは大きく自身の首を縦に振り、
『妾の弟にしかあの高熱は出せんのじゃ』
ならば大丈夫かと集まっていた戦闘準備をしていた者達は気を抜いたが、ディーネは先程よりも更に険しい顔付になる。
見えなくても彼女には歴戦の感が告げている。
――これはマズイ。
夫と息子に目配せをし、息子は即座に対応すべく荷がある宿へと駆け出して行く。それと同時に夫のキアヌは自警団を率いて率先し、周囲に戦の支度を始める。
『…どうやら部が悪いようじゃ苦戦してるのじゃ』
「やはりそうか」
ミトラとディーネは互いに頷き、空中を見る。
『此度の戦いは我が弟が絡んで居る。状況を見るに察するが、先見の土の精霊であるアニタの遺言でフローが挑んだのじゃろう。ならば我ら大精霊は遺言を継いでフローと共に戦うと誓うのじゃ』
「それは忝い」
『もっともソレは建前での』
クスリとミトラは笑い、
『我ら精霊は邪神の企みを阻まねばならんのじゃ。だからの、ココの街は壊すのは許さんのでの』
何故か邪神はココ数年やたらとこの街を壊す事に躍起になって居る。
理由は何故かはわからない。
予測は付いてはいるが。
何せ邪神は今「魔王の娘」に封じられて居る。
ミトラはその魔王の娘に何かしら関係しているのでは無いかと思っている。そしてハクの事。先日のおどろおどろしい娘の件で結びつけることが出来るのでは無いかと思っている。勿論推測でしか無いが。
『では行くかの』
「ええ、行きましょう」
ディーネとミトラは互いの顔を見合わせ、次いで街に集まった各武器を持って勇ましい顔つきで此方を見て来る自警団達を見詰める。
「我らの街を救うぞ!」
―オオオオオオオオオオッ!
一斉に武器を手に持ち掲げる一団。
それらを眼下に眺め――…我らの主人公でこの話で最近影の薄い印象のある銀髪の少年ハクは空中に立ち、全てを見下ろして居た。
精霊女王のミトラが見ている先では街を包む様な轟音と何かが暴れる様な音、そして巨大な何かが喚くような咆哮でファンダムの街は恐慌状態に陥った。
その状態にいち早く対応したのは街の自警団らしく、次いで傭兵達等が次々と戦闘装備を身に付けて街の中央に繰り出して来る。
だが騒音の場所は離れた空中にあるらしいのだが発光していて詳細が見えない。
時折ドガガガと言う音が聞こえて来るが何が起こって居るのか見えない為に如何したら良いのか分からない為、自警団や傭兵等の者たちがオロオロと宙を見上げているのみ。
「皆いるか!」
だが其処に街の名物女将、剣聖のディーネの声が響き渡る。
「「「「「はい!」」」」」
それまで如何したら良いのか判断が付かずオロオロとしていた街の者達が颯爽と現れたディーネとその夫のキアフを見詰め安堵し、気合を入れた声を上げる。
「皆心して聞け!」
ディーネの横にいるキアフは妻の聖剣を手に抱え、右手に立ち。二人の子であるアレフはディーネの左に立って彼女の最近の獲物である大筒の大砲(?)らしきものを抱えて控える。
「敵らしきものは我が街から離れた上空。だが白ずんで詳細が分からぬ」
朝日と共に徐々に姿が見えて来たが過熱した熱気は伝わって来るが、それ以上が分からない。
「ディーネ、あの光は発火からだろうな」
キアフが上空を見詰めながら言葉を発すると横に居る息子のアレフがこくりと頷いている。
「発火か、可能性は何か考えられるか?」
ディーネは普段女将の口調からは考えられない硬い口調になって居るが、これは彼女の師匠である教えだ。昔彼女の師匠は某国の軍隊に所属していた為に口調が普段から硬く、ディーネを扱いた時にもその口調で居た為に彼女の中で剣を扱う時と街を脅威から守る時にスイッチが入り、軍隊の指揮官の様な口調になる。
「母さん、発火から考えられるのは幾つかある。けど多分アレは俺は見た事無いけど恐らく火の属性の精霊とか、もしくは」
『フローじゃ』
アレフがディーネに話していた声を遮りミトラが空中から急に目の前に現れた様に飛んで来た。
「ミトラ、それは姉弟の火の精霊であると?」
アレフが急に現れた風の大精霊ミトラに向かって問うとミトラは大きく自身の首を縦に振り、
『妾の弟にしかあの高熱は出せんのじゃ』
ならば大丈夫かと集まっていた戦闘準備をしていた者達は気を抜いたが、ディーネは先程よりも更に険しい顔付になる。
見えなくても彼女には歴戦の感が告げている。
――これはマズイ。
夫と息子に目配せをし、息子は即座に対応すべく荷がある宿へと駆け出して行く。それと同時に夫のキアヌは自警団を率いて率先し、周囲に戦の支度を始める。
『…どうやら部が悪いようじゃ苦戦してるのじゃ』
「やはりそうか」
ミトラとディーネは互いに頷き、空中を見る。
『此度の戦いは我が弟が絡んで居る。状況を見るに察するが、先見の土の精霊であるアニタの遺言でフローが挑んだのじゃろう。ならば我ら大精霊は遺言を継いでフローと共に戦うと誓うのじゃ』
「それは忝い」
『もっともソレは建前での』
クスリとミトラは笑い、
『我ら精霊は邪神の企みを阻まねばならんのじゃ。だからの、ココの街は壊すのは許さんのでの』
何故か邪神はココ数年やたらとこの街を壊す事に躍起になって居る。
理由は何故かはわからない。
予測は付いてはいるが。
何せ邪神は今「魔王の娘」に封じられて居る。
ミトラはその魔王の娘に何かしら関係しているのでは無いかと思っている。そしてハクの事。先日のおどろおどろしい娘の件で結びつけることが出来るのでは無いかと思っている。勿論推測でしか無いが。
『では行くかの』
「ええ、行きましょう」
ディーネとミトラは互いの顔を見合わせ、次いで街に集まった各武器を持って勇ましい顔つきで此方を見て来る自警団達を見詰める。
「我らの街を救うぞ!」
―オオオオオオオオオオッ!
一斉に武器を手に持ち掲げる一団。
それらを眼下に眺め――…我らの主人公でこの話で最近影の薄い印象のある銀髪の少年ハクは空中に立ち、全てを見下ろして居た。
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