10 / 11
あんたがいればそれでいい
アイスティーとバゲットサンド1
しおりを挟む
楽しみにしていた。
パン屋でパンを威嚇するのも、やたら硬そうで長いパンをロドナークの持ったトレーに乗せるのも、美味そうなチキンを挟んだサンドイッチも、デザートのデニッシュも、おやつのカスタードクリームパンも楽しみにしていたのだ。
コーヒーショップで豆を選んであれこれ好き勝手いうなんて贅沢の極みだってやってみたかったし、慌てて試飲して舌を火傷するなんてベタなこともしたかった。
それなのにすべて無視して、俺のもとに戻ってきたロドナークの手を引いて家へと急ぐ。
先ほどまで幸福がふわふわと漂っているような場所だったのに、仕事の話を聞いてから妙に居づらい。テーブルの上に置かれたカードを握り潰してゴミ箱に投げ捨てて、飲めずにいた炭酸飲料は欲しそうに見ていたその辺の子供に手渡した。とにかく早く帰りたいという気持ちが勝ったのだ。
急ぐ俺の手を振りほどくことなく、ロドナークは何もいわず一緒に帰宅してくれた。
「なぁ、ちょっと付き合え」
ロドナークの家に帰りリビングルームに入るなり、俺の口から出たのはそんな言葉だ。
「何に……?」
ようやく疑問を口にしたロドナークの声がやたらとリビングルームに響く。
俺もロドナークも言葉が少なく、家の中がいやにしずかなのはきっと俺のせいだ。家に帰りたいと思っていた時はただあの場から去りたくて行動したが、そうしたせいで家に帰ってからはどうも気まずい。
カチコチと煩い秒針の音が追いかけてくる中、俺も声を響かせる。
「ゲーム」
自分のせいですべて取りやめになって気まずい気持ちをかかえているのに、俺は苛立っていた。ゲームでひと暴れしたい気分だったのだ。
俺の簡潔な一言にロドナークは肩を落とし首を傾げる。ゲームといってもいろいろあるからだ。カードもそうであるし、ボードゲームもオンライン上でするゲームもある。
「プロキシゲームがしたい」
だが俺のするゲームはプロキシゲーム一択だ。他のゲームはギャンブルしかしない。あれらもゲームであるが、俺はあれらを他人とプレイするゲーム扱いしていなかった。
「別に良いが。今からだと遅い時間になるんじゃないか?」
ロドナークが眉を下げて時計を確認する。リビングルームの時計は夕方と夜の間、微妙な時間を指していた。
プロキシゲームといえば一番最初に思い浮かべるのは政府公認の見世物だ。ロドナークもそうなのだろう。だが俺が今したいのはそれではない。
「わざわざ登録して見せてやる必要はねぇよ。下でやりゃあいい」
ロドナークの家には実験場がある。本人曰く魔術を試すのに使ったり、少し広い場所が欲しい時に使うとの事だ。
その少し広い場所で俺は見世物ではないプロキシゲーム……プレイヤーいわく、練習試合だとか遊びだとかいわれるプロキシゲームのルールを一部使用したゲームをしたかった。
「いいんだが……狭いぞ?」
プロキシゲームをするならば確かに狭いが、少し暴れるくらいなら狭くない。
大体俺からすれば食う寝るぼんやりするところが分かれているだけでも驚きだというのに、この家はトイレ風呂別書斎つきで地下室付きである。狭いことを気にしている場合じゃない。暴れて傷がつかないかとか壊されないかとか気にした方がいいのではないか。
それともそんなことは気にしないほどの金でも持っているのだろうか。
どうでもいいことが頭によぎった。
