29 / 48
焔ノ章
鮮紅5
しおりを挟む
カーターさんとケンネルさんの二人は一頻り笑うと、また手紙を見詰めて居ます。
何か難しいことなのでしょうか?
「カリナタ」
「何?」
ケンネルさんが前足を上にくいっとやり、
「上、かなりやられてる」
「どう言うこと?」
「先日の襲撃の後、結界を補強して直したって言ってたよな?」
「ええ、広範囲だったからかなり苦労したけど…まさか?」
「そのまさかだ。報告が上がってきてる」
カーターさんが封書ごとカリナタさんに手渡し、カリナタさんは神妙な顔付きで手渡された手紙を読み、表情を変える。
「そんな…」
「俺はこれから詰所に話してくる。ケンはこのままこの辺りを警備。門番は交代してもらう」
「わかった」
「カリナタは用事があるんだろ?」
「うん。これ置いてこないとならないし、買い物もあるから」
カリナタさんが先程の未だに動く謎の袋を指差し(本当に生きてないですよね?怪しいのですが)、「少し生臭いけど」と言いつつ指で小突くと、中で「うみっ」って音が…………………
ほんっとーーーーに、生きてないですよねっ!?
ぶるるって、動いたぁっ!!!
「解った。何かあったら…ミサの所か?」
「日があるうちはね。日が沈んだら自宅にいるわ」
「了解、それじゃまたな……ん?モチ君、なに涙目になってるんだ?」
袋の前で涙目になってぷるぷるしてしまった僕に、カーターさんはぶはっと笑ってそれまでの緊迫感のある雰囲気を一気にぶち壊し、
「ああそれはな、モチ君は見ない方がいいぞ」
「な、な、なんでなんですか?」
「秘密だ」
そう言って一頻り笑い、カーターさんは足早に去って行きました。
「…カリナタさん」
「…」
「中身何ですか?」
「…秘密」
ぶわっと大粒の涙が出て、ボロボロとつい泣き出してしまいました。
怖いからしっっっかりとケンネルさんの背後に回りましたよ!
ケンネルさんの服まで確りと握ってしまいましたよ!
だって動くんですっ!
変な声がしますっ!
怖いですっ!
ケンネルさんが大丈夫って言ってくれ、頭を撫でてくれましたけど、小さい声で「ぴぃぃっ」って泣きじゃくってしまいました。
…駄目ですね、僕強くならなくちゃならないのに。
一頻り泣き終わったら、カリナタさんに土下座されました。
………びっくりです。
「今のは親父も悪いけど、カリナタも悪い」
「…はぃぃ」
あの後、僕は不信感でいっぱいになってカリナタさんをジト目で睨みつつ、距離をとって歩いて居ます。
僕がこんな調子なので、ケンネルさんは仕方ないなと"僕を"ご主人が居る治療院まで送ってくれるそうです。
カリナタさんはついでで送ってやるとか、お前お仕置きで荷物係とか、何だか意地悪を言って酷使してます。
カリナタさんが「鬼ぃ…」って言うので、じーーーとカリナタさんを見詰めると、ガックリと肩を落として小さくなって居ます。
ちょっと可愛そうかな?流石に女の子にだけ荷物を持たせるのも嫌なので、僕も持ちました。
そうそう、お塩もちゃんと購入しました。
うっかり忘れそうになりましたけどね。
…だってまだ動くんですよ、アレ。
中身はケンネルさんが教えてくれたからわかりましたけど、植物と昆虫の一種だそうです。
袋から出すと異臭を放つらしく、街中で袋から出して見せるわけにはいかないとか。
それならそうと言って欲しかったです。
「モチ君御免ね」
時々目を合わす度に謝って来ますが、どう返事したらいいかわからないです。
人の機微とか僕理解しにくいんですから。
ご主人ならこんな時苦笑して許すのでしょうが、どう対応したらいいのか困惑します。
そんな僕を見かねたのかケンネルさんが、
「モチ君、唐突だけど『産まれて何ヵ月?』」
