溺愛ゲーマー

つる

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社畜への扉 1

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 エダラスの洞窟は狭い、深い、長い、湿度が高い洞窟で、水中に棲むモンスターから暗がりに潜むモンスター、はては数種類のスライムまで這いずり回っている面倒な場所である。
 パラレルマギのプレイヤーはこの洞窟を『縛りプレイの洞窟』といって嫌っていた。マギがたくさん得られるわけでもなければ、いいアイテム素材が得られるわけでもないといって忌避する。
 しかも高レベル帯の洞窟ではあるものの踏破が難しいわけではなく、ただ生息するモンスターと不快な洞窟が面倒なだけだとくれば、『廃』すらも近寄らない。
 つまり、人気がない洞窟なのだ。
 だが、人気がないということはマギの奪い合いになりにくいということである。
 そうなると俺のようなジャブジャブ課金をして、結局レベルが足りないせいで金がなくなる一方で最終的にゲームができなくなるプレイヤーはこうした場所でマギを集めることになるのだ。
 そんなわけで俺はいつも通りエダラスの洞窟の道を塞ぐスライムどもを特殊なブーツレインブーツで踏みつけて行く。
 やることといえば単純明快で、川みたいに流れているのか動いているのかわからぬスライムの核を踏みつけマギの欠片を集め、浜辺に打ち上がったクラゲのようにスライムよって岩場に押し流された光る魚をついでに仕留める。
「まぁ……こういう地味な作業が一番得意で、なんというか、プロを目指すには実力不足が否めないかもしれません」
 いつもと違うことていえば、ペット用の空飛ぶフライングディスクに乗って移動するウサギが後ろについてきていることだ。
 俺は先日網として使っていた棒で魚と一緒に流されたのだろう巨大蟹を貫いて一瞬火の魔術を使う。すると蟹は一瞬で赤くなり裏返ってマギだけ残してスライムに流されて行った。
『企業所属の最新攻略組になれってわけじゃねぇ、ない、の、だから……いいんじゃねっすかね』
 現在の俺の実力をみるためとはいえ、毛並みのいいウサギが来る洞窟ではない。申し訳ない気持ちになりつつ、俺は薄暗い洞窟でウサギと話しながらスライムを踏みつけ続けた。
 そうしないと蟹の代わりにスライムに流されるのは俺になる。
「確かバトロイのデュオでしたっけ?」
『そう。本気で娯楽として成立してるやつ、す』
 しかしエダラスの洞窟名物、スライムの川など慣れたものだ。鼻歌を歌い踊りながら最奥まで辿り着くこともできる。
 当然、ウサギと話すことも可能だ。
『本気でプロになれると思うっすか』
「バトロイのデュオで、しかもツーシーさんが一緒ならあるいはあるかもしれないとは思ってはいますが」
 パラレルマギ・バトルロイヤル、通称バトロイは、その名のとおり生き残りを目指すゲーム内ゲームである。参加プレイヤーは決められたエリア内で最後の一人、あるいは一組になるまで闘う。これが娯楽として大人気で、観戦、参戦ともに楽しまれている。
 パラレルマギのバトロイをするためにパラレルマギを始めた。なんてプレイヤーも多いそうだ。バトロイには強さと戦略が求められるが、最新攻略は必要ないのもバトロイ人気に拍車をかけているとか。
 人気があれば、そこに商いを見出すのが人というものらしい。パラレルマギのバトロイはゲーム内ゲームにも関わらず、プロが存在している。
 今回、俺達がプロにならないかと勧誘を受けているのは、そのバトロイのデュオだ。これもその名の通り、二人一組になって戦い抜くものとなっている。
『いや……なんか上げてもらってるみたいっすけど、俺ってそんなにできるわけじゃねぇんすけど』
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