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社畜への扉 5
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混乱して敬語がおかしな方向を走り始めている。
俺はとりあえずうんうんと頷き友人知人を怒らせることばを吐き出した。
「わかるわかる、俺が怒らせてるのは」
ツーシーならばどんな反応をするのか。試しにいってみたのだが、ツーシーは非常にご立腹らしい。ピョンッとその場で跳ねて、前足でフライングディスクを殴り始めた。
『認めんな! そんなだから色んな奴らが調子乗ってひでぇ扱いすんだよ! あん時だって、あんたがいなけりゃ予選すら通らなかったチームなのにポイ捨てみたいに……!』
俺がいったのは激情家の友人なら胸倉を掴んで怒鳴り散らすくらいの煽り文句だ。ツーシーも例に漏れず怒った。しかしこのウサギは俺よりも俺をポイ捨てしたチームに怒りを感じているようだ。俺に飛びかかったり、俺に向かって怒りで鼻を鳴らしたりしなかった。
それはそれとしてポイ捨てされたのは数年前だし、捨てられた本人は『このチームでやれることはすべてやり切った』と燃え尽きており、脱退が楽で良かったとすら思っていた。それほど俺は力一杯精一杯自分のやれることをやりたいようにやっていたのだ。ツーシーのように悔しいと思うことがなかった。
お陰様で数年経った今でも『戻ってきてくれ』と頼まれることもない。友人知人やツーシーは憤るほどの出来事だったが、その時できることに全力過ぎて余力がなくコミュニケーションも最低限だったので、チームメンバーには『ディーは役に立たない』という印象を植え付けたらしかった。
「実際戦果は散々だったから」
『あれはあんたの足を引っ張ってたんだよ、あのチームが! あんたが散々になるほど働いて犠牲になってなんとかなってたんだよ! サクリファイスとかクソみたいな陰口叩かれてたんだぞ』
フライングディスクを激しく蹴ってもどかしさを全面に押し出したウサギには悪いのだが、まったく後悔していないし恨みにも思っていない。あの頃はチームのことなどどうでも良く、それこそ試していたのだ。何ができて何ができず、偏った戦略でできることを愚直に試していた。
ポイ捨てするのもなかなか非道だが、俺は俺で色々試すためだけにチームにいたのだから、お互い様である。
「実際、そうでしたから」
俺が戦況を整え、囮になって戦線離脱する。そういう作戦でやってきたチームだった。最初は違ったのに、何回か上手くいってしまい、その作戦しかしなくなった。そりゃあ、犠牲ともいわれるだろう。
『物分かりが良すぎる……!』
フライングディスクをガツンと殴り、項垂れたウサギは弱々しくもかわいい。どうも俺はツーシーの姿に惑わされすぎである。
「本当のことなのに皆信じてくれないんですよね……何故か」
友人知人もツーシーも俺の自己肯定感の低さを知っているから、また卑屈になっていると思うのだろう。それ故、本当のことなのに信じてくれない。
だからといって悲しくなるわけではないし、それなりに図太いところもある。いいように思ってくれているなら、一応事実を告げてあまり彼らの意見を否定しないようにしている。
『そりゃあ、すげぇんだもん、あんた……俺、ずっと好きだし、憧れあんだもん』
相当可愛げのある後輩みたいなことをツーシーがいいだし、俺は右手を抑えた。
この可愛いうさぎを撫で回してしまったら、きっとこのきゅんとくる後輩感は無くなってしまう。
尊敬されるキラキラの先輩には今更なれないが、この可愛げを一瞬でも長く浴びたい。
「俺のほうこそ、ツーシーさんが好きなんですけどね」
俺はとりあえずうんうんと頷き友人知人を怒らせることばを吐き出した。
「わかるわかる、俺が怒らせてるのは」
ツーシーならばどんな反応をするのか。試しにいってみたのだが、ツーシーは非常にご立腹らしい。ピョンッとその場で跳ねて、前足でフライングディスクを殴り始めた。
『認めんな! そんなだから色んな奴らが調子乗ってひでぇ扱いすんだよ! あん時だって、あんたがいなけりゃ予選すら通らなかったチームなのにポイ捨てみたいに……!』
俺がいったのは激情家の友人なら胸倉を掴んで怒鳴り散らすくらいの煽り文句だ。ツーシーも例に漏れず怒った。しかしこのウサギは俺よりも俺をポイ捨てしたチームに怒りを感じているようだ。俺に飛びかかったり、俺に向かって怒りで鼻を鳴らしたりしなかった。
それはそれとしてポイ捨てされたのは数年前だし、捨てられた本人は『このチームでやれることはすべてやり切った』と燃え尽きており、脱退が楽で良かったとすら思っていた。それほど俺は力一杯精一杯自分のやれることをやりたいようにやっていたのだ。ツーシーのように悔しいと思うことがなかった。
お陰様で数年経った今でも『戻ってきてくれ』と頼まれることもない。友人知人やツーシーは憤るほどの出来事だったが、その時できることに全力過ぎて余力がなくコミュニケーションも最低限だったので、チームメンバーには『ディーは役に立たない』という印象を植え付けたらしかった。
「実際戦果は散々だったから」
『あれはあんたの足を引っ張ってたんだよ、あのチームが! あんたが散々になるほど働いて犠牲になってなんとかなってたんだよ! サクリファイスとかクソみたいな陰口叩かれてたんだぞ』
フライングディスクを激しく蹴ってもどかしさを全面に押し出したウサギには悪いのだが、まったく後悔していないし恨みにも思っていない。あの頃はチームのことなどどうでも良く、それこそ試していたのだ。何ができて何ができず、偏った戦略でできることを愚直に試していた。
ポイ捨てするのもなかなか非道だが、俺は俺で色々試すためだけにチームにいたのだから、お互い様である。
「実際、そうでしたから」
俺が戦況を整え、囮になって戦線離脱する。そういう作戦でやってきたチームだった。最初は違ったのに、何回か上手くいってしまい、その作戦しかしなくなった。そりゃあ、犠牲ともいわれるだろう。
『物分かりが良すぎる……!』
フライングディスクをガツンと殴り、項垂れたウサギは弱々しくもかわいい。どうも俺はツーシーの姿に惑わされすぎである。
「本当のことなのに皆信じてくれないんですよね……何故か」
友人知人もツーシーも俺の自己肯定感の低さを知っているから、また卑屈になっていると思うのだろう。それ故、本当のことなのに信じてくれない。
だからといって悲しくなるわけではないし、それなりに図太いところもある。いいように思ってくれているなら、一応事実を告げてあまり彼らの意見を否定しないようにしている。
『そりゃあ、すげぇんだもん、あんた……俺、ずっと好きだし、憧れあんだもん』
相当可愛げのある後輩みたいなことをツーシーがいいだし、俺は右手を抑えた。
この可愛いうさぎを撫で回してしまったら、きっとこのきゅんとくる後輩感は無くなってしまう。
尊敬されるキラキラの先輩には今更なれないが、この可愛げを一瞬でも長く浴びたい。
「俺のほうこそ、ツーシーさんが好きなんですけどね」
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