学術や魔術を人に教えようという余裕があり、成人男性が一人住み着いても大丈夫な懐具合とスペースがある。プロキシゲームで食って行けてもカツカツで……というプレイヤーが多い中、この裕福さだ。ロドナークの稼ぎもいいのだろうが、実家も金持ちに違いない。ロドナーク本人にも教育の影が見られることから、俺の推測はあながち間違ってはいないだろう。
そうやってなんでもないことに気が付いてロドナークと俺の違いを見つけて更に苛立つ。
世の中は不公平だなんて今更思うことでもないし、公平さなんて端から求めていない。
けれども今日はどうでもいいことにも苛立った。
「いいんだよ。狭いなら狭いで楽しいだろう?」
鼻で笑ってロドナークに背を向け地下に続く階段へと向かう。
苛立ちに任せて話し続けると八つ当たりをしそうだったからだ。
八つ当たりなんてされるのは日常茶飯事であったのに、自分がそれを他人に向ける日が来るなんて思いもしなかった。
もしかしたら俺は今、恵まれているのかもしれない。八つ当たりされた側はたまったものではないというのに、八つ当たりできる、そして許してもらえるだろうことが恵まれているだなんてひどい考えもあったものだ。
底の薄い安物の靴が床を擦る音を聞きながら、俺はあちらこちらに思考を散らす。今日は嬉しいことがあったのに、それを台無しにする事が起こった。それだけで苛立って、見るのも聞くのも触るのも感じるのも酷く気分が悪い。
早く苛立ちも八つ当たりもない世界に行きたくなり、俺は階段をさっさと移動した。
階段を下りてすぐ暗い灰色の部屋に入る。部屋は火の魔術なども使うことから石造りだ。掃除や灯りが足りていなければ牢屋や拷問部屋のような冷たく陰気くさい部屋に見えただろう。
ロドナークが綺麗好きであるため、この地下室は案外悪くない。子供なら秘密基地なんていっただろう。
そんな部屋の中央に移動し、俺は唱える。
「消えろ」
部屋に入る前から薄ぼんやりと点いていた明かりが消える。
「走れ」
さらに唱えるとジジジ……と古い電球に電気が走る音がした。すると暗い部屋の中で小さなため息が聞こえた。
「やっぱり……最高だな」
あまり大きくない声でロドナークがしみじみと呟いた。
声の温度がわかるような気がして、俺は暗い中で宙を掴む。声に籠った熱は手で感じられなかった。
「魔術を使いこなすのも早い」
部屋の明かりが消えたのは、俺がロドナークに教わった魔術の一つだ。簡単にいえば魔力で線を引く、声で合図を送り発動させるというだけのものである。俺は明かりを点けるために描かれた魔術に余分な線を付け足した。おもちゃに入っている電池を使わないようにプラスチックを差し込むようなものだ。
そうしてあかりを消したあと、ロドナークに向かって魔術の線を伸ばした。力の込め具合によるらしいが、魔術の線を意図的に当てられると身体がびくりと反応する。俺は寝ていたのに急に起きてしまった時に似ていると思うが、ロドナークはびっくりする時に似ているという。
「教えたこともぐんぐん吸収する」
俺を褒める男は特に合図もしていないように見えるのに、バチバチと赤い光を指と指の間に走らせた。俺はそれに見覚えがあった。
「また赤雷の魔術借りたのか」
「友人が少なくてな……借りられるのがあいつくらいしかいないんだ」
「それなら俺がなってやろうか」
「何に?」
友達になっていいのだろうか。
おそらくロドナークより友人の少ない俺は声を飲み込む。
ならば、何に?
俺が聞きたいくらいだ。
パン屋でパンを威嚇するのも、やたら硬そうで長いパンをロドナークの持ったトレーに乗せるのも、美味そうなチキンを挟んだサンドイッチも、デザートのデニッシュも、おやつのカスタードクリームパンも楽しみにしていたのだ。
コーヒーショップで豆を選んであれこれ好き勝手いうなんて贅沢の極みだってやってみたかったし、慌てて試飲して舌を火傷するなんてベタなこともしたかった。
それなのにすべて無視して、俺のもとに戻ってきたロドナークの手を引いて家へと急ぐ。
先ほどまで幸福がふわふわと漂っているような場所だったのに、仕事の話を聞いてから妙に居づらい。テーブルの上に置かれたカードを握り潰してゴミ箱に投げ捨てて、飲めずにいた炭酸飲料は欲しそうに見ていたその辺の子供に手渡した。とにかく早く帰りたいという気持ちが勝ったのだ。
急ぐ俺の手を振りほどくことなく、ロドナークは何もいわず一緒に帰宅してくれた。
「なぁ、ちょっと付き合え」
ロドナークの家に帰りリビングルームに入るなり、俺の口から出たのはそんな言葉だ。
「何に……?」
ようやく疑問を口にしたロドナークの声がやたらとリビングルームに響く。
俺もロドナークも言葉が少なく、家の中がいやにしずかなのはきっと俺のせいだ。家に帰りたいと思っていた時はただあの場から去りたくて行動したが、そうしたせいで家に帰ってからはどうも気まずい。
カチコチと煩い秒針の音が追いかけてくる中、俺も声を響かせる。
「ゲーム」
自分のせいですべて取りやめになって気まずい気持ちをかかえているのに、俺は苛立っていた。ゲームでひと暴れしたい気分だったのだ。
俺の簡潔な一言にロドナークは肩を落とし首を傾げる。ゲームといってもいろいろあるからだ。カードもそうであるし、ボードゲームもオンライン上でするゲームもある。
「プロキシゲームがしたい」
だが俺のするゲームはプロキシゲーム一択だ。他のゲームはギャンブルしかしない。あれらもゲームであるが、俺はあれらを他人とプレイするゲーム扱いしていなかった。
「別に良いが。今からだと遅い時間になるんじゃないか?」
ロドナークが眉を下げて時計を確認する。リビングルームの時計は夕方と夜の間、微妙な時間を指していた。
プロキシゲームといえば一番最初に思い浮かべるのは政府公認の見世物だ。ロドナークもそうなのだろう。だが俺が今したいのはそれではない。
「わざわざ登録して見せてやる必要はねぇよ。下でやりゃあいい」
ロドナークの家には実験場がある。本人曰く魔術を試すのに使ったり、少し広い場所が欲しい時に使うとの事だ。
その少し広い場所で俺は見世物ではないプロキシゲーム……プレイヤーいわく、練習試合だとか遊びだとかいわれるプロキシゲームのルールを一部使用したゲームをしたかった。
「いいんだが……狭いぞ?」
プロキシゲームをするならば確かに狭いが、少し暴れるくらいなら狭くない。
大体俺からすれば食う寝るぼんやりするところが分かれているだけでも驚きだというのに、この家はトイレ風呂別書斎つきで地下室付きである。狭いことを気にしている場合じゃない。暴れて傷がつかないかとか壊されないかとか気にした方がいいのではないか。
それともそんなことは気にしないほどの金でも持っているのだろうか。
どうでもいいことが頭によぎった。
学術や魔術を人に教えようという余裕があり、成人男性が一人住み着いても大丈夫な懐具合とスペースがある。プロキシゲームで食って行けてもカツカツで……というプレイヤーが多い中、この裕福さだ。ロドナークの稼ぎもいいのだろうが、実家も金持ちに違いない。ロドナーク本人にも教育の影が見られることから、俺の推測はあながち間違ってはいないだろう。
そうやってなんでもないことに気が付いてロドナークと俺の違いを見つけて更に苛立つ。
世の中は不公平だなんて今更思うことでもないし、公平さなんて端から求めていない。
けれども今日はどうでもいいことにも苛立った。
「いいんだよ。狭いなら狭いで楽しいだろう?」
鼻で笑ってロドナークに背を向け地下に続く階段へと向かう。
苛立ちに任せて話し続けると八つ当たりをしそうだったからだ。
八つ当たりなんてされるのは日常茶飯事であったのに、自分がそれを他人に向ける日が来るなんて思いもしなかった。
もしかしたら俺は今、恵まれているのかもしれない。八つ当たりされた側はたまったものではないというのに、八つ当たりできる、そして許してもらえるだろうことが恵まれているだなんてひどい考えもあったものだ。
底の薄い安物の靴が床を擦る音を聞きながら、俺はあちらこちらに思考を散らす。今日は嬉しいことがあったのに、それを台無しにする事が起こった。それだけで苛立って、見るのも聞くのも触るのも感じるのも酷く気分が悪い。
早く苛立ちも八つ当たりもない世界に行きたくなり、俺は階段をさっさと移動した。
階段を下りてすぐ暗い灰色の部屋に入る。部屋は火の魔術なども使うことから石造りだ。掃除や灯りが足りていなければ牢屋や拷問部屋のような冷たく陰気くさい部屋に見えただろう。
ロドナークが綺麗好きであるため、この地下室は案外悪くない。子供なら秘密基地なんていっただろう。
そんな部屋の中央に移動し、俺は唱える。
「消えろ」
部屋に入る前から薄ぼんやりと点いていた明かりが消える。
「走れ」
さらに唱えるとジジジ……と古い電球に電気が走る音がした。すると暗い部屋の中で小さなため息が聞こえた。
「やっぱり……最高だな」
あまり大きくない声でロドナークがしみじみと呟いた。
声の温度がわかるような気がして、俺は暗い中で宙を掴む。声に籠った熱は手で感じられなかった。
「魔術を使いこなすのも早い」
部屋の明かりが消えたのは、俺がロドナークに教わった魔術の一つだ。簡単にいえば魔力で線を引く、声で合図を送り発動させるというだけのものである。俺は明かりを点けるために描かれた魔術に余分な線を付け足した。おもちゃに入っている電池を使わないようにプラスチックを差し込むようなものだ。
そうしてあかりを消したあと、ロドナークに向かって魔術の線を伸ばした。力の込め具合によるらしいが、魔術の線を意図的に当てられると身体がびくりと反応する。俺は寝ていたのに急に起きてしまった時に似ていると思うが、ロドナークはびっくりする時に似ているという。
「教えたこともぐんぐん吸収する」
俺を褒める男は特に合図もしていないように見えるのに、バチバチと赤い光を指と指の間に走らせた。俺はそれに見覚えがあった。
「また赤雷の魔術借りたのか」
「友人が少なくてな……借りられるのがあいつくらいしかいないんだ」
「それなら俺がなってやろうか」
「何に?」
友達になっていいのだろうか。
おそらくロドナークより友人の少ない俺は声を飲み込む。
ならば、何に?
俺が聞きたいくらいだ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─
藜-LAI-
BL
ヤスナの国に住む造り酒屋の三男坊で放蕩者のシグレは、友人からある日、なんでもその姿を見るだけで一億円に相当する『一千万ゼラ』が必要だという、昔話に準えて『一目千両』と呼ばれる高級娼婦の噂を聞く。
そんな中、シグレの元に想定外の莫大な遺産が入り込んだことで、『一目千両』を拝んでやろうと高級娼館〈マグノリア〉に乗り込んだシグレだったが、一瞬だけ相見えた『一目千両』ことビャクは、いけ好かない高慢ちきな美貌のオトコだった!?
あまりの態度の悪さに、なんとかして見る以外のことをさせようと、シグレは破格の『五千万ゼラ』を用意して再び〈マグノリア〉に乗り込んだのだが…
〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜
シグレ(26) 造り酒屋〈龍海酒造〉の三男坊
喧嘩と玄人遊びが大好きな放蕩者
ビャク(30〜32?) 高級娼館〈マグノリア〉の『一目千両』
ヤスナでは見かけない金髪と翠眼を持つ美丈夫
〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜
Rシーンは※をつけときます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる