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社畜はゲームをはじめました
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転機は突然訪れる。
俺の場合は会社から鬼のように携帯端末を鳴らされ、薄暗い部屋で紐を探している時だった。
『魔法百周年、おめでとー! と、いうことでね。今日は最も魔法の恩恵を受けたゲーム、パラレルマギをやっていきたいと思いまーす!』
帰宅してからつけっぱなしの配信チャンネルから元気な声が聞こえ思わず顔を上げる。すると机に積み上がった箱が目に入った。
深い緑の革張りの箱、厚紙にメインキャラクターを印刷した箱、プラスチックのパッケージの箱状の何か……形状は様々だが、中身はすべてパラレルマギのアクセスキーだ。忙しくて机に積み上げたままになっていた。
『……今回はゲストに愛の告白が大炎上、ツーシーをお招きしましたァ!』
『違ぇよ! いや、確かにディーさんのことはめちゃくちゃ好きではあるけど、そういうんじゃねぇし!』
不意に勢いのある告白を聞いて俺はようやく垂れ流しの映像を見る。有名な配信者とその肩にのったリスがペラペラ喋りつつ、パラレルマギの武器を換装しているところだった。
『ディー』なんてありふれた呼び名であるのに、俺のあだ名と被っているから反応してしまった……有名配信者の配信で名前を呼ばれたと思うだなんて自信過剰もいいところだ。
苦笑して箱に手を伸ばす。
積み上がった箱の中でも一番高級感がある革張りの箱を開け、緑の魔石がついた鍵を手に取る。
「……まぁ、最後だ……やるか」
鳴り続ける携帯端末をゴミ箱に投げ捨て、俺はソファに横になり、古めかしい扉を想像した。
「鍵はこの手の中に。世界は空想、大樹の間に」
詰まることなく呪文を唱えられることに口が緩む。まだちゃんと覚えている。
俺が本格的にニヤニヤし始める前にガチャリと何処かで鍵が開いた音が響く。
『ルディオンへようこそ、ディー……お久しぶりです』
お助け精霊が淡々と決まりきったセリフを吐いているだけなのに、何故だか優しく聞こえた。
「……ただいま」
懐かしい気分になり、小さく呟く。
これが俺にとって最大の転機であり、唯一無二と出会うきっかけであった。
俺の場合は会社から鬼のように携帯端末を鳴らされ、薄暗い部屋で紐を探している時だった。
『魔法百周年、おめでとー! と、いうことでね。今日は最も魔法の恩恵を受けたゲーム、パラレルマギをやっていきたいと思いまーす!』
帰宅してからつけっぱなしの配信チャンネルから元気な声が聞こえ思わず顔を上げる。すると机に積み上がった箱が目に入った。
深い緑の革張りの箱、厚紙にメインキャラクターを印刷した箱、プラスチックのパッケージの箱状の何か……形状は様々だが、中身はすべてパラレルマギのアクセスキーだ。忙しくて机に積み上げたままになっていた。
『……今回はゲストに愛の告白が大炎上、ツーシーをお招きしましたァ!』
『違ぇよ! いや、確かにディーさんのことはめちゃくちゃ好きではあるけど、そういうんじゃねぇし!』
不意に勢いのある告白を聞いて俺はようやく垂れ流しの映像を見る。有名な配信者とその肩にのったリスがペラペラ喋りつつ、パラレルマギの武器を換装しているところだった。
『ディー』なんてありふれた呼び名であるのに、俺のあだ名と被っているから反応してしまった……有名配信者の配信で名前を呼ばれたと思うだなんて自信過剰もいいところだ。
苦笑して箱に手を伸ばす。
積み上がった箱の中でも一番高級感がある革張りの箱を開け、緑の魔石がついた鍵を手に取る。
「……まぁ、最後だ……やるか」
鳴り続ける携帯端末をゴミ箱に投げ捨て、俺はソファに横になり、古めかしい扉を想像した。
「鍵はこの手の中に。世界は空想、大樹の間に」
詰まることなく呪文を唱えられることに口が緩む。まだちゃんと覚えている。
俺が本格的にニヤニヤし始める前にガチャリと何処かで鍵が開いた音が響く。
『ルディオンへようこそ、ディー……お久しぶりです』
お助け精霊が淡々と決まりきったセリフを吐いているだけなのに、何故だか優しく聞こえた。
「……ただいま」
懐かしい気分になり、小さく呟く。
これが俺にとって最大の転機であり、唯一無二と出会うきっかけであった。
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