と、聞いて来ました。
やっぱりケンネルさんは鋭いですね。
カリナタさんは「えっ?」って言ってますけども。
「三ヶ月と少しです」
ケンネルさんはやっぱり、と言って僕の頭を撫で撫でしてくれました。
…子供扱いですね、だからちょっと言いたく無かったです。
「前々から少し背伸びしてる子っぽく思っていたけど、やっぱりそうか」
「元々僕達の種族は早熟ではあるんです。ただ、僕は少し他の子達より身体は大きいのですが、中身がその、未熟で…」
「ん?三ヶ月ならまだまだ子供だろ?そんなもんさ」
グリグリと再度頭を撫でられ、目を細めて「うきゅ」と鳴くと、
「ハク君も子供だし、丁度良いんじゃないか?」
「そうでしょうか?」
「充分だよ。現にハク君はモチ君を邪険にしてないし、どっちかって言うと可愛がっているだろ?」
「僕、ご主人より強くありません……」
またグリグリと頭を撫でられました。
ちょっと痛い位です。
「モチ君は背伸びし過ぎだよ」
「そうでしょうか…」
「モチ君は伸び代があるからなぁ、ま、大変になったら遠慮無く相談に来な」
グリグリグリグリと、ケンネルさんに強く撫でられるのはいいのですが、横にいるカリナタさん…?
「モ"チ"ち"ゃぁあ"んごめんねぇえ~!」
道の真ん中で号泣きされました。
………再度、びっくりです。
「カリナタ、お前は子供じゃないだろうがっ!」
と言いながらも、ケンネルさんはカリナタさんに優しく笑ってハンカチを差し出して居ました。
街中の人々もカリナタさんに驚いていたみたいだけど、僕はちょっとだけ、何だかケンネルさんがお兄ちゃんみたいで、カリナタさんがその妹みたいで、仲が良くて羨ましいなって思いました。
種族が違うし寿命も違うのだろうけど、何だかこの街は優しくていい街だなあって、夕陽が沈む最中そう思いました。
ちょっと幸せです。
ご主人も少しでも幸せだといいな。
何か難しいことなのでしょうか?
「カリナタ」
「何?」
ケンネルさんが前足を上にくいっとやり、
「上、かなりやられてる」
「どう言うこと?」
「先日の襲撃の後、結界を補強して直したって言ってたよな?」
「ええ、広範囲だったからかなり苦労したけど…まさか?」
「そのまさかだ。報告が上がってきてる」
カーターさんが封書ごとカリナタさんに手渡し、カリナタさんは神妙な顔付きで手渡された手紙を読み、表情を変える。
「そんな…」
「俺はこれから詰所に話してくる。ケンはこのままこの辺りを警備。門番は交代してもらう」
「わかった」
「カリナタは用事があるんだろ?」
「うん。これ置いてこないとならないし、買い物もあるから」
カリナタさんが先程の未だに動く謎の袋を指差し(本当に生きてないですよね?怪しいのですが)、「少し生臭いけど」と言いつつ指で小突くと、中で「うみっ」って音が…………………
ほんっとーーーーに、生きてないですよねっ!?
ぶるるって、動いたぁっ!!!
「解った。何かあったら…ミサの所か?」
「日があるうちはね。日が沈んだら自宅にいるわ」
「了解、それじゃまたな……ん?モチ君、なに涙目になってるんだ?」
袋の前で涙目になってぷるぷるしてしまった僕に、カーターさんはぶはっと笑ってそれまでの緊迫感のある雰囲気を一気にぶち壊し、
「ああそれはな、モチ君は見ない方がいいぞ」
「な、な、なんでなんですか?」
「秘密だ」
そう言って一頻り笑い、カーターさんは足早に去って行きました。
「…カリナタさん」
「…」
「中身何ですか?」
「…秘密」
ぶわっと大粒の涙が出て、ボロボロとつい泣き出してしまいました。
怖いからしっっっかりとケンネルさんの背後に回りましたよ!
ケンネルさんの服まで確りと握ってしまいましたよ!
だって動くんですっ!
変な声がしますっ!
怖いですっ!
ケンネルさんが大丈夫って言ってくれ、頭を撫でてくれましたけど、小さい声で「ぴぃぃっ」って泣きじゃくってしまいました。
…駄目ですね、僕強くならなくちゃならないのに。
一頻り泣き終わったら、カリナタさんに土下座されました。
………びっくりです。
「今のは親父も悪いけど、カリナタも悪い」
「…はぃぃ」
あの後、僕は不信感でいっぱいになってカリナタさんをジト目で睨みつつ、距離をとって歩いて居ます。
僕がこんな調子なので、ケンネルさんは仕方ないなと"僕を"ご主人が居る治療院まで送ってくれるそうです。
カリナタさんはついでで送ってやるとか、お前お仕置きで荷物係とか、何だか意地悪を言って酷使してます。
カリナタさんが「鬼ぃ…」って言うので、じーーーとカリナタさんを見詰めると、ガックリと肩を落として小さくなって居ます。
ちょっと可愛そうかな?流石に女の子にだけ荷物を持たせるのも嫌なので、僕も持ちました。
そうそう、お塩もちゃんと購入しました。
うっかり忘れそうになりましたけどね。
…だってまだ動くんですよ、アレ。
中身はケンネルさんが教えてくれたからわかりましたけど、植物と昆虫の一種だそうです。
袋から出すと異臭を放つらしく、街中で袋から出して見せるわけにはいかないとか。
それならそうと言って欲しかったです。
「モチ君御免ね」
時々目を合わす度に謝って来ますが、どう返事したらいいかわからないです。
人の機微とか僕理解しにくいんですから。
ご主人ならこんな時苦笑して許すのでしょうが、どう対応したらいいのか困惑します。
そんな僕を見かねたのかケンネルさんが、
「モチ君、唐突だけど『産まれて何ヵ月?』」
と、聞いて来ました。
やっぱりケンネルさんは鋭いですね。
カリナタさんは「えっ?」って言ってますけども。
「三ヶ月と少しです」
ケンネルさんはやっぱり、と言って僕の頭を撫で撫でしてくれました。
…子供扱いですね、だからちょっと言いたく無かったです。
「前々から少し背伸びしてる子っぽく思っていたけど、やっぱりそうか」
「元々僕達の種族は早熟ではあるんです。ただ、僕は少し他の子達より身体は大きいのですが、中身がその、未熟で…」
「ん?三ヶ月ならまだまだ子供だろ?そんなもんさ」
グリグリと再度頭を撫でられ、目を細めて「うきゅ」と鳴くと、
「ハク君も子供だし、丁度良いんじゃないか?」
「そうでしょうか?」
「充分だよ。現にハク君はモチ君を邪険にしてないし、どっちかって言うと可愛がっているだろ?」
「僕、ご主人より強くありません……」
またグリグリと頭を撫でられました。
ちょっと痛い位です。
「モチ君は背伸びし過ぎだよ」
「そうでしょうか…」
「モチ君は伸び代があるからなぁ、ま、大変になったら遠慮無く相談に来な」
グリグリグリグリと、ケンネルさんに強く撫でられるのはいいのですが、横にいるカリナタさん…?
「モ"チ"ち"ゃぁあ"んごめんねぇえ~!」
道の真ん中で号泣きされました。
………再度、びっくりです。
「カリナタ、お前は子供じゃないだろうがっ!」
と言いながらも、ケンネルさんはカリナタさんに優しく笑ってハンカチを差し出して居ました。
街中の人々もカリナタさんに驚いていたみたいだけど、僕はちょっとだけ、何だかケンネルさんがお兄ちゃんみたいで、カリナタさんがその妹みたいで、仲が良くて羨ましいなって思いました。
種族が違うし寿命も違うのだろうけど、何だかこの街は優しくていい街だなあって、夕陽が沈む最中そう思いました。
ちょっと幸せです。
ご主人も少しでも幸せだといいな。